ep.28
こちらも距離を詰める。
「構えて!」
私は声を張る。
小型ドローンの群れがこちらに照準を合わせ、機銃掃射。
地面が穿たれ、弾丸が土煙を上げる。
掠めるような弾道――まだ距離はあるが、確実に狙ってきている。
「撃て!!」
――バンッ!
シャリとルルレの銃が炸裂。
勢いよく飛び出した弾頭はドローン群へ。
パンッ!
弾頭が空中で弾け、無数の鉄球が放射状に拡散された。
パパパッ! カンッ、キン、ガン――!
鉄球は正面の小型ドローンに的確に命中。
黒煙が上がり、いくつもの機体が回転しながら墜ちていく。
だが、それだけでは終わらない。
後方に控えていたドローンが、間を埋めるように前へ――。
「排莢! ……装填ッ!」
二人は必死にリロードに入る。
手元はぎこちなく、焦りが滲む。
私はオウルを構え、立膝になり腰撃ちの姿勢を取る。
群れの奥――“それ”が見えた。
――大型ドローン。
スコープの先、鋭いレンズがこちらを見ている。まるで瞳のように。
だが、今は撃てない。
(エネルギー弾じゃ、貫通しない)
撃つべきは――小型が一掃された瞬間。
そのときが、唯一の“狙い目”になる。
距離は縮まっている。
高所で狙ったときよりも近い。
標的も大きい。
どこを狙っても、当たる気がする。
(いける……)
私は引き金に指をかけた。
銃がチャージ音を響かせる。
「構え――!」
一瞬の静寂。
「撃て!!」
シャリとルルレの迎撃銃が再び唸る。
弾頭が飛び、空中で炸裂。
パァンッ!!
弾幕がドローンを薙ぎ払う。
ドン、ドンッと機体が次々に墜落していく。
視界が――開けた。
(今だ)
私はスコープを覗く。
標的は中央。大型ドローンの照準レンズ。
あとは――引き金を引くだけ。
……なのに。
大型ドローンは、近づけば近づくほど、巨大に、圧倒的に映る。
キュルキュル――と照準が回転し、“目が合う”。
不気味な圧。
体の芯が凍るような感覚。
動かない、指が。
喉の奥に、黒い感情が渦巻く。
(まただ……)
また、動けなくなるのか。
また、怖気づくのか。
また、誰かを守れないのか。
(こんなんじゃ、私――駄目なのに)
必死に指を動かそうとする。
でも動かない。
そのときだった。
「……落ち着いて。撃てるよ」
誰かの声。
同時に、手に触れる、誰かの“感触”。
(え……?)
一瞬、スコープから目を離す。
私の手に、誰かの手が添えられていた。
幻か、幻覚か、それとも――。
けれど、その手首にある一本のミサンガが、全てを現実に引き戻す。
(……クロア……)
息を吐き切る。
喉に詰まっていた感情を、すべて押し出すように。
スコープを覗く。
見据えた。大型ドローンの“目”。
――撃てる。
引き金を、力一杯、引く。
ピィイイイン……!
高く鋭いエネルギー音が戦場に響き渡った。




