153 魔物討伐? 06
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私は詳しく説明する。
「アイトスが好んで食すのは果物であり、魔獣や人を襲うのは果物がないために仕方なく妥協で魔獣や人を食べているにすぎません。それならば、アイトスが好む果物が一年中孤島で取れるようにすればアイトスはわざわざ大陸に渡ってくることはないでしょう」
「しかし、南国でもないのに一年中果物が取れるようにするなど……」
「そうです。南国では一年中果物が取れるのです。つまり、孤島の内部を南国と同じように一年中暖かい気候にしてあげればいいのです」
私の意見に生徒たちは皆一様に難しい顔をした。
この意見をそんなの無理だと一蹴することは簡単だ。
皆がそのような意見を持つならば、それはそれで問題ないと私は思っていた。
我が国では独自に温室栽培の方法を模索したいとは思うが、わざわざそれを他国の者たちと共有する必要はないだろう。
しかし、彼らはそんなのは無理だと一蹴することはなく、皆が真剣に考え始めた。
「一年中暖かい……」
「冬に家の中を温めるような方法を、孤島全体にできれば……」
「しかし、孤島は家とは違い密閉された空間を作ることはできません」
「でも、魔法なら……」
「街を一つ覆える結界魔法のような魔法で中を温かくすることができれば、あるいは……」
皆は同時にライオスを見た。
効率の良い緻密な魔法陣を作るのは、生徒たちの中ではライオスが一番得意だった。
「魔法であれ、魔導具であれ、リヒト様がおっしゃるような魔法陣を考えるのはやりがいがありそうですね」
「それじゃ、僕はどのようなタイプの魔導具が適しているか考えてみるよ」
魔導具作りが得意なアイレーク王国の上級貴族であるクシマが言った。
「精密な魔法陣が描ければ魔導具は必要ないかもしれないわよ?」
魔法陣を正確に美しく描くことが得意なアイレーク王国の王女であるユーティアが彼を挑発するように言う。
この二人が幼馴染で両片思いなことは二人以外の全生徒が知っているため、二人が言い合いをしていてもいちゃついているようにしか見えない。
その日は意見交換をして解散になったが、結局は私の意見を実行に移すべく動き出してしまった。
もちろん、私の意見はすぐに実現できることではないから、すぐに取り掛かれる対策として他の意見も参考になる。
しかし、私の意見を実現しようと生徒たちが動き出してしまうと本当にそれでいいのかと不安になってしまう。
やはり、私は意見を言わずに見守っていた方がよかったのではないだろうか?
「リヒト様、先ほどのお話の件でご相談があるのですが」
夕食は私はできるだけ少人数で取るようにしていて、仕事が残っている時は生徒会室で、そうではない時には寮の部屋でとっている。
その日は寮の部屋で、カルロとヘンリックと共に食事を取ろうと思っていたのだが、二人の生徒が私の部屋を訪ねてきた。
ちなみに、寮は食堂を挟んで左右に男子生徒と女子生徒と別々の棟となっており、異性の寮へは立ち入り禁止のため私の部屋に来れるのは男子生徒のみだ。
私を訪ねて来たのは農業大国であるテル王国のイレム公爵家の次男:ルミーネとホラン伯爵家の長男:ルフだ。
農業大国の王族の中には魔法学園に入るのに適切な年齢の王子がおらず、王から抜擢されたいくつかの貴族の子息が入学試験を受け、合格したのがこの二人だった。
この二人は私とカルロのような主従関係で、同時に幼馴染でもあり、非常に仲が良い。
「二人は食事は?」
「まだですが、お話ししてから食べに行きます」
「それでは食堂の者が困るでしょうし、最悪、二人の食事が残っていないかもしれません。食事をとりに行ってください。話しながら一緒に食べましょう」
二人は嬉しそうな表情を見せて急いで食事をとりに行った。
私はカルロが持って来てくれた食事に手をつけかけていたが、それを止めて二人を待った。
「それで、相談というのはなんですか?」
食事を持って戻ってきた二人に席を勧め、私は話を切り出した。
ちなみに、寮の部屋とは言っても、各国の王子王女が滞在する部屋のため、一部屋の広さはそれなりに広い。
「はい。先ほどの果物を秋や冬でも栽培できるようにするという話なのですが、島自体を温かくするにはしばらくかかると思います」
「そうですね」と私は頷いた。
「しかし、暖房を効かせた建物を作ってその中で農作物を作ることはすぐに試すことができると思います」
ルミーネの言葉の後に、ルフが身を乗り出すように言った。
「その試作を我が国にやらせていただけないでしょうか?」
ルミーネもルフも緊張した面持ちで私を見つめる。
「リヒト様の案を盗むつもりですか?」
そうカルロが二人を睨めば、二人は気まずそうな表情になった。
二人とも、温室を作ることができれば莫大な利益を生むことはわかっているのだろう。
エトワール王国でもオルニスの人工水晶を使って温室の試作を作り、栽培の実験はしているものの、あれはあくまでも自国の民のためのものであり、輸出については全く考えていない。
「カルロ、二人はそのように言われることは百も承知で、それでも勇気を出して私に聞きに来てくれたんだ。そんな二人を責めてはいけないよ」
「しかし、リヒト様……」
言い募ろうとするカルロの口に私は一口大に切ったステーキを突っ込んだ。
カルロは昔から私にこのように食べさせてもらうのを喜んでいた。
今もつり上がっていた眉が下がり、頬が緩んでいる。
「農業大国に試作をしてもらえるのなら心強い」
私は微笑んだ。
彼らはほっとした表情を見せたが、私はそのまま笑みを深めて、エトワール王国の王子として聞いた。
「それで、その試作をテル王国に譲ってエトワール王国が得られるメリットはなんでしょうか?」
私にそう聞かれることは予想済みだったのだろう。
二人は背筋を正した。




