突然の訪問?
少し遅れました。すいません。
では第三話どうぞ!少し短めですが
フェアラスさんと別れた後、北へ向かう。
冒険者になれば、一部指定宿屋の割引や税の軽減等が約束されるが、代償として戦争への参加が義務付けられるのだ。いくらか仕事をこなせば一般層よりはるかに高い収入を得られるこの仕事は、ハイリスクハイリターンなものとして世間から認知されていた。
少し歩いた後、先ほど教えられた看板を見つけた。迷っていても仕方がないのでさっさと建物の中に入る、少し尻込みはしたが。
ギルドは、冒険者が出払っているらしく、人は閑散としているものの、そのお蔭で受付の場所はすぐわかった。面倒事が起こらなければいいが、と思いながら受付の前まで歩く。やはり子供と言うのは珍しいようで、対応をした人は優しく話しかけてきた。
「どうしたのかな、ボク?お母さんから何か頼まれたの?」
「いえ、冒険者としての登録をしに来ました」
「……お母さんやお父さんから了解はもらったのかな? 子供の遊びじゃ」
「親は、居ませんよ。いなくなりまし。捨てられたというべきかな?」
その言葉に受付の職員の顔がゆがむ。フェアラスさんと一緒でまずいを聞いたと思ったのだろう。それでもさすがプロと言うべきか一瞬で態勢を立て直した。
「ギルドの入会条件は」
「十歳以上ですし、ジョブの取得もしています」
「……わかりました。では、こちらの紙に情報を記入してください。文字は書けますか?」
返答はせずに、渡された紙に情報を記入していく。名前と性別を書くだけのそれは、すぐに終わった。
「……はい、これで完了です。では改めて……ようこそ、冒険者ギルドへ!」
そのあと簡単な説明を受けた。買い取り条件、場所、クエストの受けかたなどだ。
「――では、説明を終わります。何か質問は?」
「一匹狩ったんですけど買い取りしてもらえますか?」
「いいですよ――」
後の事務処理的なことをして白猫亭へ向かう。金は、少しだが腰の袋に入っていた。
白猫亭は、あまり目立たない表通りから一本入ったところにあった。
入ると同時に、入口に取り付けてあった鈴が鳴る。外観の小汚い感じと反して、中はきれいに片づけられていた。だが店内には誰も見当たらない。
「すいませーん……」
誰もいない、いや、カウンターのほうで何かが揺れたような気がする。カウンターを覗きこむと、そこには……気持ちよさそうに寝ている少女がいた。どうやら先ほど見えた揺れる物は彼女の尻尾だったらしい。
「尻尾……亜人か。珍しい」
亜人は数としては人族に並ぶ。といっても、、一部の種族をのぞいては社会的地位は低く、主に奴隷や、愛玩用のペットとして扱われているものがほとんどだ。その一部の種族にこの少女の猫族は属している。
その特徴は耳と尻尾だろう。というか、それしか人族と変わっているところがない。後は雌が多いというところか。それでも、あまり耳と尻尾を露出するのは好まれなかったはずだが……。それにこの子には獣耳がない。
ちらりと少女の服装を見ると、一応尻尾を隠すような服装をしていた。
そこまで考えたところで二階から階段を下りてくる声が聞こえた。どうやら親なのだろう、幾分か体格が良い。
「どうしたの……ってお客さん?ああもうこの娘ったら!」
そして、寝ていた少女を職員専用と書かれた扉の奥に投げ飛ばした。
「で、お客さん。どうしたんですか?悪いけど初見さんはお断りだよ?」
「いえ……フェアラスさんに勧められてきたんですが」
「ああ!あの人のかい。じゃあ大丈夫だね」
「やっぱりあの子の事ですか」
たちの悪い冒険者や一部の人は亜人を一段下の者として迫害する人がいるのだ。どうやら女将さんは人族らしいし、あの娘は人と猫族のハーフだろう。
「どうやら子供みたいだけど……あの人の紹介だし深くは聞かないよ。どのくらい泊まっていくんだい?安くしとくよ」
結局、一週間の代金を払って泊まることにした。
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次の日、草原に少年の声が響き渡る。昨日とは違い、ところどころ古びてはいるもののちゃんとした防具をつけていた。
朝、この草原に行こうとしていたエルフィンは、女将からこの装具一式を渡されていた。どうやら昔使っていたようで、倉庫の中に埃をかぶって放置されていたものを引っ張り出してきたらしい。
かといって剣が振れるようになるのもおかしい筈なのだが、拙い所はあるものの、十分上手い部類に入るだろう。
それを自覚しながらも、昨日のように前から突進してきた猪モドキを最低限の動きだけで躱し、腹に剣を突き刺す。だが手ごたえはない。その事に苛立ちながらも旋回してきた猪の牙を躱す。いや、躱し切れていない。少しだが防具に傷が入ってしまった。
あの攻撃をした後は次の行動までに若干のラグがある、その隙をついて……
「やあっ!」
驚くほど綺麗に攻撃が入った。その一撃で猪モドキが倒れる。完全に死んだのを確認してから解体作業に取り掛かった。息をつく。そろそろ潮時かな、と少し赤くなってきた空を見ながらふと考える。
なぜ親が俺を殺さなかったのだろうか、と。
普通に考えて余計な秘密を知ってしまった俺はその場で殺されるのが筋だろう。今さら親の情がでてきたか?……ないだろうな、やっぱり。ならば、殺してる余裕がなくなったか、殺すことができない状況に追い込まれたか、だ。
家臣達の反乱、物価の上昇、他国からの攻撃などいくらでも考えられる。
……結局、宿に戻るまで答えは見つからなかった。
国王、と言う言葉を知っているだろうか。
その名の通りこの国の支配者であり、この国を永世中立国に仕立て上げた立役者でもある。去年、七十歳になったその人は、レアスキルを使い、長年の経験と併せてまだまだ元気に政務をこなしているはずだった。
その人の息子がなぜ、この宿屋に居るのだろうか。
この皇太子、スレイフ・カクタスは有能であり、博愛主義者だ。平民を重視する傾向があるので、民衆からは人気があるが、貴族や一部の僧侶からは嫌われている。
入口に立ち尽くしていた俺に、その皇太子が気づいて話しかけてきた。
「この宿に泊まっている冒険者かな? 初めまして……う~ん、どこかで会ったような気が」
この人とは初対面ではない、何年か前、この町に来た時に王城であったことがある。その時は少し言葉を交わしただけだったが、今気づかれると色々とまずい。家に戻ったら歓迎されてとても楽しいパーティーが開かれるだろう。
「そう、ですか?少なくとも私は覚えていませんが」
「そうだよね……じゃあ、名前を教えてくれるかな?」
まずい、下手に答えたらそれこそ家に送られてしまう。この町ではあまり知られていない俺の家だが、多分この皇太子は思い出してしまうだろう。
「……リリア。リリア・ロータスです。よろしくお願いします。」
「リリア君だね。よろしく。
じゃあまた来ますね。エイミーさん」
「あいよ!」
そう言って皇太子は護衛を伴って宿から出て行った……というより魔法でワープした。確かあの魔法はかなり難易度が高いはず。
「そういえば名前をまだ聞いていませんでしたね、女将さん」
「そういやそうだったね。あたしはエイミー・ロアーノだよ。昨日見た娘はレイア」
「エイミーさんですね。さっきの皇太子、よく来るんですか?」
「そうだねえ……週に一・二回は来てるんじゃないかい? どうやら娘を気に入っちまったらしいんだよ」
「それは……いいことじゃないですか。いい人って聞きますし」
「あの人はいいんだろうけどねえ……坊や、その周りの人がいい人とは限らないんだよ?」
一部の貴族がいちゃもんをつけてくるかもしれないってことか。俺もそういう光景は見たことがある。
「それで本人は?」
「それがねえ、よくわからないって言ってるんだよ。まあ、まだあの子も十六だからねえ。
ほらほら、子供は帰ったらさっさと寝る! そうじゃないと食事抜きだよ!」
若干矛盾している気もするが、それを指摘したらさらに泥沼化するような気がしたのでさっさと二階の部屋に行くことにした。
相変わらずサブタイトルと人の名前が思いつかない……テンプレ部分は大幅カットさせてもらいました。要望があれば乗せようと思います、ほとんどが見飽きたものだとは思いますが。
50ユニークありがとうございます!
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