201 誇らしい存在
あけましておめでとうございます!
本年もよろしくお願いします。
お読みいただきありがとうございます!
朝食を食べた私たちはまず、リリアネットの元へと向かった。
一年生用の広い教室に一人座って教科書を読んでいたリリアネットにテオが声をかけた。
「リリアネット様! おはようございます!」
「テオ、おはよう」
テオの姿を見たリリアネットはニィッと不敵に笑った。
さすが大国の王女。女性でありながらとても威風堂々としている。
そんなリリアネットは私に視線を向けた。
「あら、リヒト様がお越しくださるとは思いませんでしたわ」
その顔を見れば、それが嘘だとわかる。
テオを庇ったことによって、私が直接会いに来ることは予想していたのだろう。
「この度はテオのことを助けてくださり、ありがとうございます」
「リヒト様は本当に平民のテオのことを大切にしているのですね?」
「テオは私の婚約者の弟子ですからね」
私だって平民全てに情を与えられるほどに心が広いわけではない。
私の両隣でなぜかカルロとテオが照れている。
そんな照れるようなことを言ってはいないと思うのだが?
「リヒト様にはわたくしからもお礼をお伝えしたいと思っていましたの」
「お礼、ですか?」
「わたくしの弟のザハールを可愛がってくださっていると聞いているわ。ザハールが国に帰りたがらないくらいに」
ザハールハイドは確かにエトワール王国に来て以降、一度も国に帰ることなくまっすぐ学園の寮へと戻っていた。
しかし、別にそれは私のせいではないのだが?
だが、どう伝えたらザハールハイドのことを擁護しつつ、クランディア王国にも角が立たないように伝えることができるだろう?
「えっと……」
私が言い淀んでいると、カルロが一歩前に出た。
「ザハールハイド様がこの国に止まったのは本人の意思であり、リヒト様はそのような指示は一切していません。ザハールハイド様がリヒト様の魅力に囚われてこの国に残ろうとしているのは確かですが、リヒト様に文句を言われても困ります」
私が言葉を探していたことをカルロがストレートに伝えてしまった。
「カ、カルロ……」
私を庇ってくれるのは嬉しいが、大国のクランディア王国の機嫌を損ねるのはやばい。
「なるほど……」と、リリアネットは私をじっと見つめてすこし思案していた。
「つまり、愚弟がご迷惑をかけているということね?」
「違います!」
私は思わず反射的にリリアネットの言葉を否定した。
「擁護などしていただかなくても大丈夫です」
リリアネットの口元に先程の不適な笑みが戻ってくる。
「あの子は王からの期待に応えることができなくて、代わりに私がこの学園に入学することになったのです。王の命を遂行することもなく何をやっているのかと思えば、リヒト様に侍っているだけとは……わたくしが来てよかったですわ」
ザハールハイドがクランディア王からどのような命を受けてこの学園に入学したのかはわからないけれど、私に侍っているだけなどでは決してない。
彼の優秀さを姉であるリリアネットにも、クランディア王にもしっかりとわかってもらう必要があるだろう。
「……リリアネット様、先程、あなたがお読みになっていたこの学園の教科書をどう思われましたか?」
「教科書ですか?」とリリアネットは机の上の教科書を見る。
「どの魔法書よりも非常にわかりやすくてためになりますわ。これまで多くの魔法書を読んできましたが、これほどわかりやすく親切に書かれているものはありませんでした。まさか、魔塔の魔法使いのなかに、このようにわかりやすい文章を書ける方がおられるなんて意外ですわ」
「それを作ったのは魔塔の魔法使いではなく、ザハールハイド様です」
リリアネットはその目を丸くしてぱちくりと数度瞬いた。
「これを作ったのは、魔塔の魔法使いではなく……ザハール?」
リリアネットは理解が追いつかないようで、私の言葉を繰り返すように言った。
「そうです。昨年の授業のノートがあまりにも見事だったので、ザハールハイド様に教科書の内容を考えていただいたのです。構成も作成も、編集までやってくれました。彼の才能は本当に素晴らしいです」
「つまり、このわかりやすい文章や図も、ザハールが書いたということですか?」
「その通りです!」と、私はすこしわざとらしくドヤってみた。
すると、想定通りにリリアネットが訝しげに眉を寄せた。
「……どうして、リヒト様が誇らしげなのですか?」
「仲間が褒められるのは嬉しいですから」
そう。ザハールハイドは私の仲間だ。
人生の後輩ではあるが、誇らしい同僚のような存在だ。
そんな彼を、家族だからと侮辱しないでほしい。
「ザハールは私の弟なのですが?」
「それならば、リリアネット様も誇られたらいいですよ。弟さんは素晴らしい才能の持ち主です」
リリアネットがふふふっと声を漏らして笑い出した。
「弟がリヒト様の元にいたがる理由がわかりましたわ」
「それに」と、リリアネットは私の顔に顔を寄せた。
「わたくしも、リヒト様に興味を持ちました」
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