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【BL】 不憫な推しキャラを救おうとしただけなのに【幼児ブロマンス期→BL期 成長物語】  作者: はぴねこ
魔法学園編

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167 魔王でも

お読みいただきありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけますと幸いです。


いいねやブックマーク、評価や感想等もありがとうございます。

皆様の応援で元気をもらっています。


 不意にベッドメイクの手を止めて、カルロの視線がこちらを向いた。


「どうかされたのですか?」

「え?」

「今日はドレック・ルーヴと会ってきたのですよね? 何か気掛かりなことでもありましたか?」


 じっと私をまっすぐ見るカルロに私は思わず笑ってしまった。


 前世のゲームの中のカルロの未来が本当に魔王なのだとしたら、きっと何か事情があったに違いない。

 だって、今のこの子は絶対にそんな存在にはならないだろうから。


 それに、正直、魔王になっても仕方ないのかもしれないって思う。

 だって、ゲームの中のカルロの人生は本当に酷いものだった。

 両親を早くに亡くし、唯一の親戚には裏切られ、陵辱され、そんな彼を救う大人がいない国だったのだから。


 子供を蔑ろにし、踏み躙ることなど許されないという当然の常識がない悍ましい国だったのだから、そんな国、滅んだ方がいいと思っても不思議はないだろう。


 私はカルロのサラサラの髪に指を伸ばして、その髪を梳いた。

 そのまま、指を白い頬へと持っていき、触れる。

 以前はぷにっとしていた頬も、今はそれほどぷにぷにしていない。

 以前とは違う触り心地になってしまった頬が不思議で、カルロの顔をよくよく見れば、以前よりも頬も顎もすっきりとした顔立ちになっていた。

 いつの間にか、カルロは随分と成長していた。


 飽き人くんは、ゲームの二作目、魔法学園の高学年でカルロは魔王に覚醒すると言っていた。

 それは、ほんの数年後の話だ。


 その頃には、この姿はもっと成長しているのだろうか?

 子供の成長は早い。

 きっと、私が思うよりも早く、カルロはもっと美しく、格好よく、成長するのだろう。


 私は再び、ゆっくりとカルロの頬を指で撫でた。


「私はね、たとえカルロが魔王になってしまっても、カルロの成したいことを応援するよ」


 思わずそんなことを言えば、カルロは驚いたようにその目を見開いた。

 私は自分が何を言ってしまったのかを理解して慌てる。


「ごめん。変なこと言って」


 魔王になるだなんて、言われて気持ちのいい言葉ではないはずだ。

 私は慌てて謝ったが、予想に反してカルロは嬉しそうに「本当ですか?」と笑った。


 カルロは頬に触れていた私の手を握り、そのまま私の手を自分の唇へと持っていった。


「本当に、僕が魔王になってもリヒト様は僕を軽蔑しませんか?」

「軽蔑なんてしないけど、魔王になるつもりがあるの?」


「そうですね」としばしカルロは考える。

 そこはできれば考えずに即否定して欲しかった。


「リヒト様を誰かに奪われたら、もしかすると魔王になってしまうかもしれません」


 やけに爽やかな笑顔が逆にカルロの本気を窺わせる。

 カルロはきっと、本当に、魔王になること自体には抵抗がないのだろう。


 間近に接近した端正な美しい顔に私の頬は自然と熱くなる。


「また、そんな冗談を……」


 きっと冗談ではないと思いながらも、私は恥ずかしさから逃れるように、カルロから顔を背けてしまった。

 そうして晒された首筋にカルロの息がかかる。


「冗談なんかじゃありません。僕は誰よりもリヒト様を愛していると自負しています」


 以前にキスをしてはいけないと言っておいたからだろうか?

 カルロは私の唇や頬を避けて、その顔を私の首筋に埋めた。

 カルロの息が首筋にかかってくすぐったい。


「僕はきっとリヒト様を奪われたら本当に魔王になってしまいます」


 カルロの長い腕が私の腰に回されてぎゅうっと抱きしめられる。

 キスをされた時よりもカルロの体が密着してきて、その息遣いを肌で感じて、ものすごく恥ずかしい。


「だから、リヒト様は僕以外の者を受け入れたらダメですよ?」


 いまだに私はカルロを婚約者として受け入れて良かったのか迷っている。

 そんな私の気持ちを見抜いた上で、カルロはこんなことを言っているのだろう。


 もちろん、後悔はしていない。

 でも、私の中身は52歳のおじさんだ。


 そんな自分がカルロの婚約者になってもいいのか……

 この先の未来、カルロと結婚をしてもいいのか……


 こんな私が、誰かに……

 最愛の推しに愛されて、幸せになってもいいのか、まだ迷っている。


 けれど、私はきっとカルロ以上に可愛いと思って大事にしたいと思える存在には出会わないだろう。

 だから、私は「ああ」と頷いた。






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