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204 王女の実力

お読みいただきありがとうございます。


「無詠唱で杖もなく、なんであんな速さで魔法が使えるのよ! 詠唱したり、杖を使ったり、なんらかの補助をして魔法陣を構築するのが普通でしょ!!!」


 この世界の魔法使いにとっては無詠唱よりもそちらの方が早いというのが常識だ。


「姉上、リヒト様もカルロも無詠唱なのです。それも、テオよりも魔法陣の構築は早いですよ」


 ザハールハイドの言葉にリリアネットは「はぁ!?」と王女らしくない素っ頓狂な声を上げた。


「テオは誰から魔法を習ったんだ?」

「カルロ様です!」


 ランツの質問にテオが控えめにドヤッとした。


「どおりで、規格外なわけですね」

「師匠が規格外だからな」

「ちなみに、僕はリヒト様から魔法を習いました!」


 テオの優秀さの理由に納得しているザハールハイドとランツに対して、カルロがあからさまにドヤァっとした。

 はい、可愛い。すごく可愛い。カルロ、優勝。


「リヒト様が先生なんて、羨ましい……」


 ザハールハイドが呟き、ランツや他の生徒たちも私とカルロをじっと見つめてくる。


「カルロは優秀なので、成長が早かったですね」


 私がカルロの頭を撫でるとカルロが嬉しそうに照れ照れしている。

 私よりも背が高くなってしまってもそういうところは変わらない。

 

「う、羨ましい……」


 ザハールハイドが呻くように言った。

 カルロの優秀さがそんなに羨ましいのだろうか?

 しかし、ザハールハイドだって充分に優秀だと思う。


「リヒト様は魔塔主の愛弟子だと聞いておりますわ!」


 リリアネットの言葉に私は思わず「愛弟子ではなく実験材料です」と答えそうになったけれど、それを堪えて微笑みが崩れないように気をつけた。


「魔塔主の愛弟子のリヒト様が魔法を教えたカルロ様に魔法を教わった平民だなんて……」


 悔しそうなリリアネットは、もしかすると、そんなの勝てるわけがないと思ったのかもしれないけれど、それを口にしてしまうのは王女の矜持に反すると考えたのかもしれない。


 実際、私とカルロの弟子だからテオが強いというのは違うだろう。

 テオに人並みならぬ魔力があり、さらにテオが努力した結果だ。


「もしかして……」


 リリアネットは何かに気づいたように弟のザハールハイドを見た。


「もしかして、ザハールもテオと同等に魔法の発動が早いの!?」

「そんなわけないじゃないですか」


 困ったように眉尻を下げて答えるザハールハイドにリリアネットは安堵したようだった。

 しかし、ザハールハイドの言葉は続いていた。


「先ほどの姉上の魔法発動よりは早いですけどね」

「嘘でしょ!?」


 私はその言葉に思わず反応してしまった。


「嘘ではありませんよ」


 自分より優れていることを「嘘」と断じるのはいかがなものか。

 リリアネットに悪意はなく、思わず出た言葉だったとしてもいただけない。

 テオに対しての言葉を飲み込めたのだから、弟を侮辱するような言葉も飲み込むべきだ。


「ザハールハイド様は絶え間ぬ努力で魔法の精度を上げているのです」


 私の言葉にリリアネットは反省したようで、ザハールハイドに「ごめん」と謝った。

 やはり悪意のない言葉だったのだろう。


「せっかくだからこのまま模擬戦を行いましょうか?」


 いつの間にか訓練場に来ていたハバルの言葉に生徒たちの表情が明るくなる。


 私はテオの成長が見れたし、リリアネットの詠唱と杖を使った魔法も面白かったけれど、他の生徒たちにとっては一年生の模擬戦を見ても面白くはなかったのだろう。


 それぞれ2名ずつ組んで始まった2年生の模擬戦の様子に、リリアネットは驚いたようだった。


 自分から飛び級させて欲しいと言ってきたくらいだ。

 リリアネットはよほど自分の魔法の実力に自信があったのだろう。

 けれど、この魔法学園の2年生の実力には全く及ばないのだ。


 クランディア王国内ではかなり優秀な魔法使いだったようだから、もしかすると高位魔法も使えるのかもしれないが、魔法の発動が遅ければこの学園の上級生に勝つことはできない。


 実際のところ、騎士団を率いた魔物討伐などではリリアネットの魔法構築速度は問題ないものだろう。

 むしろ、本人にあれほど自信があったのだから、クランディア王国の王宮魔導士よりも魔法構築の速度は早かったのかもしれない。


 騎士団がいれば、騎士たちが魔物を押さえている間に魔法を構築することができ、魔法構築が多少遅くとも魔物討伐に充分役に立つことができるのだ。


 周囲に感謝され、魔法の才能を褒められることはあれど、自分の魔法の才能に疑念を抱くようなことはなかっただろう。


 しかし、テオとの模擬戦でその自信にヒビが入ったはずだ。


 そして、今、目の前で見せられている魔法学園の2年生たちの模擬戦は、帝国内でも大国の一つクランディア王国の王女に衝撃を与えるものだったようだ。


「……どうして?」


 リリアネットはその瞳を大きく見開き、そう言葉を漏らした。




アルファポリスのキャラ文芸大賞エントリー中。

『化け猫拾いました。』

https://www.alphapolis.co.jp/novel/135536470/153930155


 ちょっとオレ様気質な化け猫 & JKうようよコンビのハートフルコメディ。

 迷子イタチを探したり、稲荷神社のお狐様とお話ししたり、化け猫を拾ったうようよの不思議な日常を描いています。


 切りのいいところまで書いて、ひとまず完結としてあります。

 文字数も少なく、一気読みに最適!


 一月末までキャラ文芸大賞の投票が行えますので、ひとまず読んでみていただけますと嬉しいです!

 面白ければ、続きを書くチャンスをいただけるかもなので、投票よろしくお願いします☆

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