子づくり辞令
「ついに来た! これで俺もとうとう……」
汚い四畳半部屋の中心で、男は本日ポストに届いた書類を高々と掲げて眺めていた。
西暦二〇五〇年。生産年齢人口が二〇一二年の頃から半減し、十五歳以下の国民の割合が十パーセントを切るか切らないか位に達してしまった。
随分と前から、少子化少子化と騒いでいた日本はいよいよ滅びるぞと焦ってしまう。
そうした状況が一つの狂ったものを生んでしまった。
『少子化危機特別措置指令法』――通称『強制子づくり法』である。
内容を簡単に説明すると、未婚の十六〜二十九歳の女性と同じく十八〜二十九歳の男性を無作為に選びだし、対象に選ばれた女性は同じく選ばれた男性の子供を妊娠しなければいけないというものだ。
選ばれると対象に書状の入った封書が国から届き、相手の名前と住所が知らされる。書状をもらった男女がもしも、政府の指定した日数おきに性交を行わなかった場合はたちまちお縄である。
非人道的な声も出されたことはあったものの、この法が施行されるとたちまち目覚ましい人口回復効果が見られた為、かれこれもう八年も続いている。
話は戻って現在。男が手にしている書類こそ、その法律によって強制子づくり法の男性に選ばれたことを示す通知書であるのだ。
「小さな頃から見知った女性から気持ち悪いと、ことごとく敬遠された俺も諦めていた童貞脱出をできるんだ! ひゃっほう!」
男の容姿は、とても容姿端麗とは何処を切り出してあげてもいえるものではない。顔はヒョロ長く頬はこけており、鼻にはパチンコ玉のように大きな出っ張ったほくろが二つも乗っかっている。身体もガリガリの骨皮筋衛門で何故か下っ腹だけはポッコリとしている。
男は、自他ともに認める見紛うことなき不細工であった。
「相手の名前はM子さんか……ゲヘヘ」
下種な笑みと淫らな妄想を浮かべ、男は知らされた相手の住所に到着する。
『はーい』
玄関口に立って呼び鈴を鳴らと、すぐに返事が返ってきた。
「すみませーん。少子化危機特別措置指令法の書状を貰った者ですけどー」
『あ、分かりましたー。今出ますね』
ブツリと呼び鈴の音声が途絶えて家屋のなかでドタドタとした足音が聞こえてくる。
相手女性の若くて黄色い声に好印象を抱きつつ待機する男。
やがてドタドタとした足音が男の目の前のドアに来たところで止まり、ガチャリとゆっっくりとドアが開く。
「始めまして、ぼくが……」
ドアの向こうから出てくる相手に合わせ挨拶しようとした男は、最後まで言い切ることは無く、挨拶の途中で固まってしまう。
男の目の前にいたのは、巨大な肉だった。
その肉の上の方には、顔がついていた。
さらにその顔の点いた肉は、男と同じ書類を持っていた。
どこぞのエロゲのような設定があったら、最悪こうなんじゃないかなと思いました。




