表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

191/278

191 戦争の後始末

お読みいただきありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけますと幸いです。


いいねやブックマーク、評価や感想等もありがとうございます。

皆様の応援で元気をもらっています。


「エラーレ王国の民からフェリックスに次期王になって欲しいという嘆願書が届いている」


 オーロ皇帝に呼ばれて久しぶりにルシエンテ帝国の城に行ってみれば、エラーレ王国の報告を受けた。


 オルニス国へ戦争を仕掛けたエラーレ王と戦争に加担した貴族は当然極刑。

 さらに、その親族も連座で極刑。

 飛行の魔導具を作るのに協力した国民などは捕らえて牢に入れたものの、戦争に積極的に参加したというよりは王命に逆らうことができなかったという事情のため、調査が完了すれば解放となるそうだ。


 そのように戦争に加担した者たちの刑罰を決めることはそれほど難しくはなかったということなのだが、問題は王族で刑罰を免れた者がフェリックスしかおらず、公爵家を筆頭に多くの貴族が戦争に加担して極刑となっているために、フェリックスの代わりを任せられる者もいないということだった。


 さらに、 国民を差別することなく、彼らと無邪気に接していたため、国民に人気があったフェリックスを多くの国民が支持し、帰国を待っているという。

 だが、しかし……


「フェリックスは学者肌で王には向きません」


 フェリックスは今年15歳、来年にはもう成人のため、王となってもそれほどおかしなことではなかったが、問題はフェリックスの性格だ。

 せめて、フェリックスを支えてくれる優秀な宰相や大臣のような存在がいればいいのだが、これまで国政を担ってきた者たちはことごとく極刑となっているため、国政を支える貴族自体が足りない状態だ。

 そのようなところにフェリックスを送り出すというのも……


 そこで、私はフェリックスの乳母のハンナを思い出した。

 元は貴族だったハンナはフェリックスの後ろ盾をなくすために爵位を取り上げられて平民となっていた。

 しかし、王子の乳母になれるような立場だったのなら、男爵や子爵といった低い爵位だったとは思えない。


「フェリックスの乳母は今は平民ですが、元は貴族です。その家の者が健全な思考ならば、フェリックスの補佐をしてくれるのではないでしょうか?」


 私の提案にオーロ皇帝はネグロへと視線を向けた。

 ネグロはこくりと頷いた。

 おそらく、後ほど調査をするように文官に指示するのだろう。


「さて、次にオルニスについてだが、もうエトワール王国には着いたのだろう?」

「その件については私はオーロ皇帝にすこし怒っているのですが?」

「エトワール王国に行くことに許可を出したことか?」


 私はこくりと頷いた。


「しかし、首長がいるところに自分たちも居を構えたいと思うのは国民感情としては不思議なことではなかろう? 彼らはエルフというひと種族であり、魔力の豊富さで首長を決めるというわかりやすい上下関係もある。さらに、首長が気に入っている王子がいる国とのみ国交している現状だ。厄介な隣人から離れ、首長のいる親しい国に居を移そうと考えるのはごくごく自然なことだと思ったのだ」

「だとしても、もうすこし我が国に配慮してくださっても良かったと思うのですが?」

「だから、リヒトが了承すればという前提で許可を出したではないか?」

「そこはエトワール王にとしてほしかったです」

「どうせあと3年もすれば王になるのだから問題あるまい」

「父上がいるのに成人してすぐに王になるわけがないではないですか?」

「お前の父親はすぐにでもリヒトに王位を譲りたいと言っていたぞ?」


 衝撃の話を聞いてしまった。


「なんだ? 聞いていなかったのか?」

「聞いていませんし、絶対に嫌ですよ!」


 王の執務など面倒に決まっている。

 10代でやることではないだろう。

 ……いや、まぁ、中身は50代だし、父王よりも年上なわけだが。


 そう考えるとやはりフェリックスにはまだ早いような気がする。


「それで、オルニスをどうしたのだ?」

「今は魔塔主の命により、オルニスはヴィア王国との国境付近の丘に天空都市を下ろしています」


 ヴィア王国はティニ領地が自国に返還されるべきだと考えているため、おかしな行動を起こさないように見張りとして魔塔主はオルニス国をそこにおくことを提案したのだ。

 友好的ではない国との国境に見張りがいるのはありがたいし、そのあたりには村などもなかったために私は許可を出した。


 しかし、オーロ皇帝は微妙な表情を見せた。


「また面倒なところに配置したな」

「魔塔主は防衛のためと考えているようでしたが、面倒なところというのはどういうことですか?」

「ヴィア王国の現王と王子がバカだったのは魔法学園の入学式でわかっただろう?」


「そうですね」と私は頷いた。


「そのバカの目の前に宝石都市とも言われるものをおいたのだぞ?」


 思わず、「あ……」と声を漏らした私をオーロ皇帝は呆れた目で見た。


「下手をしたら第二のエラーレ王国になるぞ?」


 私は頭痛を覚えた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ