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121 仲直り

お読みいただきありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけますと幸いです。


いいねやブックマーク、評価や感想等もありがとうございます。

皆様の応援で元気をもらっています。


誤字報告もありがとうございます。

とても助かっています。


 宴の準備を全力で止めた結果だろうか?

 晩餐がちょっといつもより豪華になっていた。

 

 晩餐の席にはユスティーツ公爵も招き、今回正式に従者 兼 従騎士になったヘンリックも同席した。

 オルニスとの交易についてきてくれたヘンリックへのお礼にユスティーツ公爵を晩餐に招いたのかと思ったのだが、まさかの私の幼少期からの自慢話が始まり、私は非常に居た堪れなくなった。


「リヒトは初めて図書館に赴いた際に、魔法書を手に取ると『まほーちょ』とタイトルを読み上げましたの」

「幼い頃から魔塔主が認めるほどの魔法の腕前で、魔塔主はリヒトの『この国を守ってほしい』という願いを叶えるために魔塔をエトワールに移したのだ」

「オーロ皇帝に呼ばれた時には驚きましたが、リヒトはこの国を守るために単身で帝国まで行きましたの」

「帝国傘下に加えてもらうための交渉もリヒトが進めてくれてだな……」

「リヒトはオーロ皇帝にまで気に入られて……」

「今回のオルニスとの交渉もな……」


 穴があったら入りたいとはこのことだ。


 7年間、隠されていた存在だったために親バカな両親は息子のことを臣下に話すことができず、その後2年間も城に籠っているふりをして周遊していたものだから、両親はあまり私のことを話すことができず、初めて信頼できる臣下を招いての晩餐となり、親バカ両親の親バカっぷりがここにきて暴走したようだ。


 ユスティーツ公爵とヘンリックが帰る際に両親のはしゃぎっぷりを謝罪すると、ユスティーツ公爵には「リヒト様の優秀さが知れて僥倖でした」と穏やかに微笑まれた。

 ヘンリックは始終楽しそうに両親の話を聞いていたし、なんなら自分から深掘りしていたので、彼にとって楽しい晩餐だったのならば何よりだ。




 ヘンリックとユスティーツ公爵を見送った後、私は早々に部屋に戻り、シュライグの手伝いで湯浴みをした。

 乳母の風魔法で髪を乾かしている途中でカルロが部屋に入ってきた。


「カルロ、こんな時間まで仕事だったのか?」


「はい」と頷いたカルロは少し躊躇ってから、勇気を振り絞るように言った。


「オルニス国ではリヒト様を不快な気持ちにさせてしまい、大変申し訳ございませんでした!」


 カルロは深々と頭を下げた。

 突然のカルロの謝罪に私は慌てる。


 もうカルロに対しての怒りや嫌悪感はないが、自分の中身が大人だというのにあの時冷静な対処が取れなかったという恥ずかしさがあり、私はその話題を出せずにいたのだ。

 けれど、私がカルロに謝らなければいけないと思っていたのに、先に謝らせてしまった。


「僕の言葉がリヒト様を不快にさせてしまったのだと、魔塔主にもヴィント侯爵にも教えてもらいました」

「カルロ、謝らなければいけないのは私の方だ。私がもっと大人として冷静に対応するべきだった!」


 華奢な細い肩に触れて頭を上げさせると、「あ、あの……」とカルロは上目遣いで私を見た。


「リヒト様、僕、リヒト様のお役に立てるように頑張りますので……まだ、お側にいることを許してくださいますか?」


「ああ。もちろんだ」と私は数日ぶりにカルロの頭を撫でた。

 サラサラの髪はやはり触り心地がいい。


「第一補佐官の元で学んでいる間も、従者の部屋を使ってもいいでしょうか?」

「もちろんだよ。ここはカルロの部屋なんだから」


 これまでは私の身の回りの世話をするために学んでいたカルロが第一補佐官の業務を学んでいると知って、私はまた一緒に旅をしようとは言い出しにくくなった。

 第一補佐官の元で学んでいるということは、将来の地位、安定した職業を約束されたようなものだ。


 宰相も第一補佐官も元々は父上の従者だった。

 カルロはヴィント侯爵の息子となったのだから、身分としても宰相や第一補佐官になる資格は十分にある。


 将来、カルロがナタリアのために住まいを帝国に移すのか、ナタリアがカルロに合わせてエトワールに住むのかはわからないが、どちらにしても王の補佐をすることができるということはカルロの大きなアドバンテージになるはずだ。




 私はその後、エラーレ王国に通うことになった。

 オルニス国への戦争準備をしている国に留まることよりはマシだが、しかし、通うのもどうだろうかとヘンリックは心配していたが、私としてはやはり不遇な状態にあるフェリックスが気になってしまった。

 全ての不遇な子供たちを救うことは叶わないが、目についたところに関しては大人として少しでも何かしたいと思ったのだ。


 フェリックスが語る空を飛ぶための理論もアイデアも面白かったし、彼は王宮図書から貴重な資料を持ってきてくれたからそれを一緒に見るのも楽しかった。


 この国の飛行技術の研究は確かに他の国よりも進んでいるようで、魔石を動力源として使い、機体を浮かせ、風属性の魔法使いが方向や速さを変えるそうだ。

 機体の中にいることによって魔法使いたちは風の影響をそれほど受けないために制御が容易になるという。

 しかし、彼らが目指しているのは魔法が使えない騎士たちでも操縦できるものということで、そこまではまだ難しいという。


「この研究が進めば、いつか平民でも空を飛べるようになるはずなんだ」


 フェリックスが瞳を輝かせて夢を語る。

 彼が求めるのは誰でも自由に空を飛べる世界だ。






続きはアルファポリスにて先行公開となります。

https://www.alphapolis.co.jp/novel/135536470/135910722


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