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184 ダンジョン制作 03

お読みいただきありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけますと幸いです。


いいねやブックマーク、評価や感想等もありがとうございます。

皆様の応援で元気をもらっています。


 そして、翌日の夜。

 めげることなく私の部屋を訪ねてきた王子たちを私は初めて出迎えた。


「皆さんにご協力いただきたいことがあるのですが」

「「「なんでも言ってください!!」」」


 彼らの後ろにブンブンッと警戒心ゼロで振られるもふもふの尻尾が見えるような気がする。

 こんなに警戒心が薄いのに、囮のランツ以外誘拐されなくて本当によかった。

 

「ご協力をお願いする側でありながら申し訳ないのですが、この話をするためには他言しないという旨の魔法契約を結んでいただきたいのです」

「「「わかりました!」」」


 魔法契約の話をすればさすがにちょっとは警戒するだろうと思ったのだが、尻尾の幻影はまだ見えている。


「皆さん、落ち着いてよく考えてください。魔法契約ですよ? 普通の契約書ではなく、この件に関して誰かに話そうとすれば強制的に口が噤まれてしまうのですよ?」

「リヒト様のお役に立てるのでしたら、問題ございません!」

「リヒト様の秘密に関われるなど光栄です!!」

「契約書をください!」


 率先して契約書を要求する姿に私は眩暈がしそうだった。


「あ、あの、王子たちは、一国の王子なのですよ?」

「大丈夫です! 私は第三王子なので!」

「私は第二王子ですが、弟もいるので全く問題ありません!」

「僕は第四王子ですから、いつでもリヒト様の元でお仕えできます!」


 なんか違うのだ。そういうことではない。

 しかし、この場にランツがいないのは朗報だろうか?

 ランツは第一王子だから、あまりこうしたことに巻き込みたくはない。

 本人は私に仕えたいとか意味のわからないことを言っていたが、きっと、若気の至りというやつだろう。


 その時、アラステアが「あ」と声を上げた。


「そういえば、今、ここにいない王子たちは後から来るかと思います」


 それは一体どういうことだろう?

 今、ここにいないのはベルヴォーク王国のランツとクランディア王国のザハールハイドだ。


 ちなみに、王子ではないがライオスもいない。

 ライオスは放っておくと夜更かししてまで読書するので、早く寝なければ図書館への立ち入りを禁止すると言ってあるからだ。


「今夜もリヒト様がおられないかもしれないので、私たちが部屋に戻らなかったらお越しくださいと伝えておいたのです」

「やはり、私たちも第一王子のランツ様とか第三王子でも大国の王子であるザハールハイド様にはすこし緊張しますから」


 だから、ランツとザハールハイドはこの場にいないのか。

 これはゆっくりとはしていられないようだ。


「皆さん、本当にいいのですか?」


 私の最終確認にその場の全員が頷いた。


「では、アラステア様とノア様は契約書に名前を記入した後、すぐにランツ様とザハールハイド様に私は部屋にいなかったと伝えてください」

「「わかりました!」」


 お使いを頼んだ二人はなぜか嬉しそうに返事をして、魔塔主から魔法契約書を受け取った。




 結論から言えば、ダンジョンはできた。


 王子たちの魔力を借りて、様々な魔力を混ぜ合わせた結果、水属性の魔力が多かったからか、氷のダンジョンが完成した。

 冒険者たちに人気のダンジョンのサイズと比べるとかなり小さいダンジョンだが、実験としては十分成功だ。


 ラズリは狂喜乱舞していたし、魔塔主も満足そうだ。

 もちろん、私も今後のエトワールの発展に使えそうな素材として人工ダンジョンの実験が成功して満足だ。


 実験を終えて、我々は魔塔主の転移魔法で私の私室へと戻ったのだが、その時に、魔塔主が小さな声で「おや……」と小さく呟いて部屋の扉へ視線を向けた。


 深夜まで付き合ってくれた王子たちは私に挨拶をして部屋の扉へと向かう。

 その彼らは扉を開けた瞬間、「ひっ」とか「ひぇっ」とかいう小さな悲鳴を上げた。


 扉の先、深夜ゆえに灯りを暗くした廊下には半眼のランツと悲しげなザハールハイドがいた。


「アラステア、ノア」


 ランツの低い声に名前を呼ばれた二人が背筋を正した。


「俺の耳を侮ったな」


 二人は完全に蛇に睨まれたカエルだ。


「俺の部屋に寄った後にザハールハイドの部屋に寄っただろ? そして、その後、お前たちが自分たちの部屋には戻らず、またリヒト様の部屋の方へと歩いていくからおかしいと思ったんだ」


 つまり、ランツはずっと二人の気配を辿っていたのだろう。

 城の客室の壁が薄いわけもなく、王子たちがわかりやすく足音を立てて歩くわけもないから、足音が聞こえていたとは考えにくい。

 きっと、武人の国のランツは気配を察知する能力も鍛えているのだろう。


「ランツ様、二人を責めるのはやめてください。二人は私のお願いを聞いてくれただけですから」


 私はアラステアとノア、それから他の王子や貴族たちを部屋に帰して、ランツとザハールハイドと向かい合った。




 私が口を開く前に、ランツが私の前に片膝をついて頭を下げた。


「リヒト様、どうかお許しください!」


 突然のランツの謝罪に私は首を傾げた。


「ランツ様? どうされたのですか?」

「誘拐事件で勝手をしたために、信用できない俺を仲間外れにしたのですよね?」


 え? 違うが?


「深く反省もし、今後は絶対にリヒト様にご報告いたしますので、どうか愚かな俺をお許しください!」

「ランツ様、頭を上げて……」


 ランツの頭を上げさせようとすると、ザハールハイドがぽろぽろと涙を落とした。


「ザハールハイド様!?」

「リヒト様、私はなぜ、置いていかれたのでしょうか? 私は、気づかぬ間にご不興を買ってしまったのでしょうか?」


 ランツはともかく、将来的には私のところで働いてほしいと考えているザハールハイドにそのような誤解をさせてしまうとは、しかも泣いている!?






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