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みじかい小説

『みじかい小説』057 / 1/8のクリスマス ~1000文字にも満たないみじかいみじかい物語~

掲載日:2025/12/24

クリスマス・イヴ。

世界中のキリスト教圏で大々的に祝われるこの聖人の誕生祭にあって、日本人で無宗教の私は、ベルトコンベアの脇の台の前に立ち、黙々とクリスマスケーキに飾りつけをしていた。

黄色いふわふわのスポンジを、真っ白なクリームでコーティングしてゆく作業を、もう何回繰り返しているだろうか。

そうして出来た白いケーキの上に、今度は絞り袋を握り、クリームを飾り付けてゆく。

最後に、おもちゃのような小さくて食べられるサンタを乗せて完成だ。

今夜、もしくは明日、このケーキを食べるのは、一体どんな人たちなのだろうか。


休憩時間、スマホを開くとラインの通知が入っていた。

誰かと思えば大学で同じサークルの友坂君で、「今日バイト終わってから遊びいかん?カラオケでも」とあった。

友坂君とは他のサークル仲間と一緒に何度か遊んだことがあった。

私は何度か話した程度だったけれど、特別気に入られていたという印象もない。

そんな友坂君が、今夜、二人きりで会おうと言う。

嫌な予感しかしない。

前半のシフトを終え、既にどっと疲れていた私は、友坂君のラインに、なかば自動的に断りのメッセージを返してスマホを閉じた。


後半のシフトでも、私は黙々とクリスマスケーキを作り続けた。

明日のクリスマス本番のぎりぎりまでクリスマスケーキの需要はある。

なんだったら、26日になって余るくらいでちょうどいいらしい。

そんなクリスマス商戦の真っただ中、歯車の一つとなって、私は黙々とクリスマスケーキを作り続けた。


バイトを終え、一人暮らしの部屋に戻ると、ドアノブにビニール袋がかけてあった。

不信に思い中をのぞいてみると、1/8のショートケーキが入っていた。

見ると小さなサンタが乗っている。

誰だろうかと思い家に入ってから改めてケーキを前にスマホをのぞくと、そこには「メリクリ!バイトおつかれ!ケーキ、届けました。サンタより」という、望からのラインが入っていた。

望は近くに住む同じ文学部の同期で、たまに会ってはとりとめもない話をする仲だ。

「メリクリ!ありがとー!いただきまーす!」

私はそう返して、スマホを閉じた。

今日一日、数えきれないほどのクリスマスケーキを作ったけれど、目の前の1/8ケーキのなんとおいしそうなことか!

「ジングルベールジングルベール♪」

私はそう口ずさみながら、ケーキにフォークを入れるのだった。


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