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【BL】 不憫な推しキャラを救おうとしただけなのに【幼児ブロマンス期→BL期 成長物語】  作者: はぴねこ
帝国編

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56 皇太子 02

お読みいただきありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけますと幸いです。


いいねやブックマーク、評価もありがとうございます。

皆様の応援で元気をもらっています。


誤字報告もありがとうございます。

とても助かっています。


 私の問いにラルスはやっぱり笑って答える。


「主役は父上だし、無骨な父上にはナタリアが華を添えてくれるからね」


 ラルスはにこにこ笑って言う。


「だから、私はいらないんだ」


 ラルスは全然オーロ皇帝に似ていない。

 おそらく、母親似なのだろう。

 線の細い顔立ちで、美男子だ。

 無骨なオーロ皇帝とは全く違う。


 それでも、オーロ皇帝とラルスが親子なのは確かだ。


「皇太子はオーロ皇帝とよく似ていらっしゃいますね」


 ラルスの顔から作り笑いが消えて、その目はキョトンッと少し間抜けに見開かれた。

 そのような表情をすると非常に幼く見え、オーロ皇帝の面影が薄れるが、すぐにオーロ皇帝みたいにニィッと口角が上がった。


「それはお世辞のつもりかな?」


「いいえ」と私ははっきりと否定した。


「皇太子殿下の私を見極めようと探る眼差しはオーロ皇帝ととてもよく似ています。違うところは、オーロ皇帝は探っていることを隠しませんが、皇太子殿下は微笑みでそれを隠そうとするところでしょうか?」


 ラルスは再びにこりと微笑んだ。


「不快にさせてしまったのならすまない」

「いえ。初めて会った者を見極めようと探ることはごく自然なことでしょう」

「リヒト王子が父上に気に入られている理由がよくわかった」


「それに」とラルスはそこでやっと魔塔主に視線を向けた。

 ラルスが来てからも立ち上がることなく、食事の手を止めることもなかった魔塔主は、私が魔塔主に出したノルマのポタージュスープ二種類を食べ終わり、デザートを食べ始めていた。


「魔塔主に気に入られている理由も」


 魔塔主は実験体として私を気に入っているので、オーロ皇帝が私に目をかけてくれる理由とは違うと思うが、わざわざ自分が魔塔の実験対象なのだと言う必要もないだろう。


 見極めが終わったのならパーティー会場に戻ってほしいなと思っていると、再び食堂の扉が開かれて今度はノアールが入ってきた。


「ラルス皇太子殿下、オーロ皇帝がお呼びです」

「サボっていることがもうバレてしまったのか」


 ラルスはわざとらしくため息をついて席から立ち上がった。


「リヒト王子、また会おう」


 ラルスはひらひらと手を振って、どことなく機嫌良さそうに食堂から出て行った。


「お食事の邪魔をしてすみません」


 ノアールは私たちのことを気遣って、新しく温かい食事を持ってくるようにと給仕に命じた。

 私はノアールの気遣いに感謝し、温かいスープを一口飲み、ほっと息をついた。

 それは皆同じだったようで、私と同じように息をつくささやかな音が聞こえた。

 もちろん、魔塔主だけはマイペースにデザートを食べ続けていた。




 これまで皇太子に出会わなかったのだ。

 あの日はたまたまサボりたくなって、自身の離宮に戻るよりはこちらの食堂の方が近かったから立ち寄ったのだろう。

 だから、エトワール王国に帰る日までに再びラルスに会うことなどない……

 そう思っていたのだが、その考えは甘かった。


 どういうわけか、ラルスが頻繁に私に会いにくるようになったのだ。

 私の自室にと与えられている部屋に来てお茶をして帰ることもあれば、勉強部屋に来て困惑する教師の授業を一緒に聞くこともあった。

 教師たちは皆一様に最初は「何かお話があるようでしたら、私は席を外しております」と退室しようとするのだが、ラルスが「私のことは気にするな」と無茶なことを言うものだから、教師たちも逃げ場を失い、戸惑いながらもラルスの前で授業を行うのだ。

 幸いなのが、授業の内容が子供用ではなく、大学レベルだということだろうか?


 ラルスはどうやらナタリアが一緒に受ける授業は避けているようで、ナタリアが礼儀作法の授業など、私たちとは他の授業を受けている時にやってくる。


 それにしても、この皇太子の振る舞いは年齢と比較すると幼くはないだろうか?

 オーロ皇帝は若い頃には周辺国を帝国傘下に収めることに集中していたため、子供を作ったのは50代の頃だと聞いていたが、ラルスは20代半ばの皇太子にしては落ち着きがないように思う。


 この世界の人間は成人が早いためか、世界の過酷さゆえか、前世と比べると精神的な成長が早いように感じていたが、このラルスに限っては前世の20代の若者のようだ。


 そんな皇太子は気軽に遊びに来て、気軽に振る舞っていたが、その嘘くさい笑顔が緩んできた頃、とうとう彼の本当の要件を口にした。


「リヒト王子はいつナタリアと婚約するのだい?」


 自室でお茶を飲んでいた私は、やっと本当に探りたいことを聞いてくれたかと息を吐いた。


「私とナタリア様は婚約いたしません。それゆえ、私が皇太子殿下のお立場を危うくすることはございませんので、ご安心ください」


 私の言葉にラルスは動揺を見せた。


「私はそのようなことをは心配しておらぬ!」


 いつものにこやかなラルスの微笑みが崩れた。


「私は……」

「わかっています」


 私はラルスの言葉を無礼と承知で遮った。


「ラルス皇太子殿下は本来の皇位第一継承者にその権利を返したいとお考えなのですよね?」


 ラルスの表情が緊張に固まる。





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