101 調査 02
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私の話を聞いた魔塔主は少し考えてから、一瞬その姿を消した。
どこかに転移してすぐに戻ってきたのだ。
魔導具を抱えて。
「魔塔の魔法使いだけの秘密の道具なのですが、特別にこれを使いましょう」
「いいのですか?」
「はい。その代わり、秘密にしてください」
「それはもちろんです!」
私はカルロとグレデン卿にも目配せをする。
二人はしっかりと頷いてくれた。
「それで、それは一体どういう魔導具なのですか?」
「魔力量を測る魔導具です」
まさに今回の調査に欲しかった魔導具である。
「そのような魔導具があったのですね!?」
「魔塔の研究者には必要なものですから。しかし、このような魔導具があると知られれば、自身の魔力量や土地の魔力量、幼い子供の魔力量などを測ってくれという面倒な依頼が増えるでしょうから秘密にしているのです」
「なるほど」と頷いた。
前もって魔力量を測ることができるのならば、それで子供の選別をする親も出てくるだろう。
絶対に他の者には漏らさないと私は改めて約束した。
魔塔の魔導具を使っての調査の結果、エトワール王国の土壌の魔力量が周囲の土地よりも高いことがわかった。
特に、乳母が管理している元ルーヴ伯爵領、現ヴィント侯爵領の魔力量が非常に高く、領地の中でもヴェアトブラウの土が異常なレベルで高かった。
もともと、ヴェアトブラウが咲いている土壌の魔力量が高いというのは予想できていた。
鉢植えにしてもすぐに枯れないようにするために魔石を入れるくらいだ。
あの花は高濃度の魔力がある場所でなければ咲かないのだろう。
第一補佐官を巻き込んで記録を録ってもらったのだが、地図上に魔力量の数値を書き込んでいったものを見ると、ヴェアトブラウの花畑を中心に、外側に行くにつれて徐々に魔力量が減っているようだ。
「なぜ、この場所はこれほど魔力量が高いのでしょうか?」
「原因を調べるために掘り起こしてみましょう」
気軽にそのように言った魔塔主に私とカルロは驚き、魔塔主の顔を凝視した。
「待ってください。掘り起こした結果、その後に花が咲かなくなっては困ります」
そんなことになったらカルロが悲しむ。
「今はちょうど花が咲かない時期ですので、種を拾ってまた植えれば大丈夫でしょう」
ヴェアトブラウは春から秋の終わりまで咲く花で、寒くなってくると急いで次の花の準備をするように花弁を落として種を地面に落とすのだ。
そんなヴェアトブラウの地面を掘るなら冬の今だろうと魔塔主に言われて、確かにその通りではあると思うのだが、カルロが大切にしている花が咲く場所を掘り起こすというのはやはりちょっと抵抗がある。
「従者君、この場所の魔力が豊富な理由がわかれば、ヴェアトブラウの花畑をもっと広大なものとすることができるかもしれませんよ」
「やりましょう!」
魔塔主の言葉にあっさりと惑わされたカルロがやる気を出した。
私はヴェアトブラウの研究者と、今や研究者の助手をやってくれている帝都の花屋の協力を得て、ヴェアトブラウの種を回収後、魔法で土を掘り起こした。
土を掘り起こす際にも正確な記録を取ってもらうために第一補佐官に立ち合いをお願いした。
私が大々的に魔法を使うところはあまり見られたくないので、魔塔主に外から見ることのできない不可視の障壁を作ってもらった。
そうして、掘り起こした土の下には、驚くべきものが埋まっていた。
意識を集中させて魔力の強い塊があるところまで深く掘ったのだが、そこには、巨大なドラゴンの骨と、骨の真ん中辺りにこれまた巨大な魔石があった。
それを確認した私はカルロにお願いして骨の周辺の土を少しだけ採取してもらうとすぐに土をドラゴンの骨の上に戻した。
これほどまで深く掘るのは人力では何日もかかるだろうから、この骨が見つかることはそうそう無いだろう。
第一補佐官は唖然としていたが、それでも手を動かして記録を取っていたのはさすがだ。
「リヒト様! 今のドラゴンの魔石を魔塔にください!」
「魔塔主、調査の協力には感謝しますが、どう考えてもあの魔石がヴェアトブラウを咲かしているのでしょうから、魔塔に魔石を渡すことはできません」
「リヒト様と従者君がひびを入れた魔石の代わりにちょうどよかったのですが……」
痛いところを突かれて、私の呼吸はうぐっと一瞬止まった。
「リヒト様の花が咲かなくなるなんて絶対にダメです!」
カルロがちょっと涙目だ。
魔塔の魔石の代わりなんて私には用意できないのだから、なんとか魔塔主には諦めてもらうしかない。
「リヒト様の花ですか?」
「ヴェアトブラウはリヒト様の瞳の色にそっくりなんです!」
私はどのように魔塔主を説得しようかと考えていたのだが、魔塔主は「それなら仕方ないですね」とあっさりと諦めてくれた。
私は説得の言葉を考えるのに忙しくて魔塔主とカルロの会話をよく聞いていなかったのだが、カルロが説得してくれたということだろうか?
とにかく、カルロのお気に入りの花が守られてよかった。
土を戻すと、そこにまたヴェアトブラウの種を戻した。
どうか、春にはまた無事に咲いてほしい。
エトワール王国の土地に含まれる魔力が他の国よりも高いのはおそらくあのドラゴンの魔石や骨のためだろうという結論に至ったわけだが、私としてはドラゴンそのものを見ることができなくて残念だった。
魔力量の高さの原因がわかり、私はヴィント侯爵領の農地を広げてはどうかと乳母と相談した。
「わたくしはあの土地の管理を任されているに過ぎません。エトワール王国は国王のものであり、将来的にはリヒト様のものですから、どうぞご自由にお使いください」
正直、乳母のこの回答は無責任なような気はしたが、乳母は私の両親と同じく、親バカというか、乳母バカというか、とにかく私のためのならば他のことは二の次の部分があるためにこの回答になったのだと思えば怒る気にもなれず、私は乳母の言葉に甘えることにした。
「それでは、乳母の言葉に甘えて、あの土地は私とカルロの学びの場にさせていただきます」
次に両親に相談して、元ティニ公国側の領地も農地改革をすることにした。
ヴェアトブラウを盗んだ村のあたりもドラゴンの魔力の影響を受けているはずだ。
「いっそのこと、元ティニ公国をリヒトの学び場として、リヒト領としてしまおうか?」
「それはいいわね! リヒトが大人になって国政を担わなければならくなった際には他の者に領地を譲ればいいのですから」
親バカ両親がたった7歳の子供に元一国の国土だった広さの領地を渡そうとしている。
正直、私は親バカ両親の親バカっぷりに呆れたが、密かに元ティニ公国の領土に魔法学園を建てて、学園都市にしてしまおうかと考えていたため、私はありがたく親バカ両親の提案を受け入れることにした。
続きはアルファポリスにて先行公開となります。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/135536470/135910722
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