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217 ダンジョン出現

お読みいただきありがとうございます。


 話が終わると、ナタリアは帝国のお姫様らしく優雅に微笑んで、生徒会室を退室した。

 私はナタリアから聞いた話の衝撃にかなり混乱していた。


「ナタリア様が、私を好き……?」


 え? カルロじゃなくて?


「……もしや、何かの罰ゲーム?」

「誰が皇帝の孫娘にこんな罰ゲームをさせるのですか? 物理的に首が飛びますよ?」

「驚かれるお気持ちはわかりますが、落ち着いてください。リヒト様」

「リヒト様は本当にナタリア様のお気持ちにお気づきではなかったのですね……」


 ザハールハイドの言葉に私が盛大に疑問符を顔に浮かべると、彼は困ったように微笑んだ。


 もしや、これは、あれか?

 カルロの時と同じで、私以外のみんなが気づいていたパターンなのだろうか?


「……」


 いやいや、そんなわけはない。

 帝国の姫が小国の王子に恋をしているなど、誰も思わないだろう。

 カルロほど魅力的ならば身分など関係ないけれど!!


「リヒト様はナタリア様の告白を聞いて、心が揺れましたか?」


 カルロが不安そうな眼差しを向けてきた。

 私は何を放心していたのだろうか?


 この辺り一帯の国々を治める帝国の姫からの告白を聞いたら、カルロが不安になるのは当たり前だ。

 自国の利益を優先する王子ならばナタリアを選ぶだろうから。

 しかし、私は違う。

 私は、カルロを幸せにするためにここにいるし、これからもそのために努力するつもりだ。


「私の気持ちが揺らぐことなんてないよ」


 私は不安に瞳を揺らすカルロの手を握った。


「私はカルロが私のことを嫌にならない限りは、婚約者としてカルロを守っていくつもりだよ」


 カルロの人生はこれから長いのだから、中身五十代のおじさんとか絶対に嫌だと思ったら、私はすぐにカルロから身を引くつもりだ。


「……」


 そのつもりなのだが、ちくりと心臓が痛んだ気がする。

 もしや、何かの病気だろうか?


 しかし、体はリヒトの年齢に合わせて若いはずだ。

 心筋梗塞とか起こすには早すぎる。


「僕がリヒト様を嫌になることなんて絶対にないです」


 カルロも私の手を握り返してくれる。


「リヒト様は僕の生きる意味なんですから」


 それは、私のセリフだ。

 カルロの幸せこそが、私がリヒトでいることの意味なのだから。




 その夜、二年生にボロ負けしてしまった一年生が必要以上に気落ちしたり、荒んだ気持ちになっていないか、彼らの様子を見るために寮の食堂で夕食を摂ることにした。


「あの、リヒト様」


 食堂に入ると、不安そうな表情をした二年生の女生徒たちが声をかけてきた。


「どうしましたか?」

「ナタリア様がどこにもおられないのです」

「ナタリア様の従者と護衛騎士もおりません」


 私はナタリアとのやり取りを思い出し、私と顔を合わせるのが気まずくなってしまったのだろうかと心配になった。


「帝国に帰ってしまったのでしょうか?」

「それならば一言伝言を残してくださるはずです」


 私の問いかけに女生徒からそのように返され、それもそうかと思った。

 彼女たちは寮の中はすでに探してくれたという。


 それならば、校舎を探してみようかと思った時、食堂に魔塔主が現れた。

 いつも通り、転移魔法で唐突に宙に現れたため、驚いてむせている一年生もいる。

 二年生は慣れたものである。


「よりによって、皇帝の孫娘がいなくなりましたか」


 魔塔主は一体どこから話を聞いていたのだろう。


「魔塔主、何か知っているのですか?」

「リヒト様、感じませんか?」


 そんな周りくどい言い方をせずにすぐに答えを欲しかったが、一刻を争う時に魔塔主に苦言を呈している暇はない。

 魔塔主が私に何かを感じないかと聞いたからには、私が感じ取ることができる何かがあるのだろう。


 私は目を瞑って意識を集中する。

 寮ではなく、もう少し離れた場所……校舎の方に、精霊力の渦のようなものを感じた。


「これは……」


 ダンジョン?

 私は口から漏れそうになった言葉を飲み込む。


「魔塔主、お願いします」


 魔塔主に手を差し出せば私の意図を理解した魔塔主は私の手を握って校舎へと転移した。

 反射的に私にしがみついたカルロとヘンリックも一緒だ。

 食堂には多くの一年生もいたため、ダンジョンのことをあの場では詳しく話せないための転移だ。


 魔塔主が転移した場所は校舎の廊下だったが、本来はあるはずのない横道があり、その先には精霊力が渦巻いているようだった。

 精霊たちが作り出した場所、つまり、ダンジョンだ。






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