126 ナタリアの誕生日 03
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ナタリアの誕生日にはカルロだけを同伴させる予定だったのだが、パーティーが開かれる大広間には護衛が付き添えないだろうという話になり、ヘンリックも従者として同伴させるようにと両親、乳母、グレデン卿などの大人たちから説得され、渋々とヘンリックも連れて行くこととした。
できるだけヘンリックとナタリアが接点を持たないように気をつけなければならないだろう。
魔塔主にお願いして、私とグレデン卿、そしてヘンリックをルシエンテ帝国の城の私が以前使っていた部屋に転移させてもらった。
今回は私だけではないため、オーロ皇帝の執務室に直接転移するのは絶対にやめてほしいと繰り返しお願いしたため、きちんと部屋に転移してくれた。
部屋に到着してからまたメイドか誰かを捕まえる予定でいたのだが、部屋にはノアールが待っていてくれた。
「リヒト様、ようこそおいでくださいました」
「ノアール、二日間、お世話になります」
私はノアールにヘンリックを紹介した。
従者として紹介したのだが、ノアールはすぐにヘンリックが剣を扱えることを見抜いたようだった。
「パーティー会場にグレデン卿は入れませんからな」
相変わらず鋭い老執事に私は苦笑する。
「ヘンリック様の衣装もこちらでご用意いたします」
そう言ってくれたノアールに後からカルロも来ることを伝えると、カルロの衣装はすでに用意してくれていると教えてくれた。
衣装を試着し、サイズに問題がないことを確認の上、髪型や装飾品を決めていく。
そんなことをしている少しの合間、人がいなくなった隙をついてカルロが私の影から出てきた。
「リヒト様、お待たせいたしました」
微笑んだカルロはなんだか大人っぽくなっていた。
カルロは前と同様に私の部屋の中にある従者専用の部屋を使っていたが、第一補佐官の元で仕事を学んでいるカルロは忙しく、私もフェリックスの研究資料をまとめる手伝いに忙しかったため、最近は顔を合わせる時間が極端に減っていた。
席を外していた使用人たちが戻ってきてカルロの姿に少し驚いたようだったが、魔塔主をちらりと見てすぐに冷静にカルロの分の衣装や装飾品も準備し始めた。
ノアールだけはカルロの姿に驚きの表情を見せることもなく淡々としている。
成長の早い子供の衣装だというのに、私の衣装はピッタリに仕上がっていて直すところなどなかったが、カルロの衣装は少し手直しが必要だった。
それを不思議に思っていると、「リヒト様は先日、ネグロと会っていますから」とノアールが教えてくれた。
つまり、私の衣装はネグロの目算でより正確に作ることができたということだった。
「お久しぶりです。リヒト様」
衣装合わせが終わりノアールの案内で食堂へと向かうとナタリアがいた。
エトワール王国の後宮、両親の執務室が並ぶ一角でナタリアを叱って以来だ。
もちろん、その話を蒸し返したりはしない。
「お久しぶりですね。ナタリア様。お元気でしたか?」
「はい。お祖父様の元、平穏な日々を過ごしておりました」
チラリとナタリアがカルロに視線を向けた。
「カルロ様もお変わりないようですね」
「ナタリア様は少しお変わりになったようですね」
オーロ皇帝は二人が想い合っているというのは私の誤解だと言っていたけれど、やはり、二人はお互いを意識していると思う。
「変わらずに元気そうでなによりです」「以前より美しくなられましたね」なんて想い合っていなければ交わさない言葉だろう。
「ナタリア様、こちらは新たに私の従者となったヘンリックです」
少し緊張しながら私はナタリアにヘンリックを紹介したが、二人はよくある挨拶を交わしただけだった。
特に、お互い何かを意識したような様子はない。
「待たせたな」
オーロ皇帝が食堂に入ってくるとすぐに料理が運ばれてきた。
ルシエンテ帝国に滞在していた時同様にカルロは私の隣に座り、そして、私の従者としてヘンリックも席についた。
グレデン卿は護衛として私の後ろに立っている。
私がヘンリックを紹介すると、オーロ皇帝は意外そうな顔をした。
「リヒトがカルロ以外に従者をおくとは思わなかったな」
オーロ皇帝の後ろに控えていたネグロが、オーロ皇帝に何やら耳打ちした。
すると、オーロ皇帝のヘンリックを見る目が一気に変わった。
「其方、従騎士なのか?」
「はい」とヘンリックは短く明確な返事を返した。
「リヒトは魔法も得意だが、剣技もなかなかのものだ。リヒトに勝てとは言わないが、同程度の腕前でなければ護衛は務まらないぞ?」
ヘンリックは緊張に表情を固くしたが、その目には強い意志があった。
「はい。心得ております」
そのヘンリックの眼差しに機嫌をよくしたようで、オーロ皇帝はニィッと口角を上げた。
「いい目だな。明朝にでも手合わせをしてやろう」
オーロ皇帝の言葉に私は慌てた。
「明日はパーティーのある日でもありますし、そもそもヘンリックはまだ子供です! 剣豪であるオーロ皇帝の相手などさせられません」
誕生日パーティーに招かれたはずなのに、ヘンリックに怪我などさせてユスティーツ公爵家に帰すわけにはいかない。
私の慌てぶりが面白かったのか、オーロ皇帝の機嫌はますますよくなった。
「子供相手に怪我などさせぬ。それに、リヒトは6歳の頃に私の相手をしていたではないか?」
確かに、中身が52歳だからあまり気にしていなかったが、当時6歳の私に本気でなかったにしろそこそこの力で打ち込んできていたオーロ皇帝は大人気ないとも言える。
それに、今はオーロ皇帝は私の中身の年齢を知っているのだから、私とヘンリックを比べるのはおかしいだろう。
「リヒト様、私もぜひ、オーロ皇帝に稽古をつけていただきたいです!」
ヘンリックがそう言ったので、私は渋々と了承した。
続きはアルファポリスにて先行公開となります。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/135536470/135910722
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