ep12
向かいの屋内、瓦礫越しに見える影が動いた。
次の瞬間、レレリとシャリの二人が顔を出す。彼女たちはイルザさんと同じ護衛部隊の面々。どうやら無事に合流できたようだ。
けれどまだ全員ではない。
護衛部隊のジェレ、それに私たち輸送部隊のルーレの姿がない。
今は動かず、ただ待つしかない。
そのときだった。
ブロロロロロロ……ッ!!
耳に刺さるようなけたたましいエンジン音が、静寂を裂いた。
この状況で、この爆音――まるで場所を敵に知らせるような音だ。
振り返ると、荒野のほうから一台の車両がこちらへ向かってきていた。
無理やり未舗装の地面を走っているその様子は、人員輸送車――しかも、軍用とは思えないほどの荒々しい運転だった。
地面の起伏を拾って車体が何度も大きく跳ね、時折、底が石を擦る。
音が近づくたび、私の胸の奥がドクン、ドクンと高鳴る。
こんな目立つ行動、ドローンに見つかったらどうするの。そんな不安が頭をよぎった。
イルザさんも同じ気持ちだったのだろう。
私と同じく、険しい表情でその車を見据える。
「こんな状況で、車…!?」
その視線の中には、判断のつかない焦りが滲んでいた。
それでも、彼女は周囲を一度確認した後、意を決したように静かに屋外へと出た。
その行動を合図にするかのように、向かいの建物から部隊の子とレレリとシャリも姿を現す。
私も彼女たちの後に続き、外へと出る。
舗装の始まる地点まで近づくと、
ガコンッ!
車体が跳ね上がり、ようやく舗装道路へ乗り上げた。
数秒後、車両は私たちの目の前でキキィィと音を立てて停まる。
助手席の窓が開き、中から若い兵士の男性が顔を出した。
「お、君たちか? 護衛ってのは……ん? 空輸隊の子もいるのか。いやはや、かわいそうに。……ま、いいか。それじゃあ俺は戻る。荷台に乗ってるヤツを頼んだ」
軽い、どこか呑気な口調だった。
でもその言葉に、私は一気に背筋が強張る。
「荷台に乗ってるヤツ」――それが、私たちがここで待っていた存在。
「わかりました。あとは任せてください」
イルザさんが、冷静に応じる。
兵士はそれに短く敬礼すると、窓を上げた。
その瞬間――
バンッ!!
荷台の奥、重たい扉が勢いよく開かれた。
まるで中から何かが「飛び出す」ような音。
私たち全員が、反射的に身構える。
そこに現れたのは―