邂逅
目の前に現れたソレは赤く燃え上がっていた。
広く逞しい背中には翼が生え、腕には銀色の蛇が書き込まれていた。熱気すら感じる赤い肌には無数の傷があり、畏れよとばかりに主張している。身に付けているのはボロボロの腰布のみ。しかしながら少しの羞恥すら感じさせず、むしろ雄々しいその巨躯を強調させていた。
少年は周囲で起きている虐殺ともいうべき争乱よりもソレに魅せられていた。
ソレはおもむろに頭を振り周囲を見渡し心底つまらなそうに呟いた。
「あぁ?なんだこりゃア?面白そうだからわざわざ喚ばれてやったのに雑魚が雑魚相手にくだらねぇことしてんじゃねぇの」
そして腰に手をあて、なんか面白いこと探すかとひとりごち、その場を後にしようと振り返るとソレのすぐ後ろで立ちすくんでいる自分の胸にすら届かないやせぎすで魔力も大したことのない少年を見つけた。
「ん?なんだお前。……あーそうかそういうことね」
ソレは察した。なぜ自分が喚ばれたのか。なぜ自分が面白そうだと感じたのか。なぜ自分のすぐ後ろにこんなチビで弱そうでビビりの子供がいるのか。
立ちすくむ少年を尻目に周囲の戦火は拡大していく。悲鳴や怒号が1つ駆ける度に血が地面を染めていく。
「おい、ガキ。なんでお前ごときが俺を喚べたのかは大体わかった」
ソレは紅く燃え上がるような瞳で少年に問うた。
「お前は俺にどうして欲しい?」
少年は答えられない。雄々しく、禍々しく、鮮烈なまでに輝く炎に魅入られていたために。答えられないことにソレは苛立ち怒声でもって少年にもう一度問う。
「答えろッ!!火の神の末裔たるこの俺を!イフリートのアグニを!喚んだんだろうがッ!!お前は俺にどうして欲しいッ!!」
その声に現実にかえった少年は震える声で願った。
「助けてほしい」と。
さらに続けて少年は願う。
「この村を。両親を。妹を!アニーを!!そして、僕を!!!」
言葉を続けるごとにその声は大きくなり最後には叫びとなりその少年の願いをソレに叩きつけた。
ソレは少年の願いを聞き、凶悪な笑みを浮かべてこう言った。
「聞き届けたぞ、ガキ。お前に見合わないこの力お前のために振るってやろう。お前の覚悟に見合うこの力存分にお前のために振るってやろう。我が名はアグニ!火の神の末裔、イフリートのアグニ!!ガキ、お前の名前を教えろ!」
少年はアグニの声に呼応するように叫んだ。
「ユーリ!ユーリカの子、ユーリ!」
アグニは満足そうにうなずき、ユーリの頭に手を載せ先程までの怒声が嘘のような優しい声でユーリに語りかける。
「今は眠れユーリカの子ユーリ。我が契約者。お前の願いは聞き届けた。だから眠れ我が友よ」
少年の意識はここで途絶えた。恐怖かそれとも安心か。それはユーリにしかわからないことだった。




