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202 姉とか弟とか

お読みいただきありがとうございます。


 次の瞬間、目の前が真っ暗になり、カルロの触手かと一瞬ワクドキしたが、すぐに自分の目を塞いでいるのはカルロの大きな手だと気づいた。

 子供の頃のカルロの手は私より小さくて、華奢だったのに、いつの間にこんなに大きくなってしまったのだろうか……

 すこし哀愁を覚えてしまったが、子供の成長は喜ばしいものだ。


「リリアネット様、リヒト様を誘惑するのはおやめください。リヒト様は僕の婚約者です!」

「その割には余裕がないのですね。学友とのこれくらいの接触、婚約者ならば余裕を持って見守るべきではないですか?」


「できません!」とやけにキッパリとカルロは答えた。


「リヒト様は魅力的すぎるので、すぐに僕の恋敵を増やしてしまうのです。余裕なんて持って構えていたら、リヒト様の魅力に集まってくる害虫がどんどん増えて収集がつかなくなります」

「呆れるほど余裕がないのですね」


 二人の会話を聞いていられなくなった私はカルロの手を自分の顔から外す。


「ちょっと、カルロ、恥ずかしいからやめて!」

「あら、照れてるお顔も愛らしいですわね」


 リリアネットは再び距離を詰めようとしたが、カルロは私の体を後ろに引いてそれを阻止した。

 しかし、私の体はカルロの腕の中にすっぽりと収まるような形になり、これはこれで恥ずかしい。

 後ろから抱きしめられているような状態が居た堪れなくて身じろいだが、少しの身じろぎではカルロの腕が緩むことはない。


「姉上!」


 一年生の教室に入ってきたザハールハイドの声に一瞬カルロの腕が緩み、私はその隙にカルロの腕から脱出した。

 カルロが不満そうな眼差しを向けてくるが、それには気づかないふりをする。


「ザハール、姉上などと堅苦しい。いつも通りにリリー姉様と呼んだらいいのに」


 リリアネットに揶揄われてザハールハイドの顔が赤くなった。


「ここは学園なのですから、節度を持ってください! それに、リヒト様にご迷惑をかけないでください!」


 ザハールハイドの言葉にリリアネットは不満そうな表情を見せる。


「どうして、わたくしが迷惑をかけているって決めつけるのよ……」


「もしかして」と、リリアネットはザハールハイドを指差してカルロを見た。


「ザハールも害虫なのかしら?」

「……」


 カルロはただにこりと微笑んだ。

 私はカルロが他国の王子を害虫呼びしなかったことにほっと胸を撫で下ろす。


「何の話ですか?」と、ザハールハイドは訝しげにリリアネットとカルロを見た。


 一年生の教室まで来ていたのはザハールハイドだけではなかったようで、ランツが教室に入ってくると私の側まで来ていきなり頭を下げた。


「リヒト様、申し訳ございませんでした!」


 何に対しての謝罪なのか全く分からなくて私は困惑する。


「ランツ様? 何に対しての謝罪でしょうか?」

「俺の愚弟が、リヒト様が庇護する平民を……テオ殿を罵倒して強制送還されたと父上より書簡が届きました」


 どうやら、テオを罵倒したという王子はベルヴォーク王国の第二王子だったようだ。

 ランツは私に謝罪をした後、テオにも向き直った。


「其方がテオ殿か?」

「はい……」

「俺の愚弟が、本当に申し訳ないことをした。すまなかった!」

「大国の王子様が平民に頭を下げるなどダメです! 頭を上げてください!!」


 テオは慌ててそう言ったが、ランツはしっかりと頭を下げた。

 このように平民に頭を下げて謝罪することをも厭わないランツの弟がどうしてテオを罵倒などしたのだろうか?


 ランツに事情を聞くと、彼は非常に言いにくそうに私から視線を逸らしながら話した。


「弟は、その……リヒト様に強い憧れを持っていて……それで、テオ殿に嫉妬したそうです」


 ……どうして、そこで私が出てくるのだろうか?


「あの、私はランツ様のご令弟に会ったことはないのですが?」

「俺が国に帰ってから毎日のようにリヒト様のことを話して聞かせたため、それで、憧れを抱いたようで……」


 一体、どんな話をしたら、会ったこともない人物にそれほどまでの憧れの気持ちを持つことができるのだろうか……

 聞くのが怖いので、私はあえてそこには触れないことにした。


「どうしてそこまで私に対しての憧れを持ってくださったのかわかりませんが、テオに対しての態度が間違っていたことはご令弟は理解してくださったのでしょうか?」

「それはもちろんです! 強制送還されてから深く反省し、部屋に閉じこもっているということです」

「それなら……」


 私はテオに視線を向けた。


「テオがベルヴォーク王国の第二王子を許すことができるのならば復学させたいと思うのだけど、どうかな?」


 もちろん、テオに第二王子に対しての恐怖心がないことが前提だ。

 私の言葉にテオは表情を明るくした。


「王子たちを学校に戻すことができるのですか!?」


 どうやら、自分を罵倒した王子に対しての恐怖心はないようだ。

 テオが強い子でよかった。


「魔塔主やハバル先生と話しをして許可を得てからになるけどね」


 おそらく、復学の許可はくれるだろう。

 復学のために転移魔法を使ってくれるかどうかはちょっと怪しいけれど。

 転移魔法を使えないとなると、遠くから来る者たちはその分また旅費がかかることになるし、授業に遅れが出ることになる。






『深窓の骸骨令嬢 〜ループを繰り返してリッチになった骸骨令嬢の逆襲〜』

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こちらもよろしくお願いします!

復讐劇を超えたオーバーキルな逆襲劇です。

サイコパス王子の激重な恋心を添えて。

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