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170 難民? 02

お読みいただきありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけますと幸いです。


いいねやブックマーク、評価や感想等もありがとうございます。

皆様の応援で元気をもらっています。


 私がヘンリックに視線を向けると、ヘンリックは物分かりのいい顔で頷いた。


「先に首長代理をお連れください。エトワール王国の城に戻るのであれば安全でしょう」


 私はヘンリックに「すぐに迎えに来ます」と約束して、首長代理を城の客間へと転移させた。

 私の影から出てきたカルロに執事長を呼んできて首長代理が父王と謁見できるように話を通しておいてほしいと頼んでからヘンリックを迎えに行くと、先ほど転移した塔でそのまま待っていたヘンリックはエルフたちに説教していた。


 想定外の光景にどうしたのかと聞けば、エルフたちがヘンリックを歓待しようと声をかけてきたので、そんな暇はないはずだ、速やかに復興を進めるようにと進言していたところだという説明だったが、傍目にはどう見ても子供がいい大人たちを説教している図だった。


「ヘンリックはいい指導者になりそうだね」


 そうヘンリックを褒めれば、ヘンリックは嬉しそうにその表情を明るくした。


「本当ですか!? 将来、リヒト様のお役に立てるように精一杯精進いたします!」


 なんだろう。

 やけに気合いが入っている気がする。


「ヘンリックは騎士団長でも目指しているのか?」


 私の問いかけに、「いいえ!」とヘンリックはやけに爽やかに笑った。


「私はリヒト様の第二王配を目指しております!」


 以前、側室とか寵愛とか言っていたのはやはり冗談ではなかったのか……

 ヘンリックは私の側で仕えている割にはあまり露骨にアプローチしてきたりしないから、冗談だったのかとちょっと油断していた。


「リヒト様はこのようなお話は苦手なようですので、普段は私も気持ちを表すことは控えております」


 そうヘンリックが微笑んだ。

 私が少女だったならば、ヘンリックに惚れていたかもしれない。

 しかし、私はつい先日、カルロだけを婚約者とすると約束したのだ。


「ヘンリック、申し訳ないけれど……」


 私がヘンリックの気持ちを受け入れることができないことを伝えようとしたその時、エルフたちが詰め寄ってきた。


「ヘンリック様は未来の第二王配だったのですね!」

「それでは、やはり、手厚く歓待しなければ!」


「宴だ!!」と騒ぎ始めたエルフたちを叱り、私はヘンリックを連れて城の勉強部屋へと戻った。




「我々オルニス国民一同、リヒト様に忠誠を誓います!」


 王族である父は王侯貴族の階級のないオルニス国の首長代理も対等に扱い、謁見の間ではなく会議室で話し合いの場を設けたようだ。


 私が遅れてその部屋に入ると、首長代理のそのような宣言が聞こえて私は慌てた。


 父はエトワール国王だ。

 その国王を無視して息子の私に忠誠を誓うなどという唐突の発言に両親が不快になってはいないかと不安になったが、父王はものすごく機嫌のいい顔をしていた。


「そうか! オルニス国を我々は歓迎しよう!!」


 私は親バカすぎる父王の警戒心のなさが心配になった。

 しかし、母の方は厳しい表情をしていた。


「オルニスの首長代理、オルニス国の女性は非常に野心的だと聞いております」


 その言葉で、私は母がなぜそのように厳しい表情を見せているのかがわかった。

 母は、私がオルニスの女性に性行為に誘われた時のことを言っているのだ。


 首長代理がこれまで何度か見せてきたオロオロした姿の中でも最も狼狽えている。


「あ、あのような無礼はもう二度とさせません!! 女性たちはリヒト様には接近禁止としておりますので!」

「別にアピールすることを否定するつもりはありません。まだ子供だった頃にいやらしい思惑で近づいたことには問題はありますが、他国からの婚約の申し出もありましたからその中でオルニス国の者だけがアピールすることを禁じるのも公平ではありません」

「寛容なるお心、感謝しております」


 恐縮する首長代理に母上と乳母がずいっと近づいた。


「しかし、オルニス国の女性がどのような容姿で、どれほどの教育を受けているのかということは知っておく必要があるでしょう」

「え……」

「ですから、わたくしたちに会わせてくださいまし」

「いえ、あの、王妃様や侯爵様に会わせられるような娘たちではございません!」


 首長代理が滝のような汗を流してかわいそうなほど萎縮している。

 どうにも今日の母上と乳母の様子はおかしい。

 私のことが心配ならば、接近禁止だけでいいはずだ。


 なぜ、オルニス国の女性たちの容姿を知る必要があるのだろうか?


「母上、乳母、首長代理を困らせるのはやめてください」


 私の後ろにいたカルロが一歩前に出て私の隣に並んだ。


「オルニス国の女性が使っているという月夜の雫という名の美容液は私が入手してまいりますので、お二人とも落ち着いてください」


 カルロの言葉に首長代理に詰め寄っていた二人がスッと姿勢を正してカルロに微笑んだ。


「あら、そう?」

「では、お願いしますね」


 どうやら、エルフの女性たちが美を保っている秘訣という噂のある美容液が欲しかったようだ。

 そのような事情にすぐに気がついたカルロに私は感心した。


 乳母は首長代理にスッと冷たい視線を向ける。


「女性のリヒト様への接近禁止はそのままでお願いします」


 首長代理は背筋を正して、「はいっ!」と勢いよく返事をした。






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