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#19

 勝手知ったる他人(アレクシア)の家で、アレックスが堂々と物色して見つけた囲碁のようなボードゲームで遊んでいると、

「おさむー、いるぅー?」

 ドアの向こうから部屋を覗き込むようにして、アレクシアが部屋に入ってきた。

「あ、お帰り」

「うん、ただいまぁー」

 久しぶりに見るへそ出しの鎧を着ていた。修は何度見てもどうしてそのような形状になったのかが理解できない。

 少しばかり目のやり場に困りながら、

「ゲオルギスさんは、なんて?」

 ゲオルギスのところへ資料を届けたアレクシアに、首尾を問いかけた。

「あー、うん……ちょぉーっと、本気出させちゃったかもねぇー?」

 たはは、と笑う。

「本気?」

「貴族と話を繋ぐのだろう?」

「あれ、赤毛がなんでそんな事知ってるの?」

「ふはは、俺は占星術師だからなっ!」

 黒い石を置いて、よやく三つ並んだと喜びながら、近くにおいてある白い石を取り除いた。

「先ほど、昨夜に視た星について兄弟に語っていたところだ」

「なるほどね」

 アレクシアが盤面を指差す。そこに指せということだろう。

「あっ、嬢、それは卑怯だろう!」

「おさむはこれ初めてなんでしょ? ちょっとぐらいいいじゃん」

「それでも負けているのだ!」

「そうなの?」

「初めてとか信じられんっ!」

 修がアレックスに勝ち越している理由は単純に、ルールがほぼ五目並べだからである。五目並べは禁手がない限り先手が勝利する二人零和有限確定完全情報ゲームに分類され、十九世紀に必勝法が生み出されている。

「一応、勝ち越してはいるけどさ。ビギナーズラックってヤツだよ」

 ルールが似ていれば必勝法もある程度利用することができる。ずるいかもしれないが、修はこのゲームについては初めてプレイすること自体はウソではない。

(教えたら面倒なことになること請け合いだしなぁ)

 この国にどれほど娯楽があるかは分からないが、少なくとも修が見た限りでは彼の世界ほど娯楽に溢れているわけではなかった。そうなると、だいたいのゲームにおいては賭け事として遊ばれている可能性が高い。

 迂闊に必勝法を教えて、無駄に賭場を荒らして、数日後川辺に死体が打ち上げられていたなんてものは遠慮したいのである。

「それはそれとして、本気出させちゃった、ってどういうこと?」

「隣、いいかな?」

「どうぞ」

 よいしょぉ、とソファーの隣に腰掛ける。

「一言で言うとさ、やりすぎちゃったねぇー、ってこと」

「やりすぎた?」

「まほーじん、書いたのはボクだけどね。おさむはバラバラになってたそれを組み合わせるのに、すっごい色々計算して、見つけちゃった。すごいことだよ?」

「兄弟がすごいのはいつものこ……あ、兄弟、その手は待ってくれ」

「いや、待ったら俺が負ける」

「きーてる?」

「聞いてるよ」

「ならいーんだけどぉ」

 しかし、少しだけふてくされたように、

「もともと向こうっ気の強いたちみたいだったしねぇー。予想はしてたけど、それ以上に本気出しちゃって。礼儀とかそんなの飛ばすつもりみたいだよ?」

「さっさと顔を繋ごうってつもりなのね」

「顔どころか、おさむ、帰れなくなっちゃうかもよ?」

「……なんで?」

「政略結婚」

「うわぁ」

「実際はむこうとゆかりのある、でも別に痛くないていどにいるあたり……そこそこ勤めた、使用人あたりかなぁ?」

「……金でどうにかするとかそういう話じゃダメなのか」

「おかねだと、すぐ縁が切れちゃうからねぇー」

 だからといって、さらりと政略結婚の相手が決められるというのもなかなか恐ろしい話である。

「なんでそんな、どこの馬の骨とも知らない相手をよくもまぁそうやすやすと……」

「おさむ、ボクの論客だったっていう経歴ができちゃったからねぇー」

 アレクシアは腐ってもここフォトプロス領に所属する"花の騎士団"の騎士である。いわば公務員のようなものだ。そのアレクシアが客分にしたのだから、この世界では出生不明である修の経歴は保証されているものと同等である。

「カタリナもおさむのこと欲しがってたし……」

 そしてカタリナから助手にと誘われたことも大きい。純粋に能力を認められたのだし、うまく扱えば"生命の魔女"と教会の神像よりも崇められるカタリナとお近づきになれる可能性もある。

「あ、おさむはどーおもう? ボクとか」

「勘弁してくれ」

「あはは、じょーだんじょーだん」

 そんな冗談を貴族(アレクシア)が口にしても問題がない程度なのだ。

「まぁー、そんなかんじだから、もしかしたら手紙、明日届いちゃうかもねぇー?」

「届くだろうな。昨日俺が星を詠んだ結果はそうなっている」

「あ、そーなんだ? あとでヘティに言っておかないと……」

「あと兄弟には水難が出た」

「……泳げるし大丈夫だよね?」

「大丈夫なわけあるかっ!」

 いくら泳ぐのが上手だとしても人間はあくまで肺呼吸である。水の中に溶けた酸素を取り出して呼吸するような真似はできないのだ。

「とりあえず妖精避けにカタリナも一緒にいくとしてぇ……」

 ここで別れるとカタリナから恨みがましい目で見られるのである。現状で、日本語は修にしか翻訳できないのだから当然だろう。

「……赤毛も来るの?」

「当然!」

「ま、しょーがないか……」

 置いていっても別に支障はないが、占い師がいるとそれだけで受けなくてもいい災いを避けることができる。着いてくるといわれて、わざわざ連れて行かない理由はない。

 たとえその占い師が、個人的にウザいヤツだと思っていても、だ。

「カタリナに、話、通してくるね」

「あ、うん。俺もついて行ったほうがいいかな?」

「ううん、いいよ。おさむ、こっちのそーいう機微とかわかんないでしょ? 下手に言質とられてもヤだしねぇー」

「はっはっは、女難は続くなぁ! 兄弟」

「ぶん投げるぞてめぇ」



    ○



「ふぅ……」

 ヘンリエッタがため息をつく。

「信じていなかったわけではございませんが……本当に届くとは」

 それはつまり、アレックスを信用していなかったということだ。つい先ほど使者から手渡された手紙を、封蝋がよく見えるように上にした状態で手渡した。

「まぁー、朝早くから届くとか思ってもみなかったけどねぇー、ボクも」

 はちみつをたっぷりとたらした固焼きのパンを置いて、アレクシアは手紙を受け取る。

「ねぇー、これ」

「ええ、名家ですわね」

 アレクシアが「げぇー」と呟く。

「……どこ?」

「スクリーヴァ領の、フォーブリッジ自治領」

「自治領?」

 修は「はて?」と首を傾げる。貴族や領地という施政形態になじみのない修は、領地の中に、さらに自治領があるということを想像できないのだ。

「領地の中にあるんだったら、自治区じゃ?」

「あー、えーっとねぇー、ざっくりいうと……えー、ヘティ?」

「お世継ぎ様に領地経営を学ばせるため、伝統に基づいて一時領地を割譲しているのですわ。いよいよ後がなくなれば、政治的、経済的な支援がスクリーヴァ領主から行われることになりますの。スクリーヴァ領管轄フォーブリッジ自治領、と呼称するのがのが正しいでしょう。実際に領地内にあるわけではございません」

「ってこと」

「へぇー」

「俺の地元のとなりだから補足するとだな、フォーブリッジ自治領の現領主様はディビッド・シャールド・ド・フォーブリッジ様だ」

 しかし、と。

「ディビット様は妙に野心の強いお方と聞くな」

「今のところなにか変な動きとかあったっけ?」

「さぁ? 悪い噂はあっても、よい噂は……といったところですわね。口さがない噂ならば当たり前の事ですが。ですがまぁ、自治領とは名ばかりの、施政にはスクリーヴァ領主の承認が必要ですし、野心ばかりが大きいとなれば……」

「ヘティー?」

「……これは、出すぎたまねを」

 政治に口出しするのはあまり褒められたことではないらしい。いわゆる「ご政道批判」というやつだ。

「ですが、今一番の噂になっていることといったら……女占い師に入れあげている、ぐらいでしょうか」

「ボクもちょっとだけ聞いたことがあるかなぁー」

「私は、ちょっと、森での暮らし、長かったから……」

「まぁー、カタリナはしょうがないよ。周りがうるさかったろうし?」

 それはそれとして、と。

「ゲオルギウスもずいぶんと大きなトコと顔繋いじゃってるねぇー」

「その土地に風車や教会の時計塔を建てることがあの方の生業ですし、その土地を管理する領主とお付き合いがあっても、なんら不思議ではありませんわ」

「それもそーだけどぉー……」

「手順を簡略化しすぎ、とも言えますわね」

「そー」

 どうも本来はありえないことらしい。

「ゲオルギウス、とんでもないところ紹介してくれちゃって……」

「まぁ、読んでみないことには。まだ決まったわけではありませんわ。まかり間違ってどこからか情報が漏れてしまい、興味をもたれたので仲立ちしただけなのかもしれませんし」

「淡い希望だなぁー……ヘティ、ナイフ」

「こちらに」

 封筒の隙間にヘティから受け取った小ぶりのナイフを差し込むと、ポン、と切るように封蝋を取り外す。

「……なんて、書いて、ある、の?」

「んー、ちょっと待ってね……」

 封蝋を外したのち、くるくると折りたたまれたそれを開いて流し読みしていく。

「……うわぁ」

 アレクシアが思わず声を上げる。

「なん、て?」

「とりあえず……ゲオルギウスの孫が家庭教師やってて、それのツテっぽい」

「それは当然でしょう? もし仮に伯爵夫人と子を成していたとしたら、とんでもない大問題ですわ」

「血筋かわっちゃうしねぇー?」

「たし、かに」

「ま、あの爺様もそこまで型破りではないだろうしな。なぁ兄弟」

「あ、あー……うん、そうね?」

 どの文化圏でもおおむね男が「種」で女は「畑」と認識されてきた。いわば「種」が同じならどの「畑」に蒔いても同じ「植物」が育つという考えだったのである。

 これは男の精子が目に見えて分かることに対し、女の卵子はちっとも見つからないためだ。顕微鏡が開発され医学が発達し、精子と卵子が発見されて、その二つの関係がハッキリするまでの常識である。

 だから「誰も種を蒔いていない」処女がありがたがられたのだ。

(まぁ、遺伝子の話しても面倒になるだけだし……)

 血筋は男で繋ぐものだという常識を持っているアレクシアたちにわざわざそんな面倒なことを言うほど修は空気が読めないわけではない。

 迂闊にメンデルの法則の話をしだせば、カタリナあたりなら品種改良ぐらいは余裕でやってのけるだろう。もちろん彼女の研究内容的に、人間の、である。

「でぇ、話を戻すと……てっとりばやい話が、戦えー、って」

「……うん?」

「だから、戦えー、って」

「レクシー、それでは分かりませんわ……」

「えーっと……ゲオルギウスの孫が、まず占い師に相談したみたいで」

 と、アレックスに視線を送る。

「ああ、アレと同じ……」

「そ」

「……どういう、こと?」

「わからん」

「赤毛がおさむに私闘(フェーデ)挑んだのと同じ理由ってことっ」

「なるほど」

 ぽん、と手を打ち、

「非常識なっ!」

「おまえはなにをいっているんだ」

「いや、だってそうだろう? 入れあげてる女占い師の言うことをほいほいと聞いているのだぞ? これが隣の領主とか背筋が寒くなるわ」

「……あなた、ご自身の存在意義を完全否定してません?」

「何をバカなことを。領主が入れあげているからこそ占者も判断を誤るのだ」

 私情の挟まった占い師は信用に値しないらしい。

「……仮にも伯爵のご子息にあてがわれた占い師ですのよ?」

「俺から言わせれば、国王が入れあげていれば、たとえ王国の占い師でも信用できんな」

「聞かなかったことにしておいてあげるから赤毛はちょっと黙れ」

 立派なご政道批判だ。どれほどかと言えば、諫言として受け止められなければ、下手するとアレックスの首が飛ぶ程度である。

「とはいえ、理屈は分からなくもありませんわ。私たち、向こうとはちっともご縁がありませんもの」

「うーん……まぁ赤毛よりは納得できるけどねぇー」

 アレクシアは渋い顔をする。

「どういうこと?」

「……ヘティー」

「神前試合ですわ。互いに"お互いが誠実であること"をかけて戦うのです。どちらが勝とうが関係ありませんが、伝統的に、ゲストが勝つ形になりますわね」

「親善試合と奉納試合がごっちゃになったみたいだ……」

「ですわね。歴史的にもそう古いものではございませんし」

「最近なんだ?」

「ええ、ここ百年程度から始まったものですわね」

 しかし何でも戦うことに行き着くんだなぁ、という感想は飲み込んでおく。

(そりゃぁ、神明裁判なんてものが現行の裁判なんだもんなぁ……)

 時代が後になればなるほど、おそらくは修の世界で言うオリンピックのようなものが誕生するのだろう。

 もしくは、世界的に見ても珍しくない、殴りあうタイプの喧嘩祭りか。 

「とはいえ、わざと負けて立てられるのも舐められる原因です。できれば本気で勝ちにいけるとよいのですが……」

 ちらり、と。

「たしかにねぇー。ボクが出てもいーけど……」

 ちらり、と。

「……」

 どうも見られている気がしたので、修は何気なくアレックスに視線を送った。

「俺の出番かっ!」

「赤毛は座ってて」

「修様が出られるべきでしょうね、ここは」

「そーだねぇ」

 わざと視線そらしたみたいだけどぉー? アレクシアはじとりと修を睨む。

 修は、気付かなかったなぁ、と返した。

「実際、俺が出たところでそう強いわけじゃないんだけど」

「またまた」

「ご冗談を」

「ははっ、笑えんなぁ」

「……ごめん、ね?」

 いまだ修の出自について勘違いしているのである。

「まぁ、実際のところ。うっかり殺してしまってはひどく心証が悪かろう。女難と水難以外は、別に試練の星は輝いていなかったのだ。前回は俺やジェニファーの首をうっかり折らなかっただけ幸運とも言える」

「あー、そっかぁー」

「首は、私じゃ、無理、だから……」

「うっかり首から落とすとかそんな訓練は受けてないよ?」

「でも、けがとかさせたこと……あるでしょ?」

 後輩の鎖骨を折ってしまったことはあるが、それは後輩の受身の取り方が悪かったからである。あれは単なる事故だった。

「……ナイヨ?」

「うっそだぁー」

「兄弟、目が泳いでいるぞ?」

「ウソはいけませんわ」

「神様は、見てる……」

 この件に関して言えば、修に信用というものはいっさいない。



「それはそれとしてぇ」

 アレクシアは切り替えるように手を叩く。

「フォーブリッジ自治領はねぇ、温泉が有名なんだ」

「――へぇっ!」

 修は思わず声を弾ませる。

「温泉が有名ってことは、観光か、湯治が主な産業になってるのか?」

「そだねぇー、湯治っていったらフォーブリッジってすぐに出てくるよ。ま、聖地でもないし見るとこもないから観光はないけど」

「あのあたりは一面農地だからなぁ。あるといえば麦畑ぐらいで、兄弟が見ても面白くはなかろう?」

「……温泉が近くにあって、麦が育つのか?」

 それは地質的に大丈夫なのだろうか? という疑問を抱く。

 温泉とは火山の奥底に眠るマグマで温められた地下水である。だから基本的に鉱物資源が多く溶け出しているし、よく聞くラジウム温泉のラジウムとは放射線物質だ。そして火山近くの土は火山灰が多く、地質によっては水はけが良すぎる、または水分を含むと固まる性質があり、強酸性で肥料などの養分を維持する力が低いため、作物を育てるには向かないのである。

 非火山性温泉というものも存在するが、それは地下に一キロ以上の穴を掘る必要があり、かつその付近に地下水が存在している必要があるのだ。もちろん、非火山性でも地質によっては重金属が溶け出している可能性もあるし、元が海ならば高濃度の塩分が含まれている可能性だって捨てきれない。

「なんか温泉の、あったかい空気? を使うんだって」

「ああ、なるほど。温室栽培なのか」

 紀元前後のポンペイの遺跡には南だけガラス張りにした栽培施設の跡があり、これは温室栽培だろうと考えられている。それほど温室栽培の歴史は古く、冬季にも食物を得ようとした過去の人々の知恵の結晶だ。

 そして温室を作るということは、外界との環境を大きく変更することができるというメリットがある。話を聞く限りでは土壌改善よりもよそから土を持ってきたほうが手っ取り早い地質である可能性の高い地域なのだ、植物工場(プラントファーム)のようなものを作って栽培している可能性が高い。

(あれ、でもそれって……)

 侮るわけではないが、その場合は農地と源泉をできるだけ離す、もしくは雨などで土壌が混ざらないよう完璧に隔離する必要がある。温泉の暖かな空気を利用するのであれば、源泉を温かいまま引いてくるだけの技術が必要だ。

 すると建築技術は自然と高度であると判断できるのだが、十四世紀程度の技術水準で温度を保ったまま遠くまでお湯を引く、これを達成するにはいささか難しい。

(……まぁ、魔法があるしなぁ)

 そんな疑問を、修は実にファンタジーな理不尽の代名詞によって強引に納得することにした。

「……またかがくチートのこと考えちゃってる?」

 おかしな革新技術で他領の政治経済を引っ掻き回されてはたまらないと、アレクシアは念を推すように問いかける。

「いや、別に」

「そぉ?」

 それならいいんだけどぉー……ほとんど信用していない、じとりとした目で睨んだ。

「そーいえば、おさむの国も温泉が有名なんだっけ?」

「火山が多くてね。温泉街とか普通にそこかしこにあったよ。草津に別府に登別……名湯百選なんてあるくらい」

「うわぁ……」

「なんだその火山国家」

「冗談半分だとして、そんな国には行きたくありませんわね」

「いつ、噴火するか、わからないし、ね」

 アレクシアたちにしてみれば、温泉の魅力より火山の恐ろしさのほうが勝るらしい。

「そんな頻繁に爆発なんてしてないよ」

 ただニュースを見ればちょくちょく噴火しているようには感じるが。

「ともあれ、楽しみですわね」

「あ、今回はヘティさんも?」

「ええ、この家を留守にしてしまいますが。アレクシアの手にあるのは、フォーブリッジ領主から送られた召喚状です。従者がいなければ体裁が悪いでしょう?」

「なるほど」

「つまり……ここにいる全員で旅行だなっ!」

「旅行ではございません。仕事、会談です」

 浮ついてこの男は……と呆れるようにため息。

「そーなると今日は忙しくなるねぇー」

「ええ、騎士団への申請や、旅の準備も必要です。待たせては領主に不敬ですしね」

「……ところ、で」

「なぁに?」

「この、人数で、なにで、行く、の?」

「……あっ」

 今更思い出したようにアレクシアが声をあげ、

「浮ついていたのは、私もでしたわね……言われるまで気付きもしませんでしたわ」

 ばつが悪そうに、ヘンリエッタは席を立った。

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