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248 ハンスギア王国の使者 01

お読みいただきありがとうございます。


「リヒト様、こちらはハンスギア王国の宰相と補佐官長です」


 応接室に入ると第一補佐官が間に立ってハンスギアの使者を紹介してくれた。

 どんな使者が来るのかと思っていたが、わざわざ宰相が来たということはハンスギアにとってはそれだけテオが重要な存在なのだろう。


「両親が忙しいために私だけの面会で申し訳ありません」

「いえいえ、我々はリヒト様とお会いしたいと思っておりましたから」


 子供だけの方が扱いやすいと思っているのがよくわかる様子だ。

 しかし、私としては母上はまだしも、お人好しの父上がいない方がいいのだ。


 ハンスギアの宰相も補佐官長も老齢で、年寄りらしい柔和な表情を浮かべていたが、その目だけは猛禽類のように鋭かった。

 まるで今回の面会に国の命運でもかかっているようだ。


 私たちが挨拶を交わす様子を女王が優雅に眺めている。

 アニーア王国の女王は手紙のみの中継ぎでも問題なかったにも関わらず、わざわざエトワール王国まで来てくれた。


「女王、わざわざお越しいただきありがとうございます」

「わたくしが紹介した者がリヒト様に不快な思いをさせては困りますから、監視ですわ」


 他国の宰相に対してそのように言えるのだから、女王は肝が据わっているというか大胆というか……それとも、ハンスギア王国の弱みでも握っているのだろうか?


「さっそくですが」と、ハンスギア王国の宰相が話し始めた。


「リヒト様が保護しているテオドロス様と一目会って確かめたいことがあるのです」

「テオドロスという者を私は知らないのですが?」

「普段、テオと呼んでおられるお子様がおられるかと思います」

「ああ、テオのことですか」


 確かに、ゲームの中でもテオドロスという名前だったかもしれない。

 カルロ以外の攻略対象にはあまり注目していなかったので、色々と記憶の抜けがある。


「どうしてテオに会いたいのですか? テオはとても優秀なために魔法学園に通ってはいますが、平民の子ですよ?」

「テオドロス様は実のところハンスギア王国の王族のお子様なのです。訳あって、エトワール王国の貴族に売られてしまいましたが」


 深刻な表情で言う宰相に私はなるほどと頷いて見せた。


「その証拠はありますか?」

「髪色です。テオドロス様は美しい水色の髪色をしていますよね?」

「確かに、テオは美しい水色の髪色ですね。でも、テオは僕の婚約者の大切な弟子ですので、本人の意思を無視してあなた方に引き渡すつもりはありませんよ」

「しかし、他国の王子をその国の断りもなく滞在させ続けるわけにもいきませんよね?」


 少し強めの口調で言うハンスギア王国の宰相に私は嘲るように笑って見せた。


「テオを売った国がそれを言うのですか?」


 私の言葉に一瞬、ハンスギア王国の宰相も補佐官長も視線が彷徨い、動揺した様子を見せたが、そこは宰相と補佐官長を長年務めてきた人たちだ。

 すぐに動揺した様子を引っ込めて、再び深刻な表情を取り繕った。


「それは、王妃が勝手に行ったことです。我々はすぐにテオドロス様を探したのですが、こんなにも遠くの国に連れてこられているとは思わず、すでに殺されてしまっているのではないかという不安もありましたが、長年に渡り探し続けて見つけたのが最近だったのです」

「王妃が勝手にやったことだから自分達には責はなく、テオを連れて帰る権利があるということですか? 王妃の手から守ってもくれなかったのに?」


 なんて図々しい話だろう。


「守らなかったのではありません。我々が知らぬ間に王妃が勝手に行ったことなのです」

「王妃ほどの人が動いていて、身近にいた宰相や補佐官長が気づかなかったというのですか? それほど、ハンスギア王国の王妃というのは影が薄いのでしょうか?」

「ですから、王妃が裏で、我々に隠れて動いていたので……」

「つまり、上層部は無能だと?」

「っ!? リヒト様、一国の王子とはいえど他国の使者である我々に向かって口が過ぎるのではないでしょうか!?」

「だって、そうでしょう? 王妃とは王の妃ですよね? それだけの権力者が動いていて、その動きを察することができないとは、王族を支える者として無能ではないですか?」

「……」


 ハンスギア王国の宰相も補佐官長も口を引き結んで黙ってしまった。


 そこで黙られては困るのだが?

 私は狡猾な大人に言いくるめられてテオを呼ぶ羽目になる予定だったのだが?

 早く言いくるめてくれないと別室で待つテオとカルロが暇だろう。




『魔法書の創り手 〜 落ちこぼれ無属性の僕のまわりが最強すぎる件 〜』

https://ncode.syosetu.com/n0404ki/


「公爵家の恥晒し」と家を追い出された無属性のエノクは魔法が使えない。

エノクは魔法を学ぶ特権を持った貴族以外の人々のために魔法書を作ることにした。

森の小屋でひっそりと魔法書を作っていくつもりだったのだが、暗殺から逃れてきた王子のオスカーと出会ったことにより、エノクの思い描いていた目立たない生活からはかけ離れていく。

孤独な世捨て人だったはずのエノクの周囲は、いつの間にか賑やかになっていて……



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読んでいただくだけで得点になりますので、アルファポリスの会員でない方も覗きにきていただけますと嬉しいです♪


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