252 集合! 02
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「リヒト様、この方々は……」
私の同級生たちがわいわいガヤガヤと集まっていた小広間に案内されてきたハンスギア王国の宰相と補佐官長が生徒たちを戸惑った様子で見つめた。
「私の同級生です」
「あの、皆様方もハンスギア王国にお越しになるのでしょうか?」
「「「はい!」」」
私への質問だったのだが、周囲の生徒たちが一斉に答えた。
ますます宰相たちは困惑した。
「申し訳ないのですが、我が国にはこれほど多くの王子様、王女様をおもてなしするだけの財力がございません」
「私たちはリヒト様の臣下として扱ってくだされば大丈夫です」
「その代わり、リヒト様に無礼があれば、国をあげて抗議いたします」
「当然、私どもは未来の我が国の王であるかもしれないリヒト様に無礼を働く気などございませんが、現王と王妃が無礼を働いた場合、その抗議というのはどこまでを想定されているのでしょうか?」
ザハールハイドの言葉にハンスギア王国の宰相は戸惑いながらも尋ねた。
その場での口頭抗議なのか、書面での正式な抗議なのか、経済的な圧力や武力的な圧力はあるのかどうかということが確認したいのだろうか?
しかし、小国の王子に無礼を働いたところでせいぜいできるのは口頭での抗議くらいのものだろう。
「もちろん、この場にいる王子王女の全ての国が武力行使も躊躇わないでしょう」
「リヒトに何かあればどのような武力行使も許可する」
ザハールハイドがそのように答えた時にちょうどオーロ皇帝が広間に入ってきた。
オーロ皇帝はエトワール王国に気軽に来すぎではないだろうか?
「オーロ皇帝! 止める立場でしょう!?」
「リヒトが止めるのは私ではなく、ハンスギア王国の者たちではないか? 他国の者が成敗してくれるならそれはそれでもいいかもしれないと思っている様子だぞ」
オーロ皇帝の視線を追ってハンスギア王国の宰相と補佐官長を見ると、確かに、それはそれで……みたいな顔をしていた。
「ちょっとお二人とも何を考えているのですか!? そんなことになれば、現王が失脚したところでハンスギア王国の評判が落ち、帝国内とは言えど外交がやりにくくなり、経済が停滞しますよ!」
「そこは、リヒト様が王位を継いでくだされば問題ありませんので!」
「問題大有りです! 私はこれ以上国は欲しくありませんから!」
宰相と補佐官長という立場でありながら他国の王子に簡単に国を譲り渡そうとするとはどういうことだろう?
クーデターが起きそうなほど逼迫している状態だとしても、次の王には自国の善良な貴族をあてがいたいと思うものではないだろうか?
「ハンスギア王国の宰相と補佐官長はリヒト様に国を献上することに前向きなようですね!」
「我が国もぜひ、リヒト様の傘下に加えたいのですが、父王や王太子である兄がなかなか頑固で」
「我が国もです! それなら私がエトワール王国の文官になりたいと言っても許してくれません」
「リヒト様の素晴らしさが理解できないとは我が国の上層部はどうかしています」
「ハンスギア王国の宰相と補佐官長の判断は賢明だと思います!」
生徒たちが口々に言う。
「皆さん、そんなに簡単に自国を他国の者に譲ろうとしないでください!!」
「お祖父様、やはり、次期皇帝はリヒト様が継ぐべきではなくて?」
「ナタリアよ。其方もそう思うか?」
ハンスギア王国の宰相と補佐官長、そして生徒たちのこのある意味柔軟すぎる考え方は、オーロ皇帝のせいではないだろうか?
オーロ皇帝に攻め入れられ、帝国傘下に加わった結果、国が発展し、国民の生活が安定した王国は多い。
その結果、他国の者に占領されても搾取されるのではなく、むしろ恵をもたらされると錯覚している国が多いのかもしれない。
しかし、私はオーロ皇帝ほどの才覚などないので、期待されても困るのだ。
「いいですか? 皆さん? 今回、ハンスギア王国に行くのは、虐げられている魔獣の保護が第一目標で、そのついでに王と王妃には失脚してもらい、ハンスギア王国内で真っ当な後継者を見つけるためですよ? 決して、私がハンスギア王国の管理者になるためではありません!」
オーロ皇帝がこれ以上ややこしいことを言い出さないように私は今回のハンスギア王国での目標をしっかり定めて、みんなが余計な行動をしないように注意した。
完結済『無属性落ちこぼれの僕が魔法書を創ったら、なぜか最強たちの中心にいた件』
(旧タイトル『魔法書の創り手 ~落ちこぼれ無属性の僕のまわりが最強すぎる件~』)
https://www.alphapolis.co.jp/novel/135536470/928951442
公爵家から「無属性の落ちこぼれ」として追放された少年 エノク。
魔法が使えないはずの彼が手にした能力は、精霊の言葉で記す”魔法書”を創る力だった。
静かに一人、森の小屋で魔法書を作って暮らすはずが……暗殺から逃げる王子 オスカー、最強の冒険者たち、魔法研究第一人者のエルフと、なぜか周囲にとんでもない奴らが集まってきて……
エノク「僕はただ、静かに暮らしたかっただけなんだけど……」
オスカー「世界を変えるほどのものを作っておいて静かにとか無理でしょ?」
アルファポリスにて開催中の次世代ファンタジーカップに参加中です!
完結していますので一気読みできます☆
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こちらの作品はBL作品ではありませんが、主人公が性別種族関係なく愛される(恋愛友愛)作品となっております。




