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第1話「第一の村、ドワーフの村」

 きっと人類共通の敵が現れたとしても、『ヒト』という種は小競り合いをやめないだろう。

誰が『しとめた』かで各国の位置づけが決まるだろうから、先進国は我先にとまた争うに決まっている。それが愚かな行為だと気付かないのは、先導者たちだ。

――世界はいつだって、愚か者に優しく作られている。

 けれど仮に。

もし人間たちが共闘を心から願い実行した時に、誰が人間同士で争うことになると想像できるだろうか。

少なくとも、この少年は事態を目の当たりにするまではできなかった。


「ここが目的地なのか?」


「そう。ドワーフの村……だった(・・・)ところ」


 少年が召喚されてから数ヵ月という月日が流れていた。

相変わらず黒いフード付きのマントを深く被っている少女に、少年は辺りを見渡しながら問いかけた。

少女が僅かに強調したところを、おさえながら周囲を見る。確かに、ドワーフの村と言う割には人間が多かった。


「ここにはもう、ドワーフはいないのか?」


「いるよ。あそこ……」


 少年が少女に問いかけると、少女が黒いマントから人間のような真っ白な手を出して、ある方向を指し示す。

その先に視線を向けると、口ひげを伸ばしている小さな老人の姿があった。身長は1mもなく、小さな体のわりには筋肉質だ。


「彼らがドワーフ族。見た目通り力は人間より数倍強いし、魔族の中では賢い種族に入るわ」


 少女の説明が耳に入る中、少年の視線の先にいるドワーフは、大きな荷袋を担がされどこかへ運んでいるようだった。

ドワーフの足にはキラキラ光る粒子が含まれている黒い足かせがかけられている。


「彼らの足に付けられている足かせは魔族の力を抑える(マジックアウト)の効力を持つ鉱石でできてるの」


「なるほど、それは逆らえないわけだ」


「――貴様ら」


 少女とこそこそと話している折、無粋にもかけられた声に視線を向けると甲冑を身につけている兵士がいた。


「見ない顔だな……?ここに何をしに来た?」


「えーっと……観光?」


 少年の背に隠れた少女を見て、答えなさそうだなと思うと少年は適当に言葉を返す。

言った後で、こんな人間いないんじゃないかとも思ったが、もう後の祭りだ。少年は兵士の様子をうかがう。


「なんだ、お前たちは今日の式典を見に来た奴らか」


「式典?」


 兵士の言葉に耳を疑いつつ、ちらりと少女へ視線を向ける少年。

少女はそれに気付いたのか、僅かに首を横に振って見せた。


「ああ!今日からこの村が解放されるんだ。自然もそれなりにあるし、観光地にしようと領主様は躍起になってる」


「へぇ……確かに、自然豊かですもんね」


「だろう?けれど領主様は木々を伐採して、リゾートホテルを建設する気らしい。それも広大な!」


「まさか……ドワーフに木を伐採させているの?」


 ようやく口を開いた少女は、信じられないというような声音で兵士に問い返す。

その様子からただならぬことを感じ取った少年は、僅かに眉をひそめた。


「ああ、そうだよ。あいつらの力は強いしな。それに奴隷だし」


 兵士の言い分は、この世界における人間から見たら一般論になるのだろう。

人間じゃないから奴隷でいい。奴隷だから労働を強いてもいい。そう言った人間の身勝手な意見だ。


「木がドワーフたちにとって、どれだけ大切なものか知ってるの!?」


「なんだ、お前。まさかこの期に及んでドワーフを(かば)おうっていうわけではないよな?」


「あたり――」


 兵士が疑いを持ち始めたみたいで少女を警戒する。

しかし怒りを覚えた少女はそれに気付いているのかいないのか、頷こうとする姿を見て少年は少女の口を手で塞いだ。


「ま、まさかそんなわけないじゃ――」


 ははは、と笑って誤魔化そうと少年はした。

しかしその側でドサッと何かが倒れる音がして、3人とも音のした方を見る。

そこには、体中がぼろぼろのドワーフが地面に倒れていた。


「おい!!何をしている!」


 そう言いながら俺たちの側にいた兵士がドワーフへ駆け寄る。周りのドワーフたちも、倒れたドワーフの側に集まっていた。

少年と少女も、兵士の後を追ってドワーフの元へ駆けつける。


「長老!!」


「ええいどかんか!ドワーフども!!」


 どうやら倒れたドワーフはドワーフ族の長老らしい。

心配するドワーフたちを兵士は持っている槍で散らし、倒れたドワーフの周囲を開ける。


「あ、おい!!」


 少年が止める間もなく、少女は倒れている長老の側にしゃがみこんだ。

呼吸をしているのを確認しながら脈拍を測り、全体の様子を診る。


「……大変、魔解症(まかいしょう)の症状よ」


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