275 風邪の元凶?
お読みいただきありがとうございます!
この度、アルファポリス様より書籍化のお話をいただきました(⁎˃ᴗ˂⁎)
現在諸方面の調整作業進行中です。
このように嬉しいお話をいただけましたのも読者の皆様のおかげです!
詳しいお話ができるようになりましたらまたご連絡します(*'▽'*) !
ハバルが使っていた控え室を後にして、私はカルロに生徒会メンバーを召集してくれるようにお願いした。
カルロは意識した場所や相手の影から触手を出すことができるのだが、その触手の動きで招集を知らせることができるのだ。
その触手の動きを見ているとハンドサインみたいで可愛い。
もちろん、必要に応じてはメモや手紙を持たせることも可能だが、生徒会に集まってほしい旨を伝える程度ならばハンドサインで十分だ。
次の瞬間、近くの廊下で「うわぁ!」という悲鳴が聞こえた。
急いで悲鳴が聞こえた方へと行ってみると、二年生へと進級したヨスクとフリッド、そしてもう一人見慣れない生徒がいた。
その生徒は青い顔で床にへたり込み、驚きの眼差しをヨスクとフリッドの影から出ているカルロの触手にむけていた。
この見慣れない生徒はおそらくカルロの触手を初めて見て、悲鳴をあげたのだろう。
「リヒト様!」
ヨスクが嬉しそうな表情になり、フリッドもぺこりと頭を下げてくれた。
私も二人に挨拶をし、それから床にへたり込んだままの見慣れぬ少年に手を差し伸べた。
「驚かせてしまったようだね。ごめんね」
一年生だと思われる生徒を怖がらせないように微笑みかけると、彼の頬が鮮やかに染まる。
やはり、風邪が流行しているのではないだろうか?
風邪の治療のためのポーションを揃えておいてもらうように依頼しに行ったら、ニカンに「健康的な食事と十分な睡眠、さらに憧れの人のそばで勉強できるという最高の環境だと言われている魔法学園の生徒たちに風邪が流行るとはとても思えません」とポーションの購入を増やすことは却下されたのだ。
確かに、前世でも栄養バランスのいい食事、適度な運動、質の良い睡眠、ストレス軽減などが免疫効果をアップさせる条件だったとは思うが……憧れの人ってなんだろう?
ニカンがそのような状況にあるということならば喜ばしいが、ニカンの個人的な話ではなく、生徒全体の話として出た言葉だった……生徒みんなの憧れの人? ……魔塔主とか? いや、ないな。誰がどう見ても憧れる感じではないだろう? それじゃ、他の魔法使い? ハバルかな? ハバルならまだわからなくもないな。
「立てるかな?」
私を見たまま呆然としてしまっている少年に微笑みかけて、彼を立たせるためにその手を握ろうとすると、ヨスクとフリッドの影から出ていたカルロの触手がさらに伸びて、少年の脇の下に触手を入れて、少年を持ち上げた。
触手はヨスクとフリッドの影、別々のところから出ているのだが、見事な連携で動いている。
カルロという一個人が操っているのだから当たり前なのかもしれないが、私は思わずカルロを見てカルロを誉めた。
「別々のところから出ている触手を一緒に動かすこともできたんだね! すごい!!」
カルロに拍手を送るとカルロは褒められたことが嬉しそうに微笑んだ。
爽やかな微笑みは美しくて目の保養だ。
子供の頃ははにかんだ笑顔が可愛かったが、成長したカルロの微笑みもとても魅力的なのだ。
赤くなっていた少年の顔は真っ青だ。
風邪が悪化したのだろうか?
「あの、弟のことは私が支えますから、おろしてもらってもいいですか?」
ヨスクが言った。
「彼はヨスクの弟さんだったの?」
「はい! 私の弟のヨーゼフです」
ヨスクはカルロの触手から弟を受け取り、ゆっくりと地面におろした。
「しっかり立っていないとまたカルロ様の触手にお世話になってしまうから、気合いで立て!」
フリッドが厳しいことを言う。
「体調が悪いのかもしれないから、無理しないで?」
そうヨーゼフの顔を覗き込めば、さっきまで青かった顔が真っ赤になる。
熱が急激に上がってしまったのだろうか?
「い、いえ! 大丈夫です! 自分で立てます!!」
私が熱を確認しようとヨーゼフの額に手を当てると、ヨーゼフの顔はさらに赤みを増して、ふらりと卒倒しそうになる。
そんなヨーゼフの体をヨスクとフリッドが慌てて支える。
結局、ヨーゼフはヨスクとフリッドによって保健室へと運ばれていった。
「一年生はまだ免疫が少ないですから、そのように気軽に接するのは控えた方が良さそうですね」
ヨスクとフリッドに運ばれていくヨーゼフの姿を見ながらヘンリックは言った。
え? 私がばい菌ってこと?
風邪の菌を撒き散らしているつもりはないのだが?
我々は生徒会室へと向かい、ヨスクとフリッドが来るのを待ってから各国の文化や特色を発表する企画の話をすることにした。
今年はヨスクとフリッドも生徒会に加わってもらったのだ。
私、カルロ、ライオス、ハザールハイド、テオは来年魔法学園を卒業するわけだから、その時に備えて優秀な人材を生徒会に加わってもらうことにした。
テオに関しては飛び級で私たちと同じ二年生の授業を受けさせているが、ランロットという友達もできたことだし、学生生活をあと一年過ごしてからの卒業でもいいかもしれない。
アルファポリスにて新しいお話を公開中です。
『猫公爵と氷雪令嬢 〜政略結婚だけどヘタレ公子は無表情令嬢と熱愛希望〜』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/135536470/461991303
完結しておりますので一気読みできます!!
呪いで猫になってしまう公爵子息と実母からの虐待により表情を無くしてしまった令嬢のお話です。
恋愛メインというよりは、脱虐待メインのお話となります。
少しでも楽しんでいただけますと幸いです。
よろしくお願いします。