三 探索
「あるじ、こっちにさねあきさまの気はいがあるよ!」
先頭を歩く山茶花が嬉しそうに吉昌を振り返る。
山茶花は久しぶりの外出が嬉しいのか、木々の合間を落ち葉を踏み締めながらちょろちょろとその小さな身体で跳ね回っている。
時には「あ、へび!」などと蛇を捕まえてはしゃいでいる場面もあった。
「……さん、鬼丸から何か知らせはあったか?」
吉昌が尋ねると、山茶花は大きな瞳をくりくりさせた。
「うん!えっとね……この先に『てんぐのかくれざと』見つけたって!」
「天狗の隠れ里……?」
式神たちは、言葉にせずとも、お互いに意思を伝え合うことが出来る。
鬼丸は先だって偵察に向かわせた式神だった。
「そこまで案内出来るか?」
「うん!さんに任せて!」
山茶花は自信たっぷりに胸を張る。
相変わらず無表情な吉昌と、仔犬のようにじゃれつく山茶花の組み合わせは一見ちぐはぐだった。
(……日が悪い。早く済ませねば)
吉昌は山茶花の後に続きながら、内心独りごちた。
今日の吉昌は万全では無かった。
霊力が通常より半減しているのだ。
それというのも、女ならば必然の月の障りの為である。
理屈は解らぬが、月に三・四日ほどこの期間は霊力が落ちた。
そうであっても吉昌の霊力は並の陰陽師の力を遥かに凌ぐのだが、念のため、吉昌の北の方・真雪の気遣いで今日は式神の山茶花を付かせることとなったのだ。
「今、山茶花の直接の主は私です。他の式神たちと違い吉昌殿の不調も山茶花にはあまり影響しますまい。どうか山茶花をお連れになって下さい」
真雪は明姫略奪の一報を聞くなりそう申し出た。
「お預かりしていた山茶花の字を、今日だけ吉昌殿にお貸ししますわ」
吉昌は力の温存を考え、真雪の提案を受けることにしたのだった。
「あるじ~っ、木いちご見つけた!」
山茶花が無邪気な声をあげた。
目的地に着くまでにまだまだかかりそうだと、吉昌は苦笑ともつかぬため息をついた。




