親切な先輩
サブタイトルに悩んでおります。ほんとにこれで良いのか……
ちょっとネタバレ(?)して置くとこの一、二話の内容で後々重要なことが出る、かもしれない(オイ
新大陸暦千二百年
さて、どうしたものか。謎の頭痛から目覚めた後、周りを見回してみると、そこは見知らぬ草原だった。いや、見知らぬではない。どこかで見たことが……
と、気づいた。何で俺、こんなところにいるのだろう。気を失った後何があったのか、聞きたいことが一杯あるが、まずは生き残ることを考えるしかない。幸い練習用の杖や、誰がくれたのかは知らないが剣まである。とても質の良い物とはいえないが丸腰よりはましだろう。
俺がその場で今後のことを考えていると後ろからナニカが突進をしてくるのが感じられた。といっても避けられる距離では、ない。飛ばされた、と自覚した後、とっさに体勢を立て直して受け身をとれたのは奇跡と言えるだろう。背中に注意を払っていなかったことに後悔するが、なおも突進してきた猪のような魔物を避けるために横へ飛ぶことを余儀なくされた。
「ちいっ!」
背中が痛いが構っている場合ではない、腰に装着していた剣を抜く。情けないことに剣の先が震えているがどうしようもなかった。今度こそ仕留めん、と向かってくる猪に何とか剣の先を向け……偶然にも猪の眼球に刺さった。
その衝撃で剣が吹き飛ぶ。万事休す、と目をつぶって来るであろう衝撃に備えるが……
パァン!
その音とともに、何かがはじける音がした。続いて、体全体に生暖かい液体がかかる。しばらくして、恐る恐る目を開けると、そこにあった物は頭がなくなった猪の胴体より下であった。
それと同時に頭の上にポーンと音が鳴り、目の前に文字と、映像が浮かぶ。職業選択、と書かれた物の下にあった物は≪剣士≫の表示、それにはすごく興味を惹かれたが、それよりも飛んできた矢がどこから放たれたものか、ということの方が気がかりであった。
幸い、というべきか矢を売ってきた人は早々に見つかった。
「大丈夫か?」
見た感じは十代の青年。線が細く、気弱な雰囲気を漂わせている。どうやらこのあたりの出身ではないのだろう。青い髪と眼をしていて、整った顔立ちをしている。若干嫉妬。
「助けていただいてありがとうございました」
「いえ、この事が業務ですので。ですが、銅の剣一本でここへ送り出すとはどの錬成所ですか?」
なるほど、初心者を保護する人、という訳だ。肩には国のマークもついているし軍の人かな。
「いえ、錬成所などから来たのではなく……親から捨てられたらしいんですね。ハハハ……」
自分でも驚くほど乾いた笑いが出た、それを聞いた相手はバツの悪そうな顔をしている。
「それは……失礼しました」
「どうせ嘘を言っても通じなさそうでしたしね。それよりも、あの魔物が倒れた後、変な文字が出てきたのですが何かわかりますか?」
「ああ、それはおそらく職業選択画面ですね。何か表示されていましたか?」
もう一度画面を確認する、相変わらず≪剣士≫だけしか表示されていない。
「剣士、だけですね」
「そうですか。ならばその剣士に指を当てて、習得と言ってください」
言われたとおりに指を持っていき、習得、と言う。
「なにも起こりませんか?」
「ええ、全く」
そのままいくらか時間が過ぎた後、頭にピコーンと音が鳴り、新しい文字の羅列が浮かんで来た。
エルフィン・ローシュタイン 職業;剣士
スキル ■■■の■■ 指揮者
「時間はかかりましたがどうやら成功のようだね、見慣れないものだとは思うけど、一つ一つ紹介していきます。
まず名前と職業、これはそのまま。あなたの職業;剣士はこれと言って特徴のない、いわば平均的なものかな。
次にスキル。これは誰でも一つは持ってて、詳しい能力はその文字にしばらく指をあてれば表示される」
ためしに指揮者のほうに指を翳す。すると、ほかの画面が消えて指揮者の説明と思われる文章が表示された。
≪指揮者≫ アンコモンスキル
効率的に部隊を指揮することができる。指揮下の生物の全能力+五%、スキル■■■■■を付与
尚、自分にも効果あり。
「おそらく黒く塗りつぶされている部分があると思います。それは特定の条件を満たすことで発動することになってて、だいたい中身は決まってるね。どんなものがあるかな?」
その質問に、俺は少し悩んだ。別にこの相手に不信感を抱いているわけではない。ただ、父から教えられた「手札を無条件に見せるな」という言葉が頭に引っかかっていたのだ。
「(といっても、何も問題はないのだろうけど)指揮者、ですね」
「指揮者、ね。少し待って、目録で確認しますので」
そう言うと、彼は背負っているバッグを手に取り、中を探った後一冊の大きな本を取り出した。俺がそれは何か、と聞く前に彼は「検索;指揮者」と言った。その言葉に反応してか、自動的に本のページがめくれていく。三秒ほどした後、あるページで本がめくれるのが止まった。彼はその本を回転させて俺に見えるようにする。
指揮者、アンコモンスキル。
発現率は三万人に一人。
一度でも五百以上の生命体を指揮することでスキル封印解除。
封印の中身は集中力増加。稀に指揮者の心得・戦場把握能力の場合有り。
俺は気になっていたことを聞いた。
「スキルの中に封印があるということは、スキル自体に封印がかかっている場合もあるということは?」
「うん、いい質問だね。あることにはあるよ、けどとっても珍しい。生存が確認されている数が片手で数えられるほどには。」
と言うことは、ここで俺にそれがあるということを伝えれば一躍有名人になれるという訳だ。もしかしたら両親が 助けに来るかもしれない。
だが、今彼にこのことを伝えるのは得策ではないだろう。
「へえ~そうなんですか。そういえば名前を聞いていませんでしたね。良ければ教えていただけませんか?」
「ああ、そうだったね。僕の名前はフェアラス・エリックだよ。よろしく、君の名前は?」
「エルフィン・ローシュタインです。よろしくお願いします」
「うん、エル君。じゃあ最寄りの町へ行こうか」
「はい」
町へ行く道中、現在の場所と日時を聞いた。どうやら三か月以上意識を失っていたらしい、距離も……山脈を一つ越えている。排泄や食事は考えないようにした、その方が身のためだろう。
それよりも、だ。ここまでしてなぜすぐに俺を殺すという手段をとらなかったのか。一応親としての自覚があったのかな、と思ったが首を振る。そんな親ではあるまい。じゃあなぜ――
「取り込み中のところ悪いけど。町に着いたよ?」
その言葉にふと太陽を見る。助けられたときは朝だった時刻は、いつの間にか夕暮れになっていた。
「ありがとうございなした、フェアラスさん」
「いえいえ、……その言葉はまだ早いよ。町の案内も必要でしょ?」
「そうですね、お願いします」
とはいえそんなに町は大きくないようで、ほんの三十分歩けば町の中心と思われる場所に着いていた。
中央には大きな噴水、話によると昔、神が作ったとされるものらしい。
「この都市はね、大きく発展させるよりも環境都市としての役割を果たしているんだ。永世中立都市ともいえるかな?だからいろいろな所から物や人・思想が集まってくる。
そして、ここから北へ行った方に行政、館がったりギルドが集まってる。東は居住区。西には商業区。南は何て言ったらいいかな……市場を開いてるね、市場区とでもいうかな?
さしあたり君に関係があるギルドは冒険者ギルドだね、看板に剣と防具が書かれているから間違えないはず。そこで手続きを済ませると良い、説明はギルド嬢がしてくれる。宿屋は東にある『白猫亭』がいいかな、いい主人だよ」
一通り話してもらったところで、フェアリスさんの通信機が鳴る。どうやら上司からだったようで、俺たち二人は別れることになった。
「今日はありがとうございました。」
「どういたしまして。じゃあね、無理をしちゃメッ、だよ?」
その子供っぽい仕草に思わず笑みが浮かぶ。のほほんとしているこの人にはその仕草が似合っているのだ。
「ええ、……では」
「はい、頑張ってください。新人クン?」
そう言って、フェアリスさんは西へ向かう。さて、冒険者ギルドに行きますか!
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噴水のほうから、懐かしい声が聞こえた気がした。
二話目、終了です。ユニークアクセス10突破!ありがとうございました。
この先輩、いえ何でもないです。
文法ミス・誤字・脱字いつでもお願いします。感想、待ってます。
プロット?書き溜め?推敲?ナニソレオイシイノ?……すみません冗談です。作者の場合下手にそれらをすると話が120度違うものになるからできないんですよ……シクシク