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106 星鏡のレイラ 前編

お読みいただきありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけますと幸いです。


いいねやブックマーク、評価や感想等もありがとうございます。

皆様の応援で元気をもらっています。


誤字報告もありがとうございます。

とても助かっています。


 ドレック・ルーヴが部屋を出た後、私の隣に魔塔主、向かいの席にジムニが座って、私をじっと見つめてきた。


「なんですか? 今の奇妙な会話は」


 ジムニがものすごく不可思議なものを見るような眼差しを向けてくる。


「ここで聞いたことも、私が今から話すことも内緒にしてください」

「わかってますよ」

「ゲーツにも内緒ですよ?」

「そう言われてきました」


 ジムニの言葉に私は驚いた。


「リヒト様が内緒にしたいことを自分に報告する必要はないって言っていましたよ」

「……そうですか」


 私が魔塔主だけを同行させたがっていたことをゲーツは知っていたから、それだけ知られたくない秘密があるのだということは察してくれていたのだろう。


「先ほどの彼との会話からすると、リヒト様には生まれる前の記憶があるということですか?」

「魔塔主は飲み込みが早いですね」


 魔塔主のこうした頭の良さは羨ましい。

 ジムニも頭の回転が早い方だが、流石に非現実的なことをすぐに受け入れられるようにはできていないのだろう。

 驚きに固まっている。


「私には前世の記憶があります。そして、ドレック・ルーヴにも言いませんでしたが、彼は自分がドレック・ルーヴに憑依したと言っていましたが、私はおそらく転生しています」

「先ほどの者はあの商人の中に急に入り込んだが、リヒト様は生まれながらにしてリヒト様ということですね?」

「私が自分を認識したのは赤ん坊の頃で、その前に他の者だったということはないと思いますし、万が一、他の魂を押し除けて入ってしまったのだとしても、赤子の頃からこれまで私だったのですから、これを一時的な憑依であるとは言えないと思います」


 魔塔主が納得顔でうんうんと頷いているのに対して、ジムニはまだ話についてこれないようでぽかんっとしたままだ。


「前世の記憶は何歳頃までなのですか?」

「前世では52歳で死にましたから、それまでの記憶があります。ただ、死んだ原因だけが思い出せないのですが」

「なるほど。それで、随分と大人びたおかしな子供だったわけですね」


 ジムニはまだ口を開けて愕然とした状態で話を聞いている。

 いや、もはや話など聞いていないのかもしれない。


「それで、その前世の世界でもあの従者君やこの情報ギルドのことを知っていたのですか?」


 とりあえずジムニのことは放っておくことにして、私は魔塔主に乙女ゲームの説明をした。

 絵を映し出す魔導具があり、自分の選択によって登場人物の運命が変わっていくのだと説明したが、うまく伝えられたかどうかは怪しい。


 それでも、魔塔主は口を挟まずに聞いてくれ、私がそのゲームによってカルロやナタリアのことを知っていたのだという話を受け入れてくれた。

 そして、「なるほど」と深く頷いた。


「それで、リヒト様はまだ小さな頃から魔法があのように巧みに使えたのですね!!」

「……まぁ、そうですね」


 魔塔主が興味があるのは魔法の研究だ。

 リヒトであれ、カルロであれ、一個人の運命になど興味はないようだった。


「そのゲームで見た面白い魔法はなかったのですか?」

「ゲームでは一人一属性しか扱えないという設定になっていたので、シンプルな魔法しか使えませんでした。ですから、魔塔主が興味を持つような魔法はないですよ」

「それは残念です……」

「ここがゲームの世界だなんて話をしたら頭がおかしいと思われるか、怒ると思っていました」


 少なくとも不快感を表すだろうと思っていた。

 誰だって、あなたの世界は物語の世界であって現実ではないとは言われたくないだろう。


 もちろん、私自身がこの世界に生まれて成長しているわけだから、現実ではないとは思っていない。

 他の世界から見た時にこの世界が作り物であっても、この世界の中では紛れもなく現実なのだ。


「リヒト様が前世で見たこの世界と実際のこの世界では登場人物は同じでも詳細が違いますよね。魔力属性が一人ひとつしか持てなかったり、そのためにシンプルな魔法しか使えなかったり、実際にはさまざまな種類のあるダンジョンも洞窟という一種類だったのですよね? そこに出てくる魔物の種類も」


 私は理解の早い魔塔主の確認の言葉に頷く。


「さらに、学園がどこにあるのかはっきりと示されてはおらず、ゲーム内で目標になっていた『星鏡のレイラ』という神獣も一作目では見つけることができずに、二作目に続くというようになっていたのでしょう?」

「はい」


『星鏡のレイラ』が、腐女子や腐男子には人気だった割には、一般的なプレイヤーには不人気だったのはそのせいだ。

 タイトルにもなるほどに重要な存在である神獣がエンディングを迎えても結局出てこないのだ。

 そして、その正体は続編へ続くとなっている。


「まるで、この世界の一部分だけを切り取って作られた物語のようです」

「確かに……あのゲームは、この世界をモデルにして作られたものだということですか?」


 もしかすると、私とは逆に、前世この世界に生きていた者が死んで、向こうの世界に転生したのかもしれない。

 そんなふうに考えもしたが、しかし、どうやら魔塔主が言いたかったのはそういうことではないようだ。

 

「私は『星鏡のレイラ』を知っているのです」


 思わぬ魔塔主の言葉に、私はまるでジムニのような表情をしてしまった。






続きはアルファポリスにて先行公開となります。


https://www.alphapolis.co.jp/novel/135536470/135910722

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