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#11

「じじいの名前は、"歯車"ゲオルギス、っていうんだ。うちのばあさんは、ジョージって呼んでるけどな」

「ジョージ……"風車小屋の"ジョージか」

「ありゃ、そっちのほうが、ここじゃ通りがいいのかい?」

「いや、俺はスクリーヴァの生まれだ」

「へぇ、そりゃずいぶんと遠いところから来たんだねぇ」

 話を聞く限り彼は有名らしいが、この世界の生まれではない修にはまったく理解できない話だった。

「しかし、金持ちだな」

「国中で時計やら風車やら作ってたら、そりゃ金も貯まるわさ」

 普通の宿屋よりも少々高めの宿なのだろう。確かに古いが小奇麗な廊下を、ジェニファーに先導されながら歩く。

「時計技師なんですか?」

「そんな他人行儀にしなくとも別にいいよ……そうさね、元は若いときの趣味だって言ってたけど、今じゃいろんなことに手ぇ伸ばしてるからね。小麦挽くための風車小屋とか、教会の時計とかさ。もうどっちが本業かわかんないよ」

 修の世界の十八世紀、貴族にはマニアックなものを趣味にすることが流行していた。そうした趣味を持てるだけの余裕があるという証明でもあるのだろう。知的好奇心を満たすと言う意味では、複雑な機構を持った時計などはちょうどいいとも言える。

「――ここだよ」

 ジェニファーが部屋の前で立ち止まった。



「……あのじい様、結局一言も話さなかったな」

 バカと話す趣味はない、と。

「こっちにきてから、どうも知恵比べしかしてない気がする」

 白髪交じりの痩せぎすな老人――ジョージは修に対して、眉間に深い皺を刻みながら木製の歯車の模型を投げ渡した。

 その模型は、山の数が十二丁の小さな歯車と、山の数が二十一丁の大きな歯車、その二つが組み合わさってできたもので、特に複雑な機構があるわけではない。本当に二つの歯車がどう連動するかだけを見るための模型だった。

 ――ジェニファーが言うには「それを解いたら考えんでもない」という意味らしい。

「ほんっとわるいね、うちのじじいが」

 血縁上は孫娘にあたるジェニファーが謝罪する。

「まったくだ。なんと礼儀知らずなじい様だろう!」

 アレックスには言われたくないだろう。

「しかし兄弟……それ、解けるか?」

「さぁ……?」

 修は工業系ではないため、歯車についての知識なんてほぼないに等しい。

 大小二つの木製の歯車で作られた模型を指で弾いて「からからかちからから……」と音を立てて回しながら、

「でも、まぁ、専門的なことじゃあ、ないんじゃないかな?」

 ある種の確信をもって、そう呟く。

「なぜだ?」

「何が問題なのかも言わないで、単純に『解け』としか言っていないんだから……見ただけですぐに分かること、なんだろう」

「なるほど……」

 アレックスは納得するように頷いた。

「しかし、その、なんだ……」

「なに?」

「兄弟はいったい、何者なのだ……?」

「一般人だよ。ちょっとだけ、あまり使わないようなこと、知ってるだけで」

「いっ、ぱん、じん?」

 そりゃないだろう、と。そう口にしそうなアレックスをじとりと睨んで黙らせた。

「ともあれ、兄弟は何でも知っているなぁ」

「なんでも知ってたらさっさと帰ってるよ」

「それは、道理だな……」

 修は、指先で歯車をくりくりと前後に動かす。

「……で、答えは?」

「うーん……一応、アレクシアにお伺いを立てないと」

「お伺いを立てる?」

「いや、さ。一応、アレクシアの客分じゃないか、俺。それで、これ、専門知識じゃないけれど、それなりに重要な知識のはずだから――」

「なるほどぉ、それは、殊勝な心がけだぁ」

「――うおっ! アレクシア!?」

 突然の、背後からの声に思わず上ずった声を上げて驚いた。

「びっくりした?」

「びっくりしたもなにも、心臓が飛び出すかと!」

「あはは、おおげさだなぁー」

 アレクシアは笑い飛ばした。

「なんでここに?」

「おさむのこと、見つけたからだよぉー?」

 騎士は約束を守らなくちゃ、と。珍しく剣を帯びたアレクシアが修を見上げながら言う。

「仕事、こんなに早く終わったのか?」

「まあね」

「すごいな」

「まあね!」

 しかし小さな声で「はなし、聞くだけだったケド……」と付け加える。

「でも、よく見つけたな?」

「いったじゃーん? ボク、この町の人のほとんどと友達だって。ちょっと聞けば、どこにおさむがいるかあっというまに分かっちゃう」

「そりゃすごいな……」

「すごいでしょ? おさむが、お風呂屋で娼婦のことえっちぃ目で見てたことも知ってるよ?」

「それは誤解だっ」

「くふふ、知ってるぅー」

 からかうと必死になるのが可愛いと、ころころと笑った。

「よくがまんしたねぇー? ごほーびに、あとでぎゅってしてあげるぅー」

「いいよ、別に」

 ヘッドロックのことを思い出して、修は辞退する。

「ぎゅって、して、あげるぅー」

「いいよ」

「して、あげ、るぅー」

「いいから」

「する、から、ねぇー?」

「決定っ!?」

 どうしてそうなるのかをイマイチ理解できないでいるが、もしかしたら、これがアレクシアの言っていたハニートラップに対する牽制なのかもしれない。

 間近で目撃しているアレックスが、冷やかすような笑みを浮かべていた。

「ところで、おさむ、この人は?」

「えっと、彼女は」

「ジェニファー、"木苺"ジェニファーだ。ここにはじじいの付き人っていうか、護衛できてる」

「"歯車"ゲオルギスさんの、孫らしい」

「ふーん?」

 アレクシアはあまり理解していなさそうに相槌を打つ。

「確か、アレックスのところだと」

「"風車小屋の"ジョージ」

「ああ、"時計塔の"ゲオルギウス? あのお孫さんかぁ……」

 地方によって、本当に呼び名がバラバラらしい。修が補足してやると、ようやく誰だかを理解したようで、ジェニファーににこりと笑顔を向けた。

「改めて、ボクはアレクシア。"花の騎士団"所属、"薔薇騎士"アレクサンドラ・アンドリュー。ジェニファーさん、だっけ? お爺様のご高名はかねがね」

 目が笑っていない、まるで敵を見ているかのようだ。

「ああ。改めて、よろしく」

 ジェニファーはあまり気にしていない。祖父が高名なおかげで、こういった態度には慣れているのだろう。

「それはさておき。おさむ、よく呪術師のこと見つけたねぇー?」

「兄弟の女難の相のおかげである!」

「なるほどっ」

「なるほどっ、じゃない!」

「あたしはただ、二三日前に、町でなんぞ言葉が通じなくて叫んでたサムライのこと、たまたま見かけたから声かけただけなんだけどね」

「ふぅーん」

「ところで、なんぞうちのじじいのこと探してたみたいなこと言ってるけど、どういうわけだい?」

「それは、ないしょ、なんだなぁー」

「そうなのかい?」

「えっ? あー……」

 別に話してしまってもいいのかもしれない。が、アレクシアがわざわざ秘密にするということは、うかつに弱みを見せるのは得策ではないのだろう。

「別に、国に帰れないことぐらい言ってしまっても構わないのではないか?」

 ――しかしその配慮を、アレックスが台無しにする。

「なんだって?」

「あっ、こら、赤毛っ!」

「いいではないか。どちらにせよ、ジョージ殿の協力が必要なのだろう?」

 アレックスに悪気はない。

 純粋に、正直なだけなのだ。

 決して、交渉には向かないほどに。

「そりゃ大変じゃないかっ! そう言ってくれりゃ、ぶんなぐってでも言うこと聞かせてやったのに!」

 あちゃぁ、と。アレクシアが天を仰いだ。

「女難って、今回の主な原因、アレックスじゃねぇ……?」

「なんとっ!?」

「で、どうするサムライ? 今すぐぶん殴ってくるかい?」

「いや、暴力はやめて」

 さて、どうやって収集をつけようか……こちらに来てずっと頭を働かせているような気のする修は、増えてしまった問題に、さらに頭を抱えてしまった。



    ○



 ジェニファーを説得し、どうにか穏便にことを済ませることができた。その後の帰り道は終始無言で気疲れもあるのだろう、なかなか骨が折れたと深いため息をつきながら、ソファーに身体を沈みこませた。

「お疲れのようですわね」

 ヘンリエッタが苦笑する。

「ほんとだよぉー!」

 これだから学のない平民はっ、と悪態をつく。

 修には顔をしかめたくなるような発言だったが、どんな国だって時代によっては教育を末端まで行き渡らせることは不可能だったのだ。アレクシアがそう口にするのも仕方のないことなのだろうと、聞かなかったことにした。

「なにが悪かったというんだ……?」

 さんざんな言われようだが、アレックスはまったく理解できていない。修から見れば彼に学がないとは思えないので、おそらくは性格的なものなのだろう。

 そもそもアレックスは占い師だ、ウソやでまかせを言うのになれていないのかもしれない。そのあたりは、この世界の常識に詳しくない修にはよく分からないことだった。

「それで、首尾はどうなりましたの?」

「あー、うん」

 アレクシアは緑茶のカップを両手で包み込むように持ってその熱を味わいながら、

「"時計塔の"ゲオルギウスだった」

「……ジョージ、が?」

「知り合い?」

「昔、怪我、治したの」

「へぇっ!」

「それ以来、会って、ないけど?」

「なぁんだ」

 意外なつながりだと驚くが、しかしそれきりということに落胆した。

「……芸術家肌、だったでしょう?」

「ええ、すごく」

「気難しい、人、だから……私も、あまり、口をきいたこと、ないわ」

「それどころか口すらきいてもらえませんでしたよ」

「あの人らしい」

 カタリナが苦笑する。

「ヘティ」

「はい」

「"時計塔の"ゲオルギウスについて、おさむに教えてあげて」

「わかりました」

 こほん、と小さく咳払いを一つ。

「ゲオルギウス様は、元を辿れば木材を取り扱う商家の次男ですわ。実家のつながりで、大工のところへ養子に出される予定でしたのですが……まぁ、よくある話になりますわね。それを嫌って、十二のときに家を飛び出したそうですの」

「家を?」

「ええ」

「それから、魔術師に?」

「いえ、最初は絵描き――芸術家でしたの。鳴かず飛ばずで、作品も、価値もさほどありませんでしたが」

 そこで一旦区切るように、ヘンリエッタが緑茶で唇を湿らせる。

「その時期に大量の借金と愛人をこさえまして、いよいよ首が回らなくなって、実家に頭を下げたそうですわ」

 修は思わず「うわぁ……」と声を上げてしまった。

「まぁ、芸術家としての生活は決して無駄にならなかったようでして、元々あった建築の才能が開花し、今に至るのです」

「おさむも注意しないとダメだよぉー?」

「なんでそうなるんだ?」

「兄弟は、稀に見る女難の男であるからな」

「なんでそうなるんだ!」

 占いというものにいまいち信用が置けない修からすると、お前は何を言っているんだ、という気分である。

「話を戻しますわ。ゲオルギウス様の専門分野に関してですが……あまり声を大にしていえたことではありませんが、まぁ、才能が開花したおかげでそこそこ裕福になったせいか、いわゆる、身に覚えのない愛人や娘が大量に出現したそうでして」

「……血縁でも調べる魔法を?」

「ええ。元は特定の血筋――それこそ、領主や王ですわね――にしか効果の見られないものを、平民レベルにまで落とし込んだのです」

「それは、すごいの?」

「ええ、それはもう。カタリナ様なら、よくご存知かと」

 カタリナに視線を送ると、小さくうなづいた。

「範囲を、広げると、精度があまく、なったり……魔力、使いすぎたり、まったく意味のない、結果が出たり……」

「なるほど」

 先端技術や未発達な技術を民間レベルにまで落とし込むのと同じようなものらしい。

「あとは、長く芸術家として旅を続けていたためでしょう。馬ではない、魔法で動く乗り物についての研究もしているようですわ。それに歯車を使うことから、あの方の住む場所では"歯車"ゲオルギス、と呼ばれているようです」

「なるほど」

「こんなところですわ」

「ヘティ、ありがとぉー」

 満足したように、アレクシアはうなづく。

「まぁ一言で言っちゃうと、気難しいお爺ちゃん、ってところだねぇ」

「協力してもらうのに、相当苦労しそうだな」

「それどころか無理かもねぇ?」

「どういう意味だ?」

ボクの相手(ひこくにん)、ゲオルギウスだもの」

「――はぁ!?」



 アレクシアの用事が話を聞くだけで終わってしまったのは、本人であるゲオルギスが出てこなかったからだという。神明裁判ゆえに「すべては神の手に委ねる」と言えばそういうこともありうるらしい。

 ようするに「つべこべ言わずにかかって来い!」ということだ。

「はぁ……」

 なかなか難しい状況だ。

 場合によってはアレクシアの客分というだけで協力を拒まれるかもしれない。かといって、アレクシアにわざと負けてもらうことは不可能だ。

 そもそも、どういう経緯で裁判に発展したのかを知らないのだ。仮に、負けてしまえば取り返しの付かないようなことだったら、それこそ目も当てられない。

 ゲオルギスから受け取った歯車をかたかたともてあそびながら、修はあてがわれた部屋でベッドに座りながら、一人静かに思案する。歯車は面白みのあるものではないが、木特有の温かみが修の心を癒してくれるのだ。

 ――ごんごん、とノックがされる。

「おさむ、おきてるぅー?」

 アレクシアだ。

「起きてるよ」

「入るねぇ」

 そこで「入っていい?」ではないのが実にアレクシアらしい。ドアの向こうから、鎧を着ていない薄着の彼女が現われた。

「落ち着いた?」

「そういわれるほど、ひどく落ち込んでる、ってわけじゃなかったけどね」

「そっか」

 大事を取って休めと言い出したのはアレクシアだ。

「聞かせたくない話でもするつもりだったんだろ?」

「あはは」

 ちろりと舌を出した。

「隣、すわるねぇー?」

「ああ」

 修が少し横にどけると、アレクシアはかなり近くに腰掛ける。

「翻訳ができないかも、って、カタリナ残念がってたよ」

「ああ、うん……」

 正直なところを言えば、小説の翻訳をするのが怖い。もしかしたら、帰る方法はないと書かれているかもしれないからだ。

「なんで、急にそのことを?」

「さぁーねぇー?」

 ボクにもわからないや、と。わざとらしく、不思議そうに首をかしげる。

「ところでおさむ」

「うん?」

「そのオモチャみたいなの、なぁに?」

「ん、ああ……歯車の、模型だな。ゲオルギスさんから出された、宿題みたいなものだな」

「しゅくだい?」

「ジェニファーさん曰く、バカと話す趣味はないから、これを解いてみろ、って」

「といてみろ?」

 アレクシアは首をかしげる。

 どう見ても、パズルにもなっていない、二つの歯車がかみ合って回るだけの、ただの模型だったからだ。

「パズル、じゃぁないよねぇ? それ」

「まぁ、うん」

 修は歯切れの悪い返事をする。

「なにかあるの?」

「なんていうか、これこそ、お伺いを立てたかった問題で……」

「なになに?」

 アレクシアが身を乗り出して――身体をほぼ密着させて顔を近づける。

「近い近い」

「こっそり、ね?」

 部屋で二人きりの状況だが、どこで耳が立てられているか分かったものじゃない、と。とにかくアレックスの耳には絶対に入らないようにしたいらしい。確かにあの純粋なアレックスのせいで面倒なことになったのだから、当然の配慮なのかもしれない。

「……歯車の山数が、十二と二十一なんだ」

「…………どういうこと?」

「山の数が、十二と、二十一なんだ」

「それ……何か問題でもあるの?」

 アレクシアにはその意味が理解できない。

「かなり、大きな問題だな」

 しかし修が言わんとしていることを知っているのは専門家か、学者ぐらいなものだ。アレクシアにそれだけで理解しろというのは酷な話である。

「歯車が壊れやすくなるんだ」

「……壊れやすく?」

「俺も、専門じゃないから、詳しいわけじゃないんだけどね」

 修がそれを知っていたのは、斜に構えたような学生生活を送っていた高校時代、数学の教師から、勉強する意味のない勉強はないと諭された時に教えられたからだ。

「どーして?」

「うーん……公約数って分かる?」

 アレクシアは首を振った。

「二つ以上の数を割ったときに、その割る数が同じになるもので……この歯車の場合だと、三になる」

 歯車を指で弾いた。

「こうやって回転させていくと、三の倍数の山どうしが、三の倍数の山とずっとかみ合い続けるんだけど……」

「問題なの?」

「うん。このうち、どれかの山に傷がつくと、その山ばっかりが傷ついて、すごく壊れやすくなる。強い力がかかる歯車だと、疲労が集中して、壊れる」

「むずかしいなぁ……」

 アレクシアはいまいち理解していないようだ。頭を使わずに生きていたいといっていたし、そもそも数字に強くないのかもしれない。

「これを防ぐのには、互いに素……公約数が一になるようにすればいい」

「そんなこと、できるの?」

「簡単だよ。そう、素数ならね」

「そすう?」

 当たり前だがこの手のネタは通じない。不思議そうな顔をするアレクシアを見て、当たり前かと苦笑した。

「一と、自分の数字でしか割り切れない数のことだよ」

 当然だが、割り切れる数字――約数が一である数同士ならば、その公約数は必ず一になる。どんな数でも素数である限り組み合わせることは自由自在なのだ。

「あとはまぁ、連続した数字も互いに素だね、当たり前だけど」

「むずかしくて頭がパンクしちゃうよぅ……」

 そんなに難しい話をしたかなと、修は首をかしげた。

 数学的な知識がないとなかなか付いていきづらい話だったのだが、修はそれをまったく理解していなかった。教師にはあまり向いていないタイプである。

「まぁ、これをゲオルギスさんに言う機会、この先ないかもしれないけどね」

 修はアレクシアの庇護下にいる論客だ。主人を助けるのが客分の本分であるのに、それを放棄して他者の協力をするのは大問題である。

 この程度の知識ですら、修は、アレクシアの許可なしには口にできないのだ。

「ちゃんと考えてくれてるんだねぇー。えらいえらい」

 赤毛とは大違いだぁー、と呟く。

「おさむ、ごほーび」

 両手を広げて、さぁ来い、と。

「……牽制のつもりで、でまかせじゃぁ、なかったんだ?」

「どんな場であれ、言ったことは翻さない。これが貴族だ」

 そう言うからには、おそらくテコでも動かないだろう。

 アレクシアは頑固なのだ。

「また、やらなきゃ、ダメなのか?」

「ダメだね」

「いいじゃん、誰も見てないし……」

「ウソをウソにし続けるにはウソをつくしかないんだよ?」

 それに、と。

「こーやって毎日、ボクにしか欲情できない身体に調教しないといけないしねぇー!」

「帰れっ!」

「まぁまぁ、いいからいいから……裁判のこと、教えないといけないしね?」

ハグ(それ)裁判(これ)とになんの関係があるんだ」

「ないけど?」

 アレクシアはあくまで頑固なのだ。

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