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222 運命を知る者

お読みいただきありがとうございます。


 ダンジョンから解放された翌日、私はオーロ皇帝にナタリアがダンジョンに一時的に閉じ込められたことを説明するためにルシエンテ帝国の城に来ていた。

 そして、ナタリアがダンジョンに閉じ込められてしまったのは私のせいであることを謝罪した。


「その話からすると精霊の我儘が原因であって、別段そなたの責任というわけではないだろうに、そなたは責任感が強すぎるな」


 そうオーロ皇帝は寛容に許してくれた。


「その責任感の強さを活かして、帝国の皇帝になってみるというのもいいのではないか?」

「私は責任感が強いので、エトワール王国の第一王子としての義務に応じてエトワール王国の王位を継承する予定です」


 大帝国の皇帝と比べれば、小国の国王の方がだいぶマシだ。


「全く、相変わらず隙がないな」

「オーロ皇帝も油断も隙もありません。何かと勧誘するのはやめてください」


 ちなみに、最初は皇太子であるラルスがいるのにこのようなことを他国の王子に言うなど、オーロ皇帝はラルスの自尊心を傷つけるのではないだろうかと心配したが、ラルスと実際に接していると彼が次期皇帝という立場を非常に重荷に感じていることがわかる。


 オーロ皇帝はラルスの自尊心を傷つける可能性を考慮していないのではなく、ラルスが重責で潰れてしまわないようにできれば皇太子という立場から解放してあげたいのだということがわかった。

 だからと言って、赤の他人の私を巻き込まないでほしいものだ。


「今の話からすると、星鏡はやはりそなただったという結論でいいのだな?」

「どうしてそうなったのですか?」


 そのように言われる気はしていたが、神のように崇め奉られることになるという星鏡には絶対になりたくない私は思わず眉間に深い皺を刻んでしまった。


「そなたがやっていた魔導具を使ったゲームでは、星鏡のレイラと呼ばれる神獣を見つけ出すことができなかったと言っていたではないか? 魔塔主以外に入ることができないようなダンジョンに閉じ込められたそなたはまさにその神獣ではないか?」

「私の前世の話をよく覚えていますね」


 年齢の割には素晴らしい記憶力だと思うが、私の前世に関してまで発揮してくれなくていい。


 ゲームでは魔法学園の中で神獣を探しており、シーズン1ではその神獣を見つけることはできなかったのは確かだが、私は飽き人くんの言っていた続編のことは知らないのだ。


「確かに、ゲームの状況と似ている気もしますが、私はゲームの一作目しかプレイしておらず、続編のことはわからないので、星鏡ではないと思います! 今現在、ドレック・ルーヴの中にいる人物はゲームの続編の話もしていましたから、私が知らない先のことまで知っている人物の方が星鏡のレイラなのではないでしょうか?」


 飽き人くんには悪いが、星鏡という面倒な役割を引き受けてほしい。


「しかし」とオーロ皇帝は顎鬚を撫でながら私を見た。


「その者はゲームの登場人物の運命を変えてはいないのだろう? 星鏡とは、運命を知り、運命を変える者だ。ただ知っているだけの者では価値がない」


 私は自分の眉間の皺がどんどん深くなっていることを感じる。

 すると、隣から手が伸びてきて、私の皺をさすった。魔塔主だ。


 ちなみに、いつも私の眉間の皺を伸ばしてくれるカルロは学園で留守番だ。

 私の影から移動してこれないように、私の魔力で道を塞いでいる。


 カルロは本当に私のことしか大切ではなく、場合によってはオーロ皇帝にさえ無礼な振る舞いをする可能性があるからだ。

 もしも、オーロ皇帝がダンジョンにナタリアが一時的にであれ閉じ込められたことを怒った場合、カルロが無礼な振る舞いをする可能性があると考えたために置いてきたのだ。


「大丈夫です」と魔塔主がやけに優しい眼差しで微笑んだ。


「リヒト様が星鏡だからといって、公表しなければいいのです。各国から人が押し寄せて崇め奉られては、魔法研究のための時間が減ってしまいますから」


 心強さよりも、不安が募る言葉だった。


「リヒトとしてはそのドレック・ルーヴという者の中にいる者が星鏡だということにしたいのだろうが、そもそもその者は信用できるのか?」

「私は前世でその人物と実際に会ってみたことはありませんので、実際のところは分かりません」


 飽き人くんに対してひどい言いようだが、実際のところ、私は彼の本質を知るほどの付き合いはないのだ。

 前世のSNSで繋がりがあるからというだけで全てを受け入れる必要はないと考えている。

 万が一、彼が危険な人物だった場合、王子である私が深く関わることでエトワール王国の民を危険に晒す可能性があるのだ。


 ……そう考えると、彼を星鏡として持ち上げ、権力のようなものを持たせるのも危険か。

 ん〜、難しいところである。


「彼が信用できる人物かどうかはわかりませんが、ゲームについて嘘をつく必要もないと思いますので、この世界の運命については本当のことを語っていると思ってもいいのではないですか?」

「それは、その者が話していたという、魔王が現れるということに関してか?」


 オーロ皇帝の言葉に私は頷いた。


 飽き人くんはゲームの続編ではカルロが魔王になったと話していたが、魔塔主はカルロの未来は変わったのだから魔王になることはないだろうと言っていた。

 私も、今のカルロが魔王になるとは思えない。


 しかし、魔王そのものが別の形で現れる可能性はあると考えていいと思う。


「そのドレック・ルーヴという者の言うことが本当ならば、今後、魔王が現れる可能性があるということか?」

「そうですね」


 オーロ皇帝は視線を魔塔主に移した。






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