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【BL】 不憫な推しキャラを救おうとしただけなのに【幼児ブロマンス期→BL期 成長物語】  作者: はぴねこ
周遊編

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119 エラーレ王国 03

お読みいただきありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけますと幸いです。


いいねやブックマーク、評価や感想等もありがとうございます。

皆様の応援で元気をもらっています。


誤字報告もありがとうございます。

とても助かっています。


 やめておいた方がいいと、王子という立場の私が警告をする。

 いつ再会するかもわからない他国の王子と正式な訪問でもないのに深く関わるなど愚行だ。

 それなのに、前世の52歳の私はやっぱりできる限りきちんとした大人でありたいと思ってしまうのだ。


 特に、カルロに対してきちんと大人としての対応ができなかったことが、さらにそう思わせているような気がする。

 

「王子のところに……」


「泊まるのも楽しそうですね」なんて言いそうになった私の言葉を遮ったのは、意外にもヘンリックだった。


「リト! 他国に戦争を仕掛けるような話がある国の城に気軽に行ってはなりません!」


 そうだった。この国は、オルニスに戦争を仕掛けようとしていたのだ。

 たとえ、その話とこの王子が実際には無関係だったとしても、他国から見たら、冷遇されていても王子は王子なのだ。

 その王子と下手に親しくなれば、実際にこの国がオルニスを攻撃した時に、エトワール王国は避難を免れないだろう。


 エトワール王国はオルニスの味方だと、旗色はしっかりとしていなければいけない。


「オルニス侵攻は兄上と貴族たちが勝手に言っているだけのことで、俺にも国民にも関係のないことだ!」


 フェリックスがヘンリックに食ってかかった。


「実際に誰が言っていようと関係はありません! 国民があのように噂をするほどに話が広がっていると言うことは、この国の意向として他国では受け取られるでしょう。そのような国にリトを長く置くわけには行きません!」


 フェリックスとヘンリックが言い合う姿に、私は見覚えがあった。


 フェリックスとヘンリック……


「リックリック……」


 そこで、私の記憶の糸が繋がった。

 フェリックスも攻略対象だ!


『星鏡のレイラ』の舞台は魔法学園だ。

 通常、学生の年齢は12歳から15歳までで、学年は1年生から4年生までだ。

 ヒロインは3年生で、14歳だったはずだ。

 そして、攻略対象はヒロインから見て先輩が二人、後輩が一人、同学年の攻略対象がリヒト、カルロ、ライオスだったはずだ。


 フェリックスは攻略対象の中では一番年上だったが、留年してヘンリックと同学年になっていると、ゲーム開始初期の攻略対象の紹介で言っていた気がする。

 つまり、ゲームの中での彼の年齢は16歳で、ヒロインやリヒトとは2つ年上だった。

 留年してしまうほどのんびりした性格のフェリックスを、長男気質のヘンリックが面倒を見ており、二人は友人だった。


 おそらく、ヘンリックやフェリックスのルートに進めば、自ずともう片方のことも知れたのではないだろうか?

 カルロの攻略ルートしかプレイしていない私は、自力で二人の情報を得ることはできていない。

 この二人は名前の一部を取って、リック×リックというカップリングが腐女子の間では人気だった。

 間に×を入れて表現されることもあったが、×なしでリックリックともよくSNSなどで書かれていた。


「リト、リックリックとはなんですか?」


 耳元で囁くように言われたその声に驚いて振り返れば、魔塔主がいた。

 私は慌てて首を横に振った。


「なんでもありません!」

「前の記憶の話ということですか?」


 前の記憶というのは、前世のことを言っているのだろう。

 私は渋い顔をしてしまった。


「とりあえず、あの二人の喧嘩を止めた方がいいかもしれませんね」


 魔塔主の視線の先を見れば、ヘンリックとフェリックスはまだ喧嘩をしていた。

 そして、気づけば遠巻きに周囲に人だかりができていた。


 この国の王子様が口喧嘩とは言えど、平民に見えるはずの私たちと喧嘩をしていると勘違いされては面倒なことになるのではないかと思ったが、街の人々はにこやかに二人を見ていた。

 どうやら、相手は王子だが、微笑ましい子供同士の喧嘩だと思ってもらえているようだった。


 しかし、衆目を集めている中で末っ子設定の私が喧嘩の仲裁に入るというのもおかしいので、ここは年長者にお願いすることにした。


「シュライグ兄さん」


 シュライグに声をかければ、彼はその表情をぱぁっと嬉しそうに明るくした。

 この国に入る前に私のお忍びについてくることに慣れていないシュライグとヘンリックとはお互いに呼び方の練習をしたのだが、ヘンリックは私に呼ばれる度に少し照れ、シュライグはこのように表情を明るくするのだ。

 不自然なのでやめさせたいのだが、頑張って堪えてもらった結果、より一層不自然な表情になったのでそのままにしている。


「ヘンリック、やめなさい。みんなに見られているよ」


 シュライグは名前を呼ばれただけで私の意図を察してヘンリックに声をかけた。

 シュライグに言われて周辺の状況に気づいたヘンリックは恥ずかしそうにその顔を染めて口籠った。


 ヘンリックにだけ注意するシュライグを見て、私はシュライグに任せてよかったと思った。

 私なら平等に注意してしまっていただろう。

 しかし、フェリックスは王子だ。

 平民と同様に注意すれば、にこやかに見守っていた人々でも流石に不満を抱いたかもしれない。


「それじゃ、この喧嘩は俺の勝ちということでいいか?」


 冷遇されていても王子は王子。

 なかなかの図々しさだと思っていると、周囲に集まった街の者たちが笑った。


「フェリックス様、それは図々しいですよ」

「そうですよ。どんなことで喧嘩をしていたのかは知りませんが、それは図々しすぎます」

「フェリックス様は頑固なところがあるから、彼らを困らせたんじゃないですか?」

「せっかくできたお友達なんですから、わがままを言ってはダメですよ?」


 集まった街の大人たちから口々にそんな言葉を言われて、フェリックスは少し考える素振りを見せた。

 どうやら彼は国民に随分と慕われているようだ。


「うん。わかった」


 フェリックスが頷いた。

 これは、ヘンリックの意見を受け入れてくれたということだろうか?


「今日は諦めるから、明日は来い!」


 一旦は受け入れるものの、引く気はないようだ。







続きはアルファポリスにて先行公開となります。

https://www.alphapolis.co.jp/novel/135536470/135910722


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