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203 模擬戦

お読みいただきありがとうございます。


「リヒト様、それは本当ですか?」


 ランツがその目に期待を宿している。

 弟が復学できるのが嬉しいのだろう。


「魔塔主とハバル先生と話しをして許可を得てからのことですから、まだご令弟にはお伝えしないでください。もしも復学が許可されなかった場合にはぬか喜びさせてしまいますから」

「わかりました!」


 魔塔主たちからの許可を得ることができなかった場合、ランツのことをとてもがっかりさせそうだ。

 ランツをがっかりさせないためにもしっかり二人を説得しよう。


「リヒト様は甘いのね」


 私たちの会話を聞いていたリリアネットが言った。

「姉上!」と、ザハールハイドが嗜めるようにリリアネットを呼ぶ。

 

「でも、そこも素敵だわ」


 そうにこりと笑んだリリアネットに対してもザハールハイドは「姉上!!」と止めようとする。

 ザハールハイドは気苦労が多そうだ。


「そんな素敵なリヒト様にお願いがあるのですけれど?」

「なんでしょうか?」

「わたくしを二年生に飛び級させてくれないかしら?」


「そうですね」と私は考える。


 人を閉じ込めるほどの水球を作り出すことができるということはリリアネットはかなり魔法が得意なのだろう。

 確かに、他の一年生たちと一緒に学ぶのはつまらないのかもしれない。


 しかし、ここで単純に許可を出して、万が一、二年生の講義……特に実践訓練について来れなかった場合、リリアネットを危険に晒すことになるかもしれない。


「……テオに勝てたならいいですよ」


 私はすこし考えてから言った。


「リヒト様……」と、テオが不安そうな表情を見せた。

 私はテオにやる気になってもらうためにテオにもご褒美を用意する。


「もし、テオが勝ったなら、テオを飛び級させてあげますね」

「本当ですか!?」


 やる気は十分のようだ。


「何やら面白そうな話をしていますね」


 魔塔主が転移魔法で現れた。

 また、私のことを見張っていたのだろうか?


 しかし、今回はちょうどいいところに来てくれた。


「魔塔主、二人の模擬戦の結果、勝った方を二年生に飛び級させようと思いますが、よろしいですか?」

「講義の邪魔にならなければ問題はないでしょう」


 魔塔主の回答は実にあっさりしたものだった。



 他の二年生の生徒たちも私たちの様子を見に来ていたので、彼らも引き連れて私たちは魔法の訓練場へと向かった。

 流石に教室で模擬戦をするわけにはいかない。


「テオ、わたくしはすでに二属性の魔法が使えるのよ? 本当にやるの? テオが負けを宣言すれば怪我をする必要もないのよ?」


 魔法訓練場の真ん中でテオとリリアネットが向かい合う。

 リリアネットの忠告には私が答えた。


「怪我の心配ならば大丈夫です。ひどい怪我をしそうな場合には私が防御魔法を使って守ります」

「リヒト様に守られた場合にはテオの負けということでよろしいのよね?」

「もちろんです」


 幸い、リリアネットの忠告を聞いても、テオには怯んだ様子はなかった。


「では」と、リリアネットが杖を構えて何やら詠唱を始めた。

 彼女は詠唱と杖で魔法陣を作る際の補助をするタイプの魔法使いのようだ。


 私は詠唱もしないし杖も使わないためとても興味深い。

 できれば、最後までリリアネットの魔法陣構築を見ていたかったけれど、テオとしては相手の魔法陣が形成される数十秒を待つ必要はない。


 テオは意識を集中させて素早く魔法陣を形成すると、炎の矢を5本作り出してリリアネットへと飛ばした。


「えっ!? 何!?」


 リリアネットは驚きで詠唱が止まってしまい、途中まで構築されていた魔法陣も消えてしまった。


「な、なんでそんな速さで魔法を使えるのよ!?」


 リリアネットが動揺している間にテオは再び5本の炎の矢を作り出して打つ。

 どうやら、一度に作り出せる量が5本のようだ。

 しかし、私とカルロと同様に詠唱を必要としないテオの矢はどんどん増える。

 

 リリアネットは一番単純な結界を無詠唱で張って最初の5本の炎の矢を防ぐ、そして、その結界を維持したまま次の矢も防ぎ、次の矢も……


 その結界を維持している限り、リリアネットには他の魔法は扱えない。


 しばらく膠着状態が続き、これでは全然進展しないと考えたテオは無詠唱で新しい魔法陣を構築する。

 それは、人を包み込めるサイズの特大の火球だった。


 それを見たリリアネットは慌てて叫んだ。


「降参! 降参するわ!!」


 今、リリアネットが張っている結界ではテオの火球を受け止めることはできないと理解したのだろう。


 しかし、リリアネットの降参の言葉はすこし遅かったようで、テオの魔法陣は完成してしまった。

 そして、テオの火球は容赦無くリリアネットに飛んでいく。


 リリアネットの悲鳴が訓練場に響いた。


 しかし、もちろん、リリアネットに火球が着弾したりはしない。

 カルロが触手で火球を取り込んで無効化したのだ。


 さすがカルロ。

 テオの師匠だけあって、とてもとても優秀だ。





『深窓の骸骨令嬢 〜ループを繰り返してリッチになった骸骨令嬢の逆襲〜』

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こちら、完結しました。

よろしくお願いします!


復讐劇を超えたオーバーキルな逆襲劇です。

サイコパス王子の激重な恋心を添えて。

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