照らされた月
とある学校で、名前と普段の様子から”かぐや姫”なんて言われている女の子がいた。
この子は何でも出来ちゃう。故に友達なんて全然いないのだが、突如としてとある女の子に話かけられて、。!?
──私は"霧氷のかぐや姫"と、そう学校では言われていた。
容姿端麗、文武両道、冷徹無敵
それら三つを兼ね備えていると言われてる私は、色んな意味で言われたい放題の状態にあった。
「…美しい。」世の男子たちはみなそう言ってくるが、その言葉は私にとって最悪の言葉だった。──
私の名は"白上 輝夜"。
苗字に"白"と使われているだけあるように、私は誰に対しても眼差しが白い。
…これはとどのつまり、誰に対しても態度が冷たいのである。無表情で、必要以上に言葉を発さない。
次に"上"と使われているだけあるように、私は学年トップの成績を維持していた。
…運動も、勉強も。今のところ何かミスをした記憶はない。
また、名前に"輝"と使われているだけあるように、私は常に輝いている。…らしい。
…常に、私は注目の的。
少し行動をするだけで学校中の男子が喚いていた。…うるさい。
ちなみに女子はというと、私に話しかけてくる者なんていなかった。学校中の女子からは煙たがれていた。…ほんと、、うるさい。
…まさに、"名は体を表す"、それだという。──
──国語の授業終わり、
「な、なあ輝夜さん!
今日放課後みんなでカラオケ行くんだけど、よかったら輝夜さんもどうかな!?」
……時々、こういった誘いが私のところにやってくる。
…さすがにわかる。"みんなで"なんて言いつつ、実際に行ってみたら他には誰もいない、もしくは、二人で抜け出そう、といったところ。ただの誘い文句である。故に、行くわけがない。
…一言、「遠慮します。」
──キーンコーンカーンコーン♪
帰りのチャイムが鳴った。
さて、さっさと帰っt
「…あ、、! あの!! 白上さん!!」
…驚いたな、女子に話しかけられたのは久しぶりだ。
「…なんでしょう」
「…今、少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか、。?」
やたら礼儀正しい人だなと、私は率直に感じた。
…しかし、果たしてこの人は誰だろうか?
名前どころか、顔すらも見た記憶がない。
…いやまあ、普段喋ることがないから覚えていることなんてほぼないのだが、それでも入学当初や体育などの移動のタイミングで顔くらいは見るので、なんとなくわかりはするのだが、。
私は、その記憶すらも持っていなかった。
……本当に、誰が何の用なのだろうか、。
別に断る理由はないので、
「…うん、いいよ。」
というと彼女は、どこかキャッキャした様子でこちらを見上げた。
「それじゃあ近くのカフェに一緒に行きましょう!」
カフェか、いいね。
「どこのお店にするの?」
「ここです!」と、意気揚々にスマホの画面を見せてくる。
ここは、、、ああ!
「駅前の、バラが目立つ店か」
「知ってるんですね!!」
「嗚呼」と小さく頷く。
SNSでも流行っているし、何より、わたし自身カフェが大好きである。
「…ただ、入ったことはないんだ」
「じゃあ丁度いいですね!さっそく行きましょう!」
「うん」と、傍からじゃ見てもわからない笑顔で答えた。
「紅茶と、この季節限定のいちごパフェお願いします!」
「私はコーヒーだけで。」
「え、白上さんコーヒーだけなんですか??」
「うん、私あまり食べれないから。
それより、どうして時間があるか尋ねてきたの?」
「ん?、嗚呼〜、こうしてお喋りしたかったんですよ。白上さん、いっつも教室の端っこで勉強とかしてるんですから、全然話しかけるタイミングがないんですよ」
…一部、これは嘘である。白上さんが勉強してたりするのは本当だけど、お昼休みとか、少しだけ話しかけられるタイミングはいくらでもあった。
……それなのにも関わらず今日まで話しかけてこなかったのは、、
「お待たせ致しました、こちらコーヒーとお紅茶と、期間限定いちごパフェです、ごゆっくりどうぞ」
”なんで喋りたかったの?”とは聞けなかった。…少し失礼だと、そう感じたからだ。
「…おいしそうだね」
「食べたくなりましたか?」と、なぜかニヤついた表情をして尋ねてくる彼女。
「うん、食べたくなったよ、私も頼もうかな」
「じゃ!じゃあ!」バンッ!となぜかテーブルをたたいて身を乗り出してくる彼女。
すると、さっき食べていたスプーンで一口分をすくうと、おもむろに彼女は
「あ、あ〜ん、。です」…なぜか照れながらも私に差し出してくる。
「え、いやさすがにもらえないよ」
「ほ、ほら! あまり食べれないんですよね!?このパフェ思ったより大きいんですよ!?だからきっと白上さんには食べ切れないと思います!それに私も少し食べてもらいたいなーなんて思ってたり?!」
…すごい早口である。
そんなにも恥ずかしいのだろうか?自らしているのに?……でもまあ、
「…パク。」
「…/*-+-/*---*+-/+〜///!!!」
…全く聞き取れやしない、あられもない声を出す彼女に、正直可愛いなと思った。
「…うまいね、。///」…なぜだかわからないが、あんなに恥ずかしそうにしている彼女を見ていると、妙に私まで恥ずかしくなってしまう。…自分でも分かるくらいには、今の私は火照っている。
「…ッ!」照れている?!あの白上さんが?…これは、いいものが見れたかもしれない、。!
──それから、しばらく無言の時間が続いた。
互いに気まずかった。互いに普段なったことのないこの微妙な空気感に、思わず口に運ぶスピードがやや速くなった。
…気づけば完食してしまうくらいには。
「……きょ、今日はもう帰りましょうか」
「…そうだね」
…少し惜しいが、さすがにこの空気感ではもう解散のほうがいいだろうと、そう感じた。
「…ありがとう、楽しかったよ。
……とても、非日常的で、、えっと、、その、、、
…良かったらでいいんだが、こうしてまたどこかに出かけないか? 二人で。」
二人で!?…一瞬驚いたが、私にとって大歓喜である。
「は、はい! もちろん!
…えっとお、、連絡先、交換しませんか?さすがに今日みたいな誘い方は急すぎますし、連絡取りづらいので、。」
「嗚呼うん。いいよ。」
──「…連絡を、入れるべきだろうか、。?
」
あれから数時間。外は真っ暗。
…というか、私はもう既にお風呂を済ませている。
「…向こうは今どうだろう、。?」
──「…明日もまた、誘っちゃおうかな、。?」
あれから数時間。連絡先を交換したはいいものの、互いに何も送っちゃあいない。
「…にしても今日の白上さんは可愛かったなあ///」
あんなにもとろけた表情を見たのは初めてだ。
いつもはもっと生気の感じない、無機質な感じな白上さんだけど、やっぱああいうことには慣れてないのかな?と、そんなことを考えていると、白上さんから一件のメッセージが届いていた。
「…っ!」なんだろう?と思い目をキラキラさせながら開いてみると、”今電話できる?”とのことだった。
「…電話、。?」…少し予想外ではあった、が、その分余計に胸が踊った。
──「…こんばんは。」
「あ! こんばんは! 白上さん、こんな時間にどうしたんですか?」
「いや、そのー…、…ちょっと、喋りたかっただけ、、なんだが、、、ダメ、、だったかな、。?」
「いえっ! むしろめっちゃ嬉しいですよ!」
「…っ! …そっか、ありがとう。」…と、なぜだかわからないが、思わず笑みを浮かべてしまった。
「…そうだ、今度さ、よかったら家に来てみないか?」
「え!!? 白上さん家にですか!?」
「嗚呼、」と、笑顔をこぼしながら、
「家の親、カフェを経営しているんだ。一応…、そこそこ有名になっててね、
私も、、たまに手伝いをしている。新商品の開発とか。
…だから、、、ぜひ今度作る試作品を食べて、感想をもらいたいんだ。 どうかな、。?」
……一瞬、早とちりをしてしまった。
…てっきり、あっち系のお誘いかと思ってしまったが、単なる試食会だった。…恥ずい、。思わず、ベランダに出て夜風にあたってしまう。
…だけど、めっちゃ嬉しい。
「…はい、ぜひ、その試作品を食べさせてくださいっ!」
…と、意気揚々に。何気なく、夜空を見上げた時だった。
…わあ、。!
今日は三日月だった。満月でないのが惜しい。…けど、
「…白上さん、月が綺麗ですね!」
「…っ!」……思わず窓の向こうの、三日月の夜空を見上げてしまった。喉が詰まる。
…確かに、冬の今は湿気も少なく、空気が澄んでいてとても綺麗だ。
だけど、どうしても”I love you”が私の頭の中を駆け巡っている。
なぜならば、今日国語の授業で夏目漱石の作品を取り扱ったところだ。嫌でも彷彿とさせる。
それに、彼女はあまり賢そうには見えないが、かといってバカにも見えない。故に、これだけ有名な逸話であれば、彼女も知っていることだろう。
…だから喉が詰まった。
「…そう、、みたいだね。 ……私、死にたくはないかな」
…え? …呆気に取られてしまった。
あまりにも突然出てきたため、とても心配になってしまう。
普段の様子を見ていると、”無口だけど完璧なお嬢様”って感じだった。
今日の放課後、白上さんは”非日常的で楽しかった”といっていた。だから、その非日常が故に、
その温度差で精神がやられてしまったのではないか、今思うと、白上さんの今の発言はどこか哀愁が漂っていた、そんな気がした。
──それ以降、私たちは長い長い沈黙があった。
…けれど、私はその沈黙を破ることにした。
「…と、とにかく! 今度の試作品、楽しみにしてますねっ!」
「…
…嗚呼、待ってるよ。…良き、友人として。」
少し、安心した、待っててくれることに。
──あれから2日後、私は早くも白上さんのカフェにお邪魔していた」。
「…いらっしゃいまs、あ。」
「……いらっしゃい。待ってたよ、望月さん。」
「お邪魔しますっ! 白上さん!」
「え、何。 輝夜のお友達?」
そう尋ねたのは、私のお母さんだった。
「うん、そうだよ。」
「あら、そっか。 それじゃあ輝夜が接客してあげて?」
「うん、はじめからそのつもり。」
「あらそうなの?」
「うん、今日はあの試作品の感想が欲しくて、私が呼んだんだ。」
「あら、それじゃあもっと早く教えてよ。
望月さん、だったかしら?何か飲みたいものはある?代金は取らないわよ?」
「え、いや、さすがにそれは、。」
「遠慮しないで。 輝夜がお友達を連れてきたのなんて久しぶりなんだからこれくらいさせてちょうだい。」
「そうですか、それじゃあお言葉に甘えて、紅茶をお願いします。」
「あら、かなり品性のあるものを選んだわね。
わかったわ、ちょっと待っててね。」
「…それじゃあ、どっか適当に空いてる席に座ってて。私は紅茶と試作品を持ってくるよ。」
「うんっ! わかった!」…と、彼女は笑顔満載にそう言って、私は店の奥へと向かった。
「…おまたせしました。
こちらお紅茶と、試作品のチョコプリンです。」
「……わあ、。!ちっちゃなお月さまがのってる〜! 可愛い〜!」
「…来月はバレンタインだからね、想いがのるようにしたんだ。」
「そっか〜、それじゃあ、頂きますっ!」
…パクっ。と一口。
「…っ! なにこれえ?甘酸っぱくてすごく美味しい!! この濃厚なチョコとすごくマッチしてるよ!!!」と、彼女は目をキラキラさせてこちらを見ていた。
「ラズベリーソースだよ。
少し赤いもの、かかってるでしょ?」
…まるで、”あ!ほんとだあ!”と言わんばかりの目の動きをさせた。
…スーッと紅茶を一口。──
「すごく美味しかった! 見た目も可愛いし、きっとSNS映えもするねっ!」
「そっか、ありがと。
…じゃあ、2月から期間限定で店でだそうかな。」
「うん、それがいいよ。
……それじゃあ、また今度も来るね。
次は私の友達も連れて。
お店の状況がよかったら、今度は何人かで、今日みたいに話そ? …友達として。」
「……」…少し、間が空いた。
「…うん、そうだね。 楽しみにしてる。」
…私は、目を大きく開きながらも、笑顔でこう言った。
「…うん! よろしくねっ!」
お読み頂き、ありがとうございました!
…これを読まれた方、お気づきですか?
”望月さん”言葉遣いが変わっているのと、あの夜の発言に気づいていないこと。
あと、作品名やタイトルにも仕込みがあるので、良かったらぜひ、一度読み返すなりして、考察、楽しんでみてくださいね!
気が向いたら続編を書きますっ!それではまた。
…あ、ちなみに先に(?)言っておくと、これは百合作品です!




