胸と耳
君の心臓の鳴るあたりにつけた耳
やわらかい場所に触れた時の
ひんやりと怖くなる気持ち
私のそれも
君のそれも
止まってしまう時がくる事実と
ただそこにある
君の胸と私の耳というパーツ
臓器としての
原始的な働きと
渦巻く
君と私の不安と欲求
奏者であり
観客でもあるから
私は君という存在に
耳をすませたり
私の鼓動を
聞かせたりする
産まれ落ちたことと
生きること
個体としての君と私
関係性としての君と私
どこか
遠いところから
旅してきたようで
だけれど
今しがた
現れたような気もして
君の心臓の鳴るあたりに
耳をあてる不思議
不意に込み上げる
愛しいということ
さみしいということ
君の心臓が鳴ること
私の耳が聞くこと
君の胸
と
私の耳