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残したい物語  作者: min
7/13

1-2.遭難者 (4)

背中を見られてしまった!

この人も私をとらえて、売り飛ばすか見世物にでもしようとするかもしれない!


ここまでの長い道のり、ひどい目にあってきた。

逃げないようにと羽を、ハサミで切り落されたときは、気を失うほどの痛みだった。

矢傷を負い化膿していた、もう一方も切られそうになったところで、目いっぱいの力を出して逃げ出した。満足な手当てもできないままで、道中しょっちゅう傷んだ。


ねぇやに渡されたかばんの中には地図も入っていた。

その地図と、送られたイメージを頼りに、ひたすら西を目指してここまできたのに。


「羽」はしっかりとみられてしまったに違いない、

ごまかせるのか? ごまかせるわけない!“

ミークは、この後どうされるか怖くて、ますます身を縮めた。


この人に連れていかれたら、自分の旅の目的は果たせない。もしうまく逃れられたとしても、大きく時間を無駄にすることになるだろう、と思った。


過酷な旅を続け、体力が十分ではない今の身では、うまく逃げ出せるかもわからない。


これから自分がどうなるか怖くて、ますます身を縮めた。


しばらくして、アレンは羽のことには一切触れず、

「まずは、こちらの傷の手当てをしよう」とささやくような声で言った。



見たところ、左側の裂傷は、満足な手当てもできていなかったらしく、ジクジクと血がまだしみだしているような状態だった。

そこに生えていたであろう羽は完全に切り取られてしまっているようだ。



「これは最近の傷か?」 アレンが問いかけると、

「砂漠を渡る前」と答えた。


傷口の具合を確かめようと、そっと触れると、自分とは違う柔らかで滑らかな白い肌に気が付いた。明らかに男のものとは違う骨や肉の付き方だった。


細く痩せた肩が小刻みに震えている。


「……お まえ‥‥、まさか、女か?……」


アレンは絶句してしまった。


目の前の子供はさらに身を縮こませて、小刻みに震えている。


アレンは慌ててミークの服を元に戻した。


よくもまぁ、女が! 子供が! 一人で! このデュマンデ砂漠を超えてきたもんだ!


アレンは思った。


「……悪かった‥‥」


自分の肩掛けを外し、ミークの右肩へとかけてやる。


「こちらの傷だけ、手当させてくれ。……後は何もしない。」


左の傷だけ見えるように合せをずらし、軟膏を塗ってやる。

その後で清潔な綿布を当ててやり、貴重なテープで固定してやった。


ミークは、そのテープに驚いた。

皮膚に直接固定できるものなど、今まで出会ったことがなかった。

何を貼られたのか不思議に思って振り向くと、


アレンは眉を上げ、

「前時代の技術だ。うちの部族では、こういったものがあるんだ。絶対他に漏らすなよ。」といった。うなずきながら前をむく。


やがて処置が終わり、アレンは言った。


「夕方には、交替の者が来てくれる。

 そしたら‥一緒に来てもらう。」


それだけ言って、その場から立ち去った。


今回はひとまずここまで、続きは来週以降です。

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