ランドセルを絶対にプレゼントしたい姑VS絶対に自分で選びたい奥様
「あのね……ヒロト君のランドセルなんだけど。
私の知り合いの職人にお願いしようと思うの。
もう見積もしてもらったのよ」
さっとパンフレットを差し出す姑のみよ子。
テーブルを挟んで向かいに座る嫁のミクは口端をヒクヒクさせる。
「おおっと!
いきなり先手を打ってきました!」
実況の山口が言う。
「特注のランドセルはキツイですねぇ。
絶対に回避したいところでしょう。
どう反撃するか見ものです」
解説の田中が言う。
「お義母さん、折角ですけど。
ヒロトのランドセルはイウォーンで買うことにしました。
色も沢山の種類があって好きなものを選べるんです」
言葉を振り絞るように言うミク。
援護を期待してちらりと隣にいる旦那のタイチに目を向けるが、彼は腕組みをしたまま黙っている。
「あーっと! タイチが動かない!
ミクさんは厳しい戦いになりそうだぁ!
援護できないのは何か理由があるのかぁ⁉」
「昔持っていたエロ本をネタに脅されたようです。
息子の性癖なんてお見通しですからねぇ」
みよ子は差し出した見積書をさっと開く。
「量産型よりもオーダーメイドの方がずっといいわ。
ほら、ここを見て。
オプションでサイドポケットを付けられるの。
全部で20個まで増設が可能よ」
「そんなに沢山いらな――
「ああ、それと。
防犯ブザーを取り付けるホルダーに、
タブレット収納ケースもついてるの。
とってもお得なのよ」
にっこりとほほ笑むみよ子。
「完全にミクさんが押されています!
このまま勝負が決まってしまうのかー⁉」
「なにか決め手がないと厳しいですねー」
そこへ颯爽と現れるヒロト君!
話し合いをしている三人に向かって笑顔でこう告げた。
「僕ね! おじいちゃんからもらったカバンで学校に行くの!」
そう言って背中に背負った古い鞄を見せるヒロト。
古い鞄を見て、三人は言葉を失う。
「なんてことだー!
意外なところに伏兵が潜んでいたー!」
「おじいちゃんのナオフミさんは、
ずっと前からこのネタを仕込んでいたようですね。
ヒロト君の幼稚園の送り迎えを進んで引き受けたり、
両親が忙しい時は代わりに面倒をみたり、
少しずつ彼との関係を深めていたようです」
「策士ですねぇ!」
こうして意外な形で幕を閉じたランドセルを巡る戦い。
しかし戦いが終わったわけではない。
「次回は中学の学生服!
いったいどんな戦いが待っているのか!」
「これは見逃せませんね!
それではみなさん、ごきげんよう!」
T R K 終わり
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