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230 アイトスの島へ 01

お読みいただきありがとうございます。


 ガラス張りの温室内はまるで前世のビニールハウスのように外の寒さを忘れるほどに中は温かく保たれており、試作で作られているフルーツがいくつもなっていた。


 テル王国は猛禽類系の巨大魔鳥 アイトスが冬に渡ってくるセールア王国の支援を名乗り出てくれ、アイトスがいる島に食べ物が不足する時期に合わせて、セールア王国にアイトスのための果物や木の実を送ってくれている。


 本当はアイトスの島に直接食料を送るための転移魔導具を設置できたらいいのだが、そのために人員を送り込むのは危険なため、まだそのようなことはできていない。


「温室も順調に研究が進んでいるようですし、島を視察に行きたいと思うのですが」


 私としてはカルロと、セールア王国の代表としてノアだけ連れて行こうと思ったのだが、他の生徒たちも背筋を正した。


「「「お供します!」」」


 張り切って返事をしてくれた生徒たちの後ろで、一緒に温室見学をしていたテル王までイキイキした表情を見せた。

 ついて来る気満々のその表情にどうしようかと少し戸惑ったが、すぐに宰相が王様を取り押さえていた。

 テル王国の宰相はとても優秀なようだ。


「アイトスが襲いかかってくるかもしれませんし、他にも魔物がいるかもしれません。危険を伴いますよ」


 私の忠告にも生徒たちは「「「大丈夫です!」」」と自信を持って答えたため、連れていくことにした。

 魔塔主がいるので、最悪、全員を転移魔法で避難させることも可能だ。


 テル王と宰相、案内してくれた文官にお礼を伝え、セールア王国まで魔塔主に転移魔法で連れて行ってもらう。




 セールア王国の海岸に連れてきてもらったが、島に転移で入るのはお勧めしないと魔塔主に言われた。


 徐々に島に人の気配が近づく分にはアイトスが上空から様子を見にくるだろうが、突然島に多数の気配が現れれば即座にアイトスから敵と判断されるだろうということだった。


 確かに、その可能性は高いだろうと私たちも理解できたため、セールア王国の海岸からはそれぞれの魔法で島に近づくことにした。


 ちなみに、転移魔法のために魔塔主が来てくれているが、引率担当はハバルだ。

 ハバルは生徒各自の得意属性と魔法の熟練度もしっかりと把握しているため、アドバイスが適切だった。


 風属性が得意な生徒たちは飛行魔法が使えるため、海上を渡ることに特に問題はない。


 水属性が得意な生徒たちは水の上を歩くこともできるし、前世のフライボードのように水圧で浮くことも可能だ。

 フライボードは魔力操作が上手ければかなり早く進むことも可能なようだ。

 ナタリアが見本を見せて、他の生徒たちも練習している。


 思ったよりも激しい動きのため、念のために生徒たちに実技訓練用のパンツスタイルに着替えてもらっていてよかったと思う。

 昨年は用意されていなかった衣装だが、女子生徒たちの要望で今年は用意することとなった衣装だ。


 魔法学園の生徒たちは複数属性を扱えるため、風属性と水属性のどちらも持っていないという生徒はいないが、火属性や土属性の方が得意で、風属性や水属性の魔法はその補助に使っていて自分の体を持ち上げることができるほどの魔法は使えないという生徒はいる。


 その数名の生徒たちくらいは私と魔塔主、ハバルで支援が可能だろうと思っていたのだが、その生徒たちの中に身体能力の高いランツがいたのは意外だった。


「ランツ様も飛べませんでしたか」

「私の風魔法は火属性の魔法の火力を上げる時に使っている程度なのです。鍛錬が足りずにお恥ずかしいです」

「ランツ様は自分の特性をしっかりと理解して、自分の力を伸ばすことができていると思いますよ」


 ランツは魔法学園に来てからも1日も欠かさずに剣の訓練をしていることを私は知っている。

 私が褒めれば、ランツはその顔を赤くした。


 屈強な体をしているランツだが、割とよくこうして顔を赤くしている。

 見た目に反して恥ずかしがり屋のようだ。


「リヒト様! 僕も風属性の魔法も水属性の魔法も得意ではありません!」


 カルロが私に抱きついてきた。

 カルロは光属性以外の属性を持ってはいるが、その全ての属性を闇属性の補助として使っている。

 幼い頃に魔塔主から闇属性は光属性の補助ができると聞いて以来、私のために闇属性の魔法のみを愚直に鍛錬しているのだ。


「カルロは私が連れて行ってあげるよ」


 私がカルロに微笑めば、カルロも嬉しそうに笑い返してくれた。

 しかし、そこにライオスの声が割って入った。


「リヒト様、せっかくの機会ですので、フェリックスの飛行魔導具を使いましょう!」


 ライオスからフェリックスの開発した飛行魔導具を使ってみるのはどうかと提案があった。


 フェリックスの飛行魔導具には風属性の魔石が使われており、魔力を込めるとどの属性の魔力であっても風属性の魔力に変換して魔導具を起動するようだった。


 よくできているが、試作品を普段空を飛ぶ感覚に慣れていない生徒たちに使わせることは不安なため、私は飛行魔導具の危険性を彼らに十分説明した。

 実質、彼らが飛行テストを行うのと変わらないのだ。


 飛行テストはフェリックスが繰り返し行っているということだったが、フェリックスはもともと自作のハンググライダーで飛行しており、魔導具の不備も身体能力で補ってしまうだろう。

 つまり、フェリックスの行った飛行テストだけでは安全だと言い切ることはできない。


 しかし、そこは10代の少年たち。

 風属性を持たない自分たちでも空が飛べるのだと興味を持ってしまった。


 仕方なく私がフェリックスのところに転移して飛行魔導具をいくつか貸して欲しいと言えば、使っているところが見たいからとフェリックスがついてこようとした。

 しかし、学園の授業に生徒以外を参加させることはできないと私はフェリックスを振り切ってセールア王国の海岸に戻る。


 水属性が得意な生徒たちがフライボードのような練習をしている間、水属性も風属性も持たない生徒たちは飛行魔導具で空を飛ぶ練習を行った。

 風属性が得意な生徒たちは飛行魔導具の練習の補助に入ってくれた。






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