プロの作家によるセミナーに参加してきました。
先日、現役作家によるセミナーに参加する機会をいただきました。
作家といっても童話作家なのでなろうではあまり需要がないかもしれませんが、自分の書き殴りノートをまとめるためにもこちらに記したいと思います。
今回、自分が参加したセミナーは、参加者が書いた童話について二人の作家と一人の児童文学研究者が改善点などを教えてくれる、というものでした。
課題の童話は、400字詰原稿用紙10枚以内。テーマはなく、子どもが読むことを想定した話であれば良い、という決まりのもとに書かれたものです。
会場はごくごく狭い会議室。作家の先生や他の参加者の方がたと、まるで家族の団欒のように近い距離でテーブルを囲みます。
なんだか照れるね、などとお互いに話しながら、なごやかな雰囲気ではじまるセミナー。
まず一番に、この話はどれくらいの年齢の子を対象に考えて書いたものですか? ということを全参加者が聞かれました。童話では、これがとても大事なことだそうです。
それを聞いて自分が「へえ、そうなんだ〜」と間抜けた顔をしていたせいでしょうか。先生は詳しく説明してくれました。
幼稚園に入ったばかりの子と、中学校に入ったばかりの子の中にある言葉はまるっきり違うもの。小学校3年生に大人の言葉で語りかけてもそれは心に響かない。
研究者の先生も付け加えてくれます。
児童文学では、作者の思いや伝えたいことを作者の言葉で書いてはいけない。作者は自分の論理を持って、それを子どもの言葉にして伝えなければいけない。
そう言われて、深く考えずに書いていた自分は大いに反省しました。次から気をつけねば。
その他に先生方がよく言われていたのは、とにかくシンプルに。余計な言葉はすべて捨てて。
特に今回のように短い話の場合は、テーマや書きたいことをひとつにしぼって書く。ごちゃごちゃしてわかりづらいと、子どもはすぐに投げ出してしまうから、ということ。
それから、短い中でもどこかに五感を刺激する描写を入れる、ということ。
夏の暑さや動物の手触り、音や光を想像できるように書くと、子どもたちはいっしょうけんめいに共感しようとしてくれるそうです。随所に描写をまぶすと必要なことを書く文字数が足りなくなるので、どこか一ヶ所にしっかり書くと良い、とのことでした。
そのほかにも個別に様々なアドバイスをいただいた後は、質問タイム。
先生方はどのように推敲をしているのですか、という質問には、三人ともが口をそろえて「音読をします」と答えました。
童話作家の二人だけでなく、児童文学研究者の先生も音読するそうです。論文を。
なんでも、音読することによって話が耳から入ってきて、自分と作品との距離が少し離れる。そのため、冷静に分析ができるそうです。加えて、音読すると読み飛ばすことができない。だから、誤字脱字も防げるということでした。
また、文章になじまない言葉は読んだとき、聞いたときに違和感を覚えるのだそうです。慣れてくると、読んだときにいらない言葉は抜け落ちて入れるべき言葉が浮かんでくるとのこと。そんなレベルに達するには、いったい何十年かかるのでしょうか……。
他に、ファンタジーを書くときにどうしてもイメージしきれなくて違和感がある、という参加者がいました。
それに対する答えというか、作家の先生のファンタジーについての考え方を話してくれました。
一人の先生は、自分自身が「本当のことを書いているんだ」と意識して書かないと、疑った時点でもう書けなくなってしまう、とのこと。
もう一人の先生は、不思議なことは遠い世界の話じゃなくて意外と身近にあるものだと思う。身近にある、見方を変えると不思議なことを見つけてください。そのためには常に周囲をよく見て聞いて、アンテナを張り巡らせておくこと、とのことでした。
自分は息をするように現実逃避をするので、むしろ地に足がついた話を書くほうが苦手です。ファンタジー脳なのです。
それから、児童文学では子どもの年齢に合わせて使う漢字を厳密に選ぶべきですか、という初歩的なことを聞いたやつがいました。自分です。
なぜあのセミナーに自分が混ざっていたのか、それこそ身近な不思議です。
けれど、こんな質問にも先生方は丁寧に答えてくれました。
いわく、年齢に合わせた漢字表記に変えるのは出版社がやってくれるので、作家は気にしなくても大丈夫、とのこと。
さらに、児童文学研究家者の先生が言うことには、漢字かひらがなかというよりも、漢語でなければ伝わらないのか、それとも和語で伝わるものなのかという問題だと思う、と。その年齢の子どもに伝えるには、どの言葉を選ぶべきかを考えてほしい、とのことでした。
なるほどなあ、と納得しました。
最後に、作家の先生の言葉で一番印象に残っている言葉を書いておきます。
「(私はたくさんの本を世に送り出させていただきましたが)本として形になるのは氷山のてっぺんのほんの一部です。(考えて考えて書き集めた言葉のうちの)九割以上を切り捨てて、本当に必要な部分だけに削ぎ落として作品を作る。だけど、その切り捨てた分はごみじゃないんです。(書き集めて切り捨てた言葉たちは)落ち葉みたいに足元に降り積もって、別の話を作るための栄養になってくれると思います」
言われたまま全てを記帳できたわけではありませんが、おおよそこのようなことを作家歴数十年の先生が言っておりました。
プロも素人もやるべきことは変わらないのだな、と安心できたので、自分はまた今日からちまちまと書いていこうと思えました。
得難い体験でありました。
( )内はご指摘を受けて加筆した部分です。これで正しく伝わるといいのですが。他にも解りづらい箇所がありましたら、教えてください。
なろう外の公募に関係したセミナーなので、作家の先生の名前やセミナーの名前は伏せています。
もし詳細を知りたい、という方がいらっしゃいましたら、メッセージにてご連絡ください。個別に返信いたします。