表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/22

第四話:元先輩プログラマーの条件

日曜の夕方、駅前のコーヒーショップにひとりの男が現れた。

ノートPCと工具のようなキーボードケースを抱えたその姿に、大友はすぐ気づいた。


「……石倉さん?」


「おう、ひさしぶり。SNSで見た。お前、こんなことしてんのか」


石倉誠。かつての職場の先輩で、今はフリーランスのプログラマー。

数年前、会社を辞め、全国を回りながら中小企業の業務ツールを個別に作って暮らしているという。


「ちょっと見に来た。

なんか地場で手伝ってるって聞いたから、冷やかしに」


「いや……本当に助かるかも。

商店街、少しずつ変わってきてるんです。でも、“仕組み”が弱くて」


その日の夜。

駅前の喫茶店の奥の席で、石倉が軽く唇を鳴らした。


「まどかさん、在庫管理ってどうやってます?」


「全部、紙と記憶ですね……」


「POS入れるほどじゃないけど、Excelじゃしんどいって感じだな。

じゃあ、GoogleフォームとGASで作るか。

スマホでもいけるやつ」


「え、そんな簡単にできるんですか?」


「簡単じゃない。でも、俺には簡単」


大友は笑いながらメモを取っていた。

石倉のような人間が、地場の“デジタル係”として加われば――商店街の動きは、確実に変わる。


後日。

豆腐屋の中西が、集金日を勘違いして売掛を飛ばした。


「またやっちまったよ。手帳に書いてるのに、忘れるんだよな」


「じゃあ、通知飛ぶようにしますか」

石倉が手帳を見て、数式を打ち込む。

「店ごとの取引予定、全部スプレッドシートで管理して、3日前にLINE通知飛ぶようにしときます」


「すごいな。なんでタダでやってくれるんだ?」


「大友に貸しがあるだけ。あと、こういうの面白いから」


石倉は笑った。


数日後。

まどかがふと、ノートPCの画面を見て呟いた。


「今週の“午後チケ”の利用率、67%……」


「わかりやすいでしょ。

人は“感覚”で商売して、“数字”で潰れていくから」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ