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207 懺悔

お読みいただきありがとうございます。


 ハバルと相談した翌日、強制送還された一年生の国に復学許可の書簡を送った。

 復学許可の伝達を行なった3日後には強制送還された一年生たちは全員戻ってきた。


 転移魔法が使える王宮魔導士がいる国は王宮魔導師の転移魔法で戻ってきたし、転移魔法が使えない国にはベルヴォーグ王国が助力を申し出て王宮魔導師を派遣したそうだ。


 戻ってきた一年生たちにはザハールハイドが作ってくれた教科書を元にした授業が始まった。

 表面上、一年生のクラスも正常に動き出したように見えたが、実際のところは違うらしいと報告してくれたのはザハールハイドだった。


「姉上が言うには、ランツ様の弟であるランロット様が孤立しているそうです」


 王子王女たちなので、一見してわかるいじめなどは行っていないものの、自発的にランロットに声をかける者はおらず、挨拶などの最低限の会話も貴族特有の表面上の笑顔を向けられているという。


 ランロットが帝国内でも力のある大国の王子ならば多少の問題を起こしたところで孤立することもなかっただろうが、ベルヴォーグ王国は武装国家であり武力面で秀でているとはいえど大国ではないため、複数国がまとまっていれば決して勝てない国というわけでもない。


 そのため、王子王女たちは強制送還という問題のきっかけになったランロットから距離を置くという選択をとっているのだろう。


 自分達が強制送還されたきっかけがランロットの問題だったために、彼らはランロットに巻き込まれただけだと思っているのかもしれないが、テオが虐げられた際に声を上げなかった、行動を起こさなかったことがハバルに罰せられる原因だということを理解していないようだ。


 しかし、強制送還という荒技で教えられたことを理解できていないのに、私が言葉で説明してわかるものだろうか?


 私は考えた末にその日のお昼休みにランツに声をかけた。


「ランツ様、ちょっとお時間をいただけますか?」

「もちろんです!」


 ランツにランロットについての聞き取りを行った後、ランロットを生徒会室まで連れてきてもらった。


「リヒト様の庇護するテオを羨み、八つ当たりをしてしまい、申し訳ございませんでした」


 生徒会室に緊張した面持ちで入ってきたランロットは私を見るなり深く頭を下げた。


「ランロット様、私以外に謝罪をすべき人間がいるのではないですか?」


 私の言葉にランロットは頭を上げ、私の後ろに立つテオに視線を向けた。

 まっすぐなその眼差しは、ランツの話の通り、健全さを取り戻しているように見えた。


「テオ、入学式のパーティーでリヒト様に付き添われるテオの姿を見て嫉妬してしまい、テオにあのような態度をとってしまった。本当に申し訳なかった」


 ランロットはテオに対しても躊躇なく深く頭を下げた。


「ランロット様、頭を上げてください。ランロット様とリリアネット様のおかげで僕は2年生に飛び級することができたのです。最初はランロット様に怒鳴られて怖かったですけど、今思えば、ランロット様の言葉に賛同するように頷いたり、冷たい視線を向けてくる王子様たちや王女様たちの方が怖い存在でした」


 暴言や暴力を振るってくる者は恐ろしいし、当然警戒するべき相手だ。

 しかし、暴言や暴力をただ見ている者も同時に恐ろしい存在なのだ。

 そして、そうした不動の暴力はどこにでも、いつでも存在しうる。


 私はひとまずランロットとランツにソファー席を勧め、シュライグにお茶を出してくれるようにお願いした。

 テオを手招いて私の隣に座らせれば、どういうわけかカルロもテオと反対側の隣に座った。


 シュライグが淹れてくれた香りのいいお茶をひとくち飲んでから私は口を開いた。


「ランロット様、テオを虐げた件に関しては反省していることはわかりました。現在は平民のテオに対してどのようにお考えですか?」

「テオは学友です。共に学び、お互いを高め合う存在として尊重すべきでした」

「テオは平民としては初めて魔法学園に入学した生徒ですが、今後も平民からの入学希望者を受け入れるつもりでいます。来年、再来年と入学してくる平民に対しても自分達と対等な立場として接することができますか?」

「はい。私が彼らを虐げることは二度とありません」


 私はランロットの言葉とその真摯な眼差しに満足して頷いた。


「それならば、ランロット様にお願いがあります」

「私に、お願いですか?」


 私はお願いする側の立場として、にこりと愛想のいい笑顔を作った。

 途端、なぜかランロットとランツの顔が赤くなった。


 「リヒト様、たぶらかし禁止です」


 隣でカルロが小声で言った。


 たぶらかしたつもりなどないし、笑顔ひとつで他者をたぶらかしてしまうようなチート能力は私には付与されていない。


「テオと友達になり、テオに貴族社会の立ち居振る舞いを教えてあげてください」


 もちろん、前もってテオにはランロットの友達になってくれるか確認した上での提案だ。


「私がテオの友達に……よろしいのですか?」

「もうテオを罵倒するようなことはありませんよね?」

「もちろんです!」

「それならば、同い年の友人として、テオにさまざまなことを教えてあげてください」


 テオはリリアネットとの模擬戦で勝って飛び級したので、一年生のランロットと授業を一緒に受けることはないが、放課後や食事の時間など、ランロットと過ごす時間を取ることは十分可能だ。


 そして、テオが王宮魔導師を目指しているのならば、貴族社会においての立ち居振る舞い、さまざまな作法を学ぶことは必須だった。


 さらに、ランロットにとってもテオと過ごすことは孤立を避け、周囲に反省を示すこともできるという利点があるだろう。






アルファポリスのキャラ文芸大賞エントリー中。

『化け猫拾いました。』

https://www.alphapolis.co.jp/novel/135536470/153930155


 ちょっとオレ様気質な化け猫 & JKうようよコンビのハートフルコメディ。

 迷子イタチを探したり、稲荷神社のお狐様とお話ししたり、化け猫を拾ったうようよの不思議な日常を描いています。


 切りのいいところまで書いて、ひとまず完結としてあります。

 文字数も少なく、一気読みに最適です!


 一月末までキャラ文芸大賞の投票が行えますので、ひとまず読んでみていただけますと嬉しいです!

 面白ければ、続きを書くチャンスをいただけるかもなので、投票よろしくお願いします☆

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