【第4話】魔物と魔法
50m程進んだところに小川があった。着替えはない。
アリサ後輩の服を剥ごうとしたら、即「キャアアアアアアアア!!」と馬鹿でかい悲鳴をあげられた。馬鹿野郎!!だれか来たらどうすんだ!!
水につかろうとしてふと気がついた。今は初夏のはずなのに、ここはひんやりと肌寒い。ひょっとすると季節が異なるほど遠くに飛ばされているのかもしれない。
気おくれしながらも全裸になり、水に身体をつけ、じゃぶじゃぶ洗っていく。
くーーーー作戦後の水浴びはマジで気持ちいぜ。くそ寒いけどな。
いっしょに隊服もじゃぶじゃぶ洗うが血の痕は落ちが悪い。アリサ後輩よ、この借りはでかいぞ。
しかし、きれいな小川だ。下流の水が血と泥で汚れていくのがよくわかる。下流で取水している人がいたら申し訳ない。怒られる前に洗い終えたい。
すると、下流の茂みからガサガサと音がした。
「嘘だろ?怒りに来るのが早すぎないか?」
まあ、この水を飲まされたら腹を下すだけではすまなそうだから、事情を話して謝ろう。
「グルルルルルル」しかし、茂みから姿をあらわしたのは二頭の狼であった。
「血の匂いに誘われたのか!」俺は慌てて|属性銃≪カラーガン≫に手を伸ばした。アサルトライフルは置いてきた。
「あーもう!|属性弾≪カラーバレット≫は高いんだぞ!」全裸に|属性銃≪カラーガン≫を構える。しかし、狼の様子がおかしい。
目も覚めるような銀色の毛並み。これはまあ分かる。
だが「この狼、バカでかいぞ!」
明らかに普通の狼の4倍はある。これじゃ化物だ!
「くそ、アリサを呼ぶか?」しかし、この状態ではアリサが味方になるか分からない。
奴なら狼より全裸の俺に銃を向ける気がする。
二頭の内一頭が素早く俺に向かって突進してきた。アリサを呼んでも間に合いそうもない。
俺は|属性銃≪カラーガン≫を狼に向け、息をはきながら引き金を引いた。幸い生き物相手なら俺の持っている|電撃弾≪イエローバレット≫は効果が高いはずだ。
「バリバリバリッ」狼の胴体にヒットする。「ギャワ!!!」
雷のような音ともに狼が断末魔をあげ、体を焦がしながら息絶えた。
|電撃弾≪イエローバレット≫は電撃が付与された銃弾だ。帝国の科学力により実現した属性弾の中でも屈指の威力を誇る。
「ギャオッ!!」仲間を殺されたもう一頭が突進してきた。
「クソッ」属性銃はバカでかいハンドガンのような形だ。連射が効かない。
慌てて次弾を装填しようとするが、狼の牙がすぐ目の前まで迫っている。
「ヤバイ間に合わなっ「ウィンド・カッター!!」
「キャン!!」側面から飛んできた風の刃に狼が吹き飛ばされる。なんだ今の!?
「ご無事ですか!」刃が飛んできた方向から、白い服に身を包んだ女性が姿をあらわした。
手には装飾のされた大きな杖を持っており、いわゆる「魔法使い」って感じの外見だ。
「ありがとう、助かっ「いえ!まだです!!」
「|銀の大狼≪シルバーウルフ≫は風魔法に耐性があります。詠唱破棄のウィンド・カッター程度では…」
「大丈夫、十分だ」俺は装填の終わった属性銃を構え、起き上がろうとする狼に向けて引き金を引いた。
再び雷のような音がとどろき、もう一頭の狼も息絶えた。
「い、今のはサンダー・ボルト?しかし見たことのない杖で…」白衣の女性が俺をまじまじと見る。
「ありがとうございました。助かりま「キャアアアアアアアア!!!」
そーいや俺は全裸だったな。