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180 お説教 01

お読みいただきありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけますと幸いです。


いいねやブックマーク、評価や感想等もありがとうございます。

皆様の応援で元気をもらっています。


 訓練場に行くと騎士団長が王宮近衛騎士団の者たちを集めて王宮の警備にあたる者、そして休憩をとる者と指示を出していた。

 私に気づくと騎士団長も騎士団のみんなも礼を取ろうとしてくれたが、私はそれは不要だと示す。


「魔塔主、お待たせしてすみません」


 魔塔主には特に何も言っていなかったのだが、ちゃんと私たちを待ってくれていたようだ。

 ちなみに、ラズリは魔塔主の足元でまだ寝ている。


「ラズリさんは魔塔に返してきましょうか?」

「いえ。ここに置いて行っても問題ありません」

「訓練場に置いて行ったら他の騎士たちに迷惑ですよ」


 魔塔主はしばし考えた。


「それなら、迷惑にならないところにやりましょう」


 魔塔主はラズリへと視線を向けることもなく、ラズリをどこかへとやってしまった。


 騎士団長は近衛騎士団に指示を出し終わると、次に一般の王宮騎士団たちに指示を出し始めた。

 公爵領に連れて行く者の人選が終わり、魔塔主の転移魔法で大人数の騎士団と文官数名をグレデン公爵の屋敷へと転移させた。


 人員の配置を確認後、私はランツに話を聞くべく再び城へと戻った。




 ランツを指標にして転移すると、そこは先ほどの父上の執務室ではなく、食堂だった。

 どうやら、夕食の時間になっていたようだ。

 食堂の中にはランツ以外の王子王女たちもいて、私が転移魔法で現れたことに一瞬だけざわめいた。


 しかし、さすが王子王女と言うべきか、そのざわめきはすぐに収まり、彼らは落ち着いた様子で私が口を開くの待った。

 そんな彼らに私は怒っていることを隠しもせずに見渡した。


「それでは皆さん、どうして私に報告もなしに危険な行動をとったのか、ご説明いただけますか?」


 その場には緊張感が流れ、皆一様に青い顔をしていた。


 ナタリアだけが、第三者の立場でこの場の様子を眺めていた。

 おそらく、帝国の姫であるナタリアには誰も今回の話をしておらず、彼女は巻き込まれていないのだろう。


「我々はリヒト様のお役に立ちたかったのです」


 黙り込む生徒たちの中でランツが一番最初に口を開いた。


「私の役に? なぜですか? 皆さんはそれぞれの国の王子と王女です。ご自身の立場を考え、ご自身の安全を優先してください」

「我々は魔塔の魔法使いである先生たちに厳しく教育されている魔法使いです。その辺の騎士や暗殺者程度なら簡単に返り討ちにできます」

「それは過信ではないですか?」


 ランツをはじめとした王子王女が言葉に詰まった。


「魔塔の魔法使いたちは確かに最強の魔法使いと言えるでしょう。しかし、魔塔に所属しておらず、暗殺などを手がける裏組織にいる魔法使いたちが魔塔の魔法使いたちよりも確実に劣っているという保証はないですし、たとえ彼らが魔塔の魔法使いたちよりも劣っていたとしても、ただの生徒でしかない我々は暗殺者よりも劣っているかもしれません。一国の王子、王女であるあなた方が過信して自ら行動するのは危険です!」

「ですが、リヒト様も自ら動かれたではないですか!?」

「それは、私の国で起きた問題ですし、この国で起きた事件である以上、私にはあなたがたを守る義務があるからです!」


 それに、大人として子供たちを守るのは当然のことだ。

 何せ私は中身52歳のいい大人なのだから!!


「それでは、我々の自国で起きた事件ならば、リヒト様は我々に守らせてくれるということでしょうか?」


 何やらランツが意味のわからないことを言い出した。


「我々だって、リヒト様をお守りしたいですし、お守りする力もあります! 今すぐには無理でも、いつかはリヒト様の元で騎士として仕えたいと思っております!」


 一国の王子がおかしなことを言い出した。

 しかも、ランツは第一王子だ。

 第三王子とか第四王子なら他国に移住することも可能かもしれないが、第一王子では無理だろう。


「ランツ様、それは無理な話です。ランツ様は第一王子で、すでに王太子として認められた存在ですよね?」

「王太子の座は弟に譲ります!」

「な、何をおっしゃっているのですか!?」


 なんだか、グレデン公爵に襲われた事件よりも面倒なことを言い出した気がする。


「私もリヒト様の臣下になりたいです! 剣術は苦手なので、文官として!」

「わたくしも、文官としておそばにおいてくださいまし!」


 ランツだけでなく、他の王子や王女たちまで仕えたいとか無茶を言い出した。


「みんな、落ち着いてください。冷静に考えてください」


 冷静になって考えれば、自分たちがどれほど無茶なことを言っているのかわかるはずだ。


「リヒト様は僕が守ります!」


 みんなと一緒に食堂で待機してくれていたカルロが私を守るように、みんなと私の間に入ってくれたが、より一層話がややこしくなる気がした。


「いつもカルロ様ばかりずるいです!」

「そうですよ! 私たちだってお役に立てるのに!」

「カルロはもう婚約者という立場を手に入れているんだから、他のところは譲ってくれてもいいだろ!?」

「そうだよ! リヒト様はみんなのものなんだから!!」


 いや、私は誰のものでもないのだが?






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