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陰陽の如く  作者: とうご智
【第三章】 左近衛少曹、後神に引かるる語

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七 代償




その後、左近衛少曹・橘惟次は妻と供に太宰府だざいふの地に下ったと、明姫は風の噂を耳にした。


一見左遷のようだが、惟次は自ら防人さきもりになるべく志願したという。

その一方で、惟次は右手の自由がきかなくなったのだとも伝え聞いた。


(代償だ……)


袿姿の明姫は庭園の橋に佇み、流れる小川を眺めながら考えに耽っていた。


蝉の鳴き声も大分落ち着き、水のせせらぎが心地よく耳を撫でる。


(私が……斬ったから……?)


真明の持つ朱色の妖刀。

人間の身体は傷つけず、憑いた妖のみを貫く呪いの刀。


しかし、その代償は斬られた人間から何か一つ奪い取る。


それは妖の力が強ければ強いほど、宿主となった人間に大きな爪痕を残した。


そうして惟次は、刀を抜くべき右手の自由を失ったのだ。


(それだけで済んだと喜ぶべきだろうか……)


明姫は誰に聞くでもなく、内心で独りごちた。

生温い夕風が頬を撫でる。


息苦しかった熱風はやがて秋風へと変わるだろう。


明姫はふと、あの陰陽頭ならどう考えるだろうかと思った。

きっと、それは惟次が決めることだと、これまで通り淡々と答えるだろう。


惟次が防人を志願した本当の理由は分からない。

自分が犯した罪を償うつもりなのかもしれないし、或いは単に都から逃げたかったからかもしれない。


今となっては確かめることも出来ぬが……


(生きてさえいれば……)


「救った」などと思ってはいない。


ただ、この先惟次が少しでも良い方向に向かえばと切に明姫は願った。


『……人間が在る限り悪意は生まれ続ける』


ふいに吉平の言葉が心の端を掠めたが、明姫は振り払うように大きくかぶりをふった。


「姉上~っ!」


屋敷から葵の元気な呼び声がする。


明姫はいつもと変わらぬ笑顔を浮かべてそれに応えた。




      【第三章・完】


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