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魔女の悪戯  作者: AЯ!SΔ
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部活

五限目の授業の始まりを知らせるチャイムが鳴ったが、2人はまだ抱き合っている体制のままだった。


「あ、そうだ」と柊が何かを思い出し、名残惜しそうに離れると、何か企みのありそうな顔で笑いながら言ってきた。


「僕、芹の近く(・・・・)に住むことになったから、今日から一緒に帰ろうよ」

「そうなの?別にいいけど…って、あ!今日部活ある日だった」

「そっか…」


柊は俯き、少し悲しそうな顔をして言った。


そんな柊の顔を覗き込んで「ごめんね」と謝った。

柊は思わず顔を赤くして横を向いてしまった。


「本当にごめんね」

「あ、違うんだ。芹の顔が近かったから、その…。とにかく!部活が終わるまで待ってるから!というより部活見学行きたい!」


まだ少し頬を赤らめながら早口で言うと、芹は数回目を瞬かせた。


「でも…いいの?」

「芹1人で帰らせるのって不安だし、こんな格好だけどさ、一応男なんだよ?僕」

「じゃあ、一緒に部活行こ」

「うん!」


嬉しそうに無邪気に笑う柊を見て、自然と笑顔になるのが分かる。


ーやっぱり柊は柊のままだー


昔と今の変わらない笑顔を見ると、何だか昔に戻ったように思えた。



結局午後の授業はサボってしまい、今まで会えなかった時間を埋めるように話をしていた。


気が付くと六限目の終わりを告げるチャイムが鳴り、放課後になってしまっていた。


「このまま部活に行っちゃおっか。でも初日から遅く帰って柊の家族は心配しないの?」

「あー…大丈夫」


歯切れの悪い返事をすると、芹は首を傾げた。


「そうなの?」

「うん、大丈夫。それに芹と一緒に帰るって言ったら逆に感謝されちゃうかも」


悪戯っ子のような笑みで話していると、1人の男が間に入り込んできた。


「芹、早く行かないと部長に遅れちゃうぞ」

「あ、棗くん」

「あれ?隣の子って噂の転入生?芹の友達?」

「うん。幼馴染なの。それに部活見学したいんだって」

「そうなのか。じゃあ転入生ちゃんも一緒に行こうぜ」


そういうと足早に歩いていく。


「棗くん、待ってよ!」と柊の手を握り、慌てて後を追いかけて行く。


棗くんと言われた男の子は同じ1年生で、弓道部に所属している須佐野棗(すさのなつめ)

誰とでも仲良く、文武両道で顔も整っているので、女の子達からは人気だ。

弓道部の期待のエースとも言われている。



弓道場に着くと弓道着に着替えた先輩や同級生がいた。

人数は50人程だろうか。


弓道着に着替えた玲佳もいた。


「あ、芹と転入生ちゃん。午後の授業サボって何してたの?」

「ごめんね、玲佳。幼馴染の柊に会えて嬉しくてずっと喋っちゃった」

「幼馴染…?あれ?芹の幼馴染って…」

「あー!あー!あー!あのね!後で話してもいいかな!?」


慌てて玲佳の口を押さえる。

玲佳は不思議そうな顔をしながらもこくんと頷いた。


「とりあえず今は部活部活!柊を先輩に紹介してから私も着替えて来るね!」


芹は柊の手を握ると部長である先輩の所に言って、見学をしたいという話をした。


快く快諾してもらえると、そのまま柊は先輩の所で話をしてもらっている間に芹はジャージへと着替えた。

選手じゃなくマネージャーなので、芹の格好はジャージが部活着となっている。


慌てて着替えて出ると、柊を紹介をするのか集まっていた。


後ろの方に並んで人と人の間の隙間から覗くと、柊もこちらを見付けてくれたのが目が合った。

柊がニコリと微笑むとその方向にいた人達は頬を染めるものや小さく黄色い悲鳴を上げるものや様々な人がいた。


「冬月柊です。今日は見学で見に来ました」

「冬月は弓道はやった事はあるか?」

「軽くなら…」

「1回やってみてくれる?」


そういうと部長は練習用の弓矢を渡してきた。


受け取り射位に立つと、柊の雰囲気が変わった。

真ん中を射抜くような目線をし構えると、自然と周りの音が無くなったように感じた。


全員固唾を飲むように見ると、静かに弓矢を引いた。


ーバチンッー


柊が引いた矢は的の真ん中に刺さっていた。


「久しぶりにやったけど……真ん中当たってよかったー」


さも当然に言う柊に部長は目を輝かせてこちらを見ている。


「冬月…ぜひ弓道部にはいってくれ!」

「え…と…」


肩をガシッと掴まれながら興奮したように迫られ、柊は困った顔で目を泳がせている。


「僕、選手じゃなくてマネージャーになりたくて…」

「何だって!!君みたいな選手、マネージャーなんて勿体無い!!」


メラメラとした目で見ながら「逃すものか」と言う感情がヒシヒシと伝わってくる。


「部長、その辺で…冬月さん困ってますよ」


困り果てた柊に救世主が現れた。


「だが…須佐野もいいライバルになるんじゃないか!?」

「本人が乗り気じゃ無かったら無理に入れるのはダメですよ。やりたいって言ったら入ってもらえばいいじゃないですか、ね?」

「うむ………そう、だな……。すまない、冬月」

「あ、いえ…」


苦笑しながらお辞儀をして芹の元へと走っていった。


「柊、すごいね!弓道出来たんだね!」


興奮したようにいう芹の頭を撫でながら「少しだけね」と言った。


「僕もマネージャーになるね。少しでも芹と一緒に居たいし…」


最後の言葉は小さかったので聞こえなかったが、柊と一緒にマネージャーとして一緒に居れるのが嬉しくなったのか満面の笑みになった。


3人居るマネージャーに1人増え、この日はマネージャー同士和気あいあいとして部活の時間は過ぎて行った。

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