249 ハンスギア王国の使者 02
お読みいただきありがとうございます。
誤字報告や感想など、ありがとうございます!
感想の返信などはまた後日行わせていただきますが、全て大切に読ませていただいております!
とても励みになっています!!
「リヒト様。ひとまず、テオの意見を聞いてみるのはいかがでしょうか?」
本当はハンスギア王国の宰相がうまく子供である私を言いくるめてテオを呼ぶ流れに持っていくはずだったのだが、ハンスギア王国の者の方が口を噤んでしまったために第一補佐官が助け舟を出してくれた。
「決して、テオに無理強いしないことだけは約束してください。それがテオと会わせる条件です。約束していただけますね?」
「「もちろんです!」」
ハンスギア王国の宰相も補佐官長も身を乗り出すように頷いた。
しばらく待つとテオとカルロが応接室に入ってきた。
「テオドロス様、お迎えに上がりました。我々と一緒にハンスギア王国に帰りましょう」
「僕はテオです。テオドロスなんて名前ではありませんし、リヒト様とカルロ様から離れるつもりもありません!」
「しかし、テオドロス様はハンスギア王国の王位継承者なのです!」
「その髪色こそがハンスギア王国の正式な王位継承者であることの証です!」
「僕をエトワール王国に寄越したのに、急に来てそんなことを言われても困ります」
「貴方様をエトワール王国に送るように命じたのは王妃様です。我々は知らなかったのです。その王妃様も今や病に臥せっていてテオドロス様に害をなすことはできません」
テオはハンスギア王国の宰相と補佐官長の勢いが怖くなってしまったのか、僕の後ろに隠れた。
「しかし、まだ幼いテオが王妃に邪険にされていたことは知っていたはずのあなた方は守ってくれなかったのですから、今後もあなた方が守ってくれるかどうか信用できません。王妃が手を出す前にあなた方の養子にするなどしていくらでも守る手立てはあったはずなのに」
「それは、髪色が隠されていたので……」
「つまり、あなた方にとっては髪色しか重要ではないということですね? テオ自身のことは重要ではないと?」
「……」
「そのような人たちに、息子のように可愛がってきたテオを渡すことはできません」
「「……息子???」」
「僕がリヒト様の息子!?」
何やらテオは感動したような照れたような感じではわはわとしている。
ハンスギア王国の宰相と補佐官長は困惑顔だ。
「カルロは私の婚約者ですからね。婚約者が可愛がっている弟子ならば私の息子のようなものでしょう」
以前はカルロのことを息子のように可愛いと思っていたから、その頃ならテオは私の孫といったところだろうか?
しかし、今はカルロは私の婚約者だからね。
テオが息子のようなものだろう。
「テオドロス様がリヒト様の息子というのはかなりおかしいと思います……」
「兄弟というのならば、まだわかりますが……」
「あなた方、そのような点に気を取られている余裕があるのですか?」
どういうわけか私の言葉に困惑しているハンスギア王国の宰相と補佐官長を、アニーア王国の女王が呆れたように見つめた。
「あ、いや……」と、宰相が少し慌てて態勢を立て直した。
「テオドロス様、我が国にお越しいただければ王太子として何不自由のない生活ができますよ。毎日、お肉もお菓子も好きなものを好きなだけ召し上がっていただけますし、豪華な服だっていくらでも着られますよ!」
「おもちゃもお好きなものをお好きなだけ選んでいただいて構いませんし、どんな大人も子供もテオドロス様のお好きな時に呼んで遊ぶことができますから寂しくないですよ!」
次は私が彼らの言動に困惑する番だった。
「それのどこが魅力的なのですか?」
思わず直球で聞いてしまった。
「……子供というのは、好きなものを好きなだけ食べたり、大人や他の子供たちを自分の好きなように扱うのが好きなものではないのですか?」
ハンスギア王国の宰相が聞いてきた。
情報ギルドからの情報の中には王妃の子供が亡くなったという記載があったが、もしや、王妃が自分の子供をそのような子供に育てていたのだろうか?
一応、中身おじさんである私以外の子供たちがそんなことが好きなのか確認するためにカルロとテオを見てみたが、ものすごく不快なものを見る目をハンスギア王国の二人に向けている。
カルロとテオが私と同じ感性のようで安心した。
「ハンスギア王国の子供たちのことは知りませんが、少なくともテオは違うようですよ?」
「……そのようですね」
「では、テオドロス様は何がお好きなのですか? どうすれば、我が国にお戻りいただけるのでしょうか?」
テオがカルロの手を握ってもじもじしているので、私は久しぶりに父性を発揮してテオの手を優しく握った。
テオが驚いたようにこちらを見上げてきたので、にこりと微笑めば、その顔が真っ赤になる。
私とカルロの息子はとても可愛い。
「ぼ、僕は、リヒト様とカルロ様が好きです!! お二人がいるところにずっといます!!」
「テオはちゃんと自分の素直な気持ちが言えて偉いな」
手を繋いでいる方の手とは反対の手でテオの頭を撫でれば、またテオが照れてはわはわしている。
『無属性落ちこぼれの僕が魔法書を創ったら、なぜか最強たちの中心にいた件』
(旧タイトル『魔法書の創り手 ~落ちこぼれ無属性の僕のまわりが最強すぎる件~』)
https://www.alphapolis.co.jp/novel/135536470/928951442
公爵家から「無属性の落ちこぼれ」として追放された少年 エノク。
魔法が使えないはずの彼が手にした能力は、精霊の言葉で記す”魔法書”を創る力だった。
静かに一人、森の小屋で魔法書を作って暮らすはずが……暗殺から逃げる王子 オスカー、最強の冒険者たち、魔法研究第一人者のエルフと、なぜか周囲にとんでもない奴らが集まってきて……
エノク「僕はただ、静かに暮らしたかっただけなんだけど……」
オスカー「世界を変えるほどのものを作っておいて静かにとか無理でしょ?」
アルファポリスにて開催中の次世代ファンタジーカップに参加中です!
応援よろしくお願いします!
読んでいただくだけで得点になるので、覗いてみていただけると嬉しいです☆
こちらの作品はBL作品ではありませんが、主人公が性別種族関係なく愛される(恋愛友愛)作品となっております。