事態の収拾
サブタイトルが~決まらない~……半分あきらめてますよ、うわ~ん!
では第五話、どうぞ!
8/20 改稿しました
そして、闇。
「っ!?ここは……」
眼だけを動かし、周りを見渡す。カラダが異様に重い。耳に入ってくるガラガラと揺れる馬車の音、そうだ、魔物に襲われて……
「起きたか。いや、いい。今の君は力が欠乏している。無理に動かそうとしたら体中が壊れてしまうだろう、ゆっくり休むといい」
助かったのか……そのことに安堵しながら馬車を見渡す、気のせいか荷物が増えているような……
「ん?ああ、この荷物か。君が気絶した後倒した魔物の解体をしてね、私は反対しようと思ったんだが馬が死体の上を通るのを嫌がったんだよ。幸い後ろから来た魔物はどこかに行ったし、道からどかすついでに解体できる魔物はしてしまおうということになったんだ。
ちゃんと君の取り分も確保しているから心配はしないでもいい……。ギルドに言えば謝罪料ももらえるだろう……何せあれだけの統率された魔物、ランク Ⅵ~が妥当だっただろうしね」
ギルドのランクは Ⅹから Ⅰまであり、最初にギルドに入ったときはⅩ、一度依頼をクリアすれば Ⅸになるという仕組みだ、ちなみに俺はランクⅨ。
俺たちがそう会話をしていると、依頼人が荷台に入ってきた。
「おお、起きたか坊主。早速で悪いが……いろいろと話してもらうことがある、わかるな?」
「……術式の事、ですね?」
「わかっているなら話は早い、さあ、言ってもらおうか」
術式とはこの世界の人が使える物だ。その力の源は血筋によって決定されるものとされ、大抵は親の力を大きく上回ることもなければ、極端に低くなることもない。そして、それは人々の一般生活に浸透している。だが、それを攻撃型術式として使うなら話は別だ。
一般的に『火を起こす』という消費術力量を1、としよう。その基準に従って、最も消費する力が少ない攻撃型術式が『ウィンド』、その消費術力量は100、一般民衆の保有する総術力量は25、とても使用するのは無理だ。
なので、中級に分類されている『 フレイムアロー』を使った俺は貴族、ということになってしまう。
そして、貴族の冒険者も居ることには居る。だがその場合は学院に行き、一流の教員と装備が与えられ、十分な予備情報を貰い、訓練を行ってからの事だ。決してこのような所にはいない。
「……俺は。今はただの平民ですよ。あなたと同じくらい賢くて浅ましい、ね」
「……そういうことにしといてやる。何せ彼はただの平民だ、術式など使えるはずがない。秋風さん、君もそう思うだろう?」
「! ええ、そうですね。さしずめ機能の術式はあなたが護符を使ったものでしょう?」
「そうだな、そういうことだ。さあ、休憩は終わりだ。病人は早く寝ろ」
そう言い、高笑いをしながら依頼人は荷台に戻って行った。
馬車が町に着いたのはその3時間後の事だった。
港町イラストリアス。その起源は約1,200年前、天魔大戦の折、ここを拠点にして魔領のある大陸に攻め入ったことから始まる。約800年前には東方に大陸と、異なる文化が発見され、その拠点としても使用されることになったため、この町はより一層栄えることとなった。
東方に対する貿易拠点はここと、年の3分の1が氷に閉ざされることとなるノイルワークだけ、航続距離の関係らしい。
不意に、秋月さんが何かつぶやいた。
「どうかしましたか?」
「いや、なんでもない。……考え過ぎだな。それよりも、体はもういいのか?」
「大丈夫ですよ、歩くくらいなら何とかなります」
「そうか。お、どうやら終わったようだ」
その言葉に前を向くと、確かに依頼人がいかにも商人然とした男との会話を終えて、いや、会話をしながらこちらに向かってきていた。
「――では、そういうことで。頑張れよ、クリス」
「ああ、お前もな、リンツ」
そう言って、二人は握手を交わして別れた。
「ん。積み込みやら手続きが終わるまで少し時間がかかる。そうだな……14時に又ここに集合だ。」
7の時か……今からだと、ギルドで買取物を買い取ってもらって、飯を食べたらちょうど良い位かな。
「そういえばまだ名前を聞いてませんでしたね」
「ん?ああ俺か、俺はワルター・リンツ、そういやまだ言ってなかったな。よろしく」
「はい」
そう言って、ワルターさんは馬車を操作しながら港のほうへ行った。
「さて……じゃあ冒険者ギルドに行こうか。エル君」
その言葉に、袋を持って、歩き始めていた秋月さんの横に付く。
適当に話をしていると、ほんの10分ほどでギルドの前に到着した。アンスバッハの町とあまり変わらない入り口をくぐって中に入る。受付でこの町に来るまでの事情を簡単に話すと、奥の階段から初老と思われる男性が降りてきた。
「ふむ……この子達がそうかね? ここの副ギルド長をやっているセアン・ビアックだ。早速だがその話、詳しく聞かせてもらいたい」
術式を使ったことは隠しながら昨日の様子を伝えていく。すべてつたえ終わると、副ギルド長は溜息を吐き、考え込み始めた。ギルドの職員が書類を持ってきて彼に手渡す。その書類を見て、彼は改まってこちらに向き直った。
「魔物の倒し方では引っかかる所があったが……君たちが持ってきた魔物の素材は昨日のほぼ同じ時間に狩られた物で間違いないようだし、ほとんど嘘はついていないようだ。それに、使い魔の報告では確かに多数の足跡が確認されている」
あとから教えてもらった話だが……各ギルドにいる2名の副ギルド長と1名のギルド長には、職業スキルとして相手の会話が嘘かどうか見破るスキルを持っているらしい。
「それを踏まえての補償だが……今回の出来事は不測の事態としか言いようがないので特別なものは渡せない、まあ待て」
その言葉に反論しようとした秋風さんを手で制しながら、副ギルド長は話を続ける。
「特別なものは渡せないが、ランクの昇格と今回持ってきた素材にイロを付けることぐらいはできるだろう、それよりも……私たちはその襲ってきた集団の情報が欲しい。君たちが持ってきた報告では3割程を撃破したことになっているようだが、逆に言えば7割、100体以上の魔物の群れがいることになるのだ。
それが何にしろ、この都市の周辺にその規模の魔物の集団がいるのは好ましくない状況ではある。襲われた大まかな位置を教えてくれないか?」
と言われても俺は途中まで気絶していたからわからない。
「そうだな……馬車でゆっくりと行って4時間ほどだったから、80キロくらいかと。戦闘の跡があるからわかると思うぞ」
「ふむ……ありがとう。早々に調査隊を放つことにしよう。それで昇格の件だが……その少年をランク Ⅶに、君をランク Ⅵにしようと思う。異存はないな? じゃあギルドカードを渡してくれ」
ギルドカードを渡して、更新を待つ間に買い取りのほうを済ませるのだが、その取り分で問題が起こった。
「だから、3分の1でいいといっているでしょう!」
「いいや、そういう訳にはいかない。きっちり半分貰ってもらおう」
……ギルドの人の話だと少し論点がずれていたらしいが。
買い取り額の配分が済んで(結局半分押しつけられた)ギルドカードの更新が終わった。思いもよらなかった事とはいえやっぱりうれしい。
「……せめてお昼ご飯は奢らせてもらいますよ」
「まあいいが、意外と強情なのだな、君は」
「元はと言えば……いえ、なんでもないです。で、何頼むんですか?」
「じゃあ、この刺身とご飯。それに味噌汁かな」
「……聞いたことないですね」
「ん? それはそうだろう、わたしの故郷のものだ。むしろここにあるのが不思議なくらいにマイナーだぞ」
「そういえば、秋風さんってどこ出身ですか? 東の方と言えばやっぱり連邦ですか?」
800年前発見された新大陸では、中華連邦と呼ばれている国がその地を治めていた。その後、何度か内乱が確認され、国の名前こそ変わらないものの、実態は当初と大きく変貌している。今はある程度落ち着いていて、穏健派と呼ばれる人たちが議会を組織し、政治にあたっているのだ。
「いや、中華連邦ではなく、その東にあるジパングという国から来たのだ。四季折々のいい国だぞ、そして何よりも平和だ。」
「東方大陸のさらに東ですか……一度行ってみたいですね。あ、料理が来ましたよ」
無理やり生魚を食べさせられたのはいい思い出(?)になった。
昼ご飯を食べて待ち合わせ場所に向かう。そこにはワルターさんが何人かの冒険者と話をしていた。
「お、来たか。この人たちはギルドの調査隊だとさ、途中まで同行するらしい」
そういうと、ワルターさんは馬車のほうへもどっていった。
「君が馬車の護衛かい? 僕はカルマ・サントス。君が本当に魔物の集団から逃げ切ったのか怪しい所何だが、副ギルド長がそういうからには本当なんだろう。せいぜい足を引っ張らないようにしろよ。そして可愛い嬢さん、君も護衛対象かな?」
御嬢さんと呼ばれた秋風さんは、一回ため息をついて冷静に言い放った。
「君がどう思っているかは知らないが、わたしもれっきとした護衛だ。ゆめゆめお忘れなきよう、さ、リリア君早く行こうか」
後ろで男が舌打ちをした音がした。若干、心配であった。
今回は説明回でした、次は戦闘を入れます、入れたいです。ちょっと早いかもとは思うけど徐々に主人公が強くなっていきます、お楽しみに。
※キザ男はすごくむかつく救いようのない奴と覚えておいてください。
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感想、とても心待ちにしております。
タイトル、変えようかな……
第六話兼最終話、手違い《・・・》で消してしまいました。完結済みにしちゃったしなー、ショウガナイナー改稿して投稿しますかー(棒)