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17 カルロの属性

お読みいただきありがとうございます。

徐々に読みに来てくださる方が増え、ブックマークしてくださる方が増え、とても励みになっています!

ありがとうございます!!

少しでも楽しんでいただけますと幸いです。


金髪白皙碧眼の美幼児であるリヒトには前世の記憶がある。

前世、52歳で亡くなるまでの記憶があるリヒトは中身が”おじさん”であることを隠しながら、前世の推しであるカルロを不憫な未来から守るべく国の改革を目指す!


しばらくBL要素はなく、ブロマンス要素の方が強いと思いますが、徐々にBL要素が強めになる予定です。


「すでに属性を調べたのですか?」

「いいえ。まだです」


 そもそも属性を調べる前に魔法の基礎を学ばせ、魔法を使えるだけの魔力があるかを確認し、初期魔法の魔法陣を覚える必要がある。

 確かにカルロは闇属性だが、私がそれを知っているのは前世のゲームの知識なので、ここで言うわけにはいかない。


「闇属性がリヒト様のお役に立てるのならきっと闇属性です!」


 きっぱりとそう言ったカルロを私も魔塔主も凝視した。

 ……なるほど。

 カルロは先ほどの魔塔主の言葉を聞いて、闇属性であることを希望しているのか。

 私の役に立ちたいと一生懸命になってくれるカルロは本当にとても可愛いが、魔法の属性とは希望して得られるものでもない。


「カルロ、そう言ってくれるのはとても嬉しいけれど、ちゃんと調べてみよう」


「そうですよ」と魔塔主はため息をついた。


「万が一、何の魔力も持ち合わせていなければ私の時間の無駄ですから」

「僕は絶対に闇属性の魔法が使えます!」


 魔塔主の意地悪な言葉にカルロは頬を膨らませて言い返した。

 頬を膨らませるなんてこれまで見たことがない表情だ。


 とても可愛い! すごく可愛い!

 思わずその頭をなでなでするとほっぺがぷしゅ〜と空気でも抜けたかのように元の形に戻った。

 ぷっくりほっぺをもっと見ていたかったからとても残念だが、照れてはにかんでいる姿も可愛い。


「リヒト王子は従者を甘やかしすぎではないですか?」

「カルロはただの従者ではなく、私の癒しなのです」

「癒しですか?」

「はい。とても可愛いので」


 魔塔主が急に私の頭をぐりぐりと撫で始めた。


「なんですか?」

「可愛いと撫でるのでしょう?」

「魔塔主! 不敬ですよ!」


 乳母に注意されても魔塔主の手は止まらない。

 私と魔塔主だけの授業の時には私の能力を隠すために乳母の入室は禁じていたが、今日はカルロが初めて参加する魔法の講義なので保護者として乳母の入室も許可している。


「あの、やめていただけますか?」

「どうしてですか? 可愛いならなでなでするのですよね?」

「魔塔主は私を可愛いと思っているのですか?」


 それはとても意外だ。


「リヒト王子はとても希少な実験体ですからね」


 納得と同時にすごく微妙な気持ちになった。


「不敬です! リヒト様を離してください!!」


 カルロがまたほっぺを膨らませてぷりぷりと怒っている。

 とても可愛いが、この可愛いカルロを愛で始めたら話が一向に進まないだろう。

 私は愛でたい気持ちを我慢した。


「魔塔主、仕事をしてください」

「では、属性の確認をいたしましょう」


 先ほどと同じ魔塔主の言葉に私は「待ってください」と準備を始めようとした魔塔主を止めた。

 前世のアニメではよく属性がわかる魔導具が使われたり、ステータス画面が表示されたり、鑑定スキルなんかで確認したりしていたが、この世界の属性の確認は非常に地道な作業だ。


 それは、各属性の初期レベルの魔法を使わせて確認するというもの。

 つまり、属性を確認する前に初期レベルの魔法知識を持っていなくてはそもそも確認もできない。

 そもそも、魔法の適正、つまり、魔力を多く持っているのかどうかの確認も必要だ。


「魔塔主、段階を飛ばし過ぎではないですか?」

「段階を追っていては私の時間の無駄ですから」


 では、どうするというのだろうか?

 もしかして、私が知らないだけで、この世界にも属性を確認する簡単な方法があるのだろうか?


「一体どうやって調べるつもりなのですか?」

「私が攻撃魔法をぶち込みますので防いでみてください」

「……は?」


 あまりに想定外の魔塔主の言葉に私は呆然とし、間抜けな声を出してしまった。


「魔力を持っていれば防衛本能 で反射的に何らかの魔法で防ぐはずです。どのような魔法で防いだのかによって属性の判定を行います。最も効率的な判定方法です」

「カルロが怪我をするかもしれないような方法はダメです! 一般的な判定方法でお願いします!」

「では、仕方ないですね。別の日に私の部下を連れてきましょう。私の貴重な時間を無駄にするわけにはいきませんから、その日は私がリヒト王子で実験を行い、部下がリヒト王子の従者に魔法の基礎について講義するということでよろしいですね」


 途中、何やら気になる言い回しがあったが、私が同意の返答を返そうとすると、カルロが口を挟んだ。


「それではリヒト様と一緒に講義を受けることができません! 今すぐに属性の判定をお願いします!」


 カルロはそう言うと私から距離を取るように走った。

 私たちは魔法訓練場の入り口に近いところにいたのだが、カルロは一人だけ中央へと走り、しばらく行ったところで止まった。

 5歳のカルロの体はまだまだ小さく、頑張って走っても訓練場の中央にさえ到達していないが、本人的にはだいぶ走ったのだろう。

 「早くしてください!」とカルロが催促する。


「本人もやる気ですし、いいですよね?」


 魔塔主が笑顔で聞いてくる。


「怪我をさせない方法があるのですか?」


 魔塔主は私の耳に口を近づけて小声で教えてくれる。


「攻撃魔法を放つのと同時に従者の周りに結界をはります」

「なるほど。それなら怪我をすることはなさそうです」


 私が許可を出すと魔塔主はどこからか魔塔主の視線の高さまである大きな杖を取り出した。

 杖の先には大人の拳大の魔石がついている。


「では、参りますよ」


 魔塔主は両手で杖を掴み、集中すると魔石が光り、魔石を囲むように小さな氷の礫が現れた。

 それが一気にカルロへ向かって飛んでいく。

 小さな礫ではあるが、当たったら皮膚を切り、無数の怪我を負うだろう。

 私が緊張して見守っていると、氷の礫はカルロの前で消えた。しばし、何が起こったのかわからずに私は呆然とカルロを見守った。


「……今のは、魔塔主の結界がカルロを守ったのですか?」


 私の質問に魔塔主はゆるりと首を横に振った。


「違います。リヒト様の従者は本当に闇属性だったようですね」

「つまり、無効化したということですか?」


 闇属性の魔法使いが魔法陣の知識なしに使えるのは相手の魔法を無効化したり、自分の影を操る程度のことだ。


「はい。すべての氷の礫を無効化して消してしまったのであの年齢にしては魔力も十分でしょう。素晴らしいです」


 魔塔主が褒めるのはとても珍しい。

 私はカルロを振り向き、手を振った。


「カルロ! 魔塔主がカルロのことを褒めてくれたよ!!」

「もう属性はわかりましたか?」

「カルロは闇属性だよ!」

「っ!! 本当ですか!?」


 カルロがとても嬉しそうな顔で駆け寄ってきた。

 その勢いのまま、私に抱きつく。


「僕、リヒト様のお役に立てますか!?」

「もう十分、役に立ってくれているけどね」

「全然、足りないです!!」


 カルロはぎゅ〜っと私にしがみついてくる。


「カルロ、リヒト様のご迷惑になりますから離れなさい」


 乳母はそう注意したが、私はカルロを抱きしめ返す。


「カルロは私の従者で、一緒に勉強し、遊ぶのが役目ですから、喜びを分かち合うのも役目の一つでしょう」

「リヒト様の喜びを分かち合うのならわかりますが、カルロの自己満足にリヒト様が付き合う必要はありません」

「何を言っているのですか? 乳母、私もカルロの属性がわかってとても嬉しいのです。もちろん、闇属性じゃなかったとしても嬉しかったと思いますよ」

「リヒト様は本当にカルロに甘いですね」


 そう乳母は呆れたようにため息をついたが、その眼差しは優しい。

 カルロは属性が闇属性だったことがよほど嬉しいのか、興奮冷めやらぬようでぎゅうぎゅうっと私の体に自分の体を押し付けた。


「リヒト様の従者が闇属性なのであれば光属性のリヒト様と一緒に実験ができますね」

「魔塔主はブレませんね」

「実験のためにわざわざ王宮に来ているのですから当然です」

「私は講義のために講師を派遣してもらっているはずなのですが?」


 魔法を教えてくれるのであれば魔塔主でなくてもいいのだが。

 私が魔塔主とそんな他愛もない話をしていると隣にいたカルロの体がふらついた。

 すぐに乳母が受け止めてくれたのでカルロが床に体を打ちつけることはなかったが、カルロはそのまま眠るように意識を失った。


「初めて魔法を使ったのでその反動でしょう」

「私が魔法を初めて使った時にはこのようなことはなかったですよ?」

「リヒト様は魔力の流れを感じ取りながら使っていたのではないですか?」


 初めて魔法を使った時のことを思い出してみると、確かに、自分の中にうごめくエネルギーのようなものを感じていた。


「……そうかもしれません」

「リヒト様の従者は自分の体が扱える魔力量を超えて使ってしまったのでしょう」


 私は魔塔主を睨む。


「怪我をしないようにと言っておいたではないですか」


 せめて、前もってきちんと説明しておいてほしかった。


「怪我ではありません」


 屁理屈だ。


「リヒト様、心配されなくても大丈夫です。私も初めて魔法を使った時には数日寝込みましたから」


 乳母はそう言ったが、数日間も寝込むなど大ごとではないか。

 私がそう言うと、乳母は魔法を使った大抵の者がそのようになるのだと教えてくれた。


「リヒト様が特殊なのです」


 魔塔主はそれで済まそうしているが、そういう問題ではない。


「それならそうと前もって説明しておいてほしかったです」

「誰もが通る当然の現象ですので失念しておりました」


 こんな大切なことを忘れないでほしい。


「今日の講義はここまでにしましょう。カルロを休ませないといけませんから」

「それでは私がわざわざここまで来た意味がないではありませんか?」

「カルロがいなくては闇属性と光属性を使った実験はできません。それに、カルロに負担がかからず安全に調べるためにはやはり基礎学習から学び、その後に基礎訓練を受ける必要があるでしょう」


 しかし、ここまでの様子から当然、そのような基礎的なことを魔塔主が教えてくれる気がないことはわかっている。


「カルロの基礎学習は乳母と私で行います。基礎訓練はグレデン卿と私で行いますので、それらが終わるまでは魔塔主の講義は行いません。そうすれば魔塔主も時間を無駄にすることはないでしょう」

「リヒト王子の講義ですか……」


 魔塔主は考える素振りを見せる。

 私は少し……いや、かなり嫌な予感を抱いた。


「その講義、面白そうなので私も受けます」


 嫌な予感は見事に的中し、私は頭痛を覚えた。






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