表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放聖女と元英雄のはぐれ旅 ~国、家族、仲間、全てを失った二人はどこへ行く?~  作者: 日之影ソラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/50

43.リクレスト山脈

 ソラニンの街から山を見上げる。

 大きな雲がかかっている時は、吹雪が起きているそうだ。

 私たちが滞在してから五日間、山は吹雪が続いていた。

 だけど今日は――


「雲が晴れているね」

「うん」


 山の天辺まで見えそうだ。

 街は雪も降っておらず、久しぶりの晴天。

 民家では洗濯物を外に干したりと、普段より忙しそうに思える。


 ユーレアスが言う。


「さっそく出発の準備しようか」

「そうだね」


 滞在している間、私はお菓子作りを頑張っていた。

 ユーレアスはというと、テトラのお母さんの手伝いをしたり、登山に向けて必要な物を揃えたりしていたそうだ。

 彼のお陰で準備はほとんど終わっている。

 寒さにも負けない素材で作られた服を着て、遭難した場合の備えもバッチリだ。


「さぁ英気も十分養ったし、早々に出発しようか」

「英気って、大げさだなぁ」


 私たちは朝の七時に街を出発した。

 山の天気はいつ変わるかわからない。

 良いうちに、なるべく早く雲を超えてしまいたいとユーレアスは言っていた。

 とはいっても、徒歩では頂上までかなりの時間がかかる。

 そこで彼が用意したのは、雪山専用の乗り物――ではなく、青い炎を纏った狼のウルだった。


「ウル、行ける所までよろしく頼むよ」

「了解した。が、久方ぶりに呼び出されたと思えば……登山とは呆れたぞ」

「はっはっはっ、すまないね」


 見ての通り、ユーレアスは悪いと思っていない様子。

 ウルはさらに呆れてため息を漏らす。

 彼の背に乗った私たちは、快適に山道を登っていく。

 

「何だかズルしてるみたいで気が引けるな」

「そうでもないさ。ちゃんと自分の力を活用して登っているわけだからね」

「大変なのは我だぞ」

「ごめんね、ウル」

「ノアが謝る必要はない。悪いのは主だ」

「おっと、ウルも最近は言うようになったね。成長しているようで嬉しいよ」


 皮肉たっぷりのセリフは相変わらず。

 ウルもわかっているから、一々相手にしていない。

 この二人はいつもこうだ。

 私と出会う前から、一緒に旅をしている間柄で、遠慮もなくなっているのだろう。

 少し羨ましく思えるけど、口にはしない。


「快適快適。このペースだと、昼過ぎには頂上まで行けそうだね」

「そう簡単に行くと思えんな」

「ほうほう、何か根拠でもあるのかい? ウル」

「主の旅は、順調な時ほどしっぺ返しがあるからな」


 いわゆるこれまでの経験という奴か。

 確かに、私も思い返すとそういう場面は多かった気がする。

 危険だから注意しろーっと思っている時は何も起こらなくて、絶対大丈夫が絶対じゃないんだ。


 今回も……


「そういうパターンであったな」

「ウル、なぜ僕を見て言うんだ?」


 さっきまで晴れていた空を、今は暗い雲が覆っている。

 雪もチラついている。

 まだ本格的に降ってきてはいないけど、そのうちに吹雪いてきそうだ。


「主よ、早めに避難することを勧める」

「そうだね。近くに洞窟とかないかな?」

「さてな。ないなら掘れば問題ない」

「確かに! ウルは良いことを言うね」


 そう言って、ユーレアスは徐に炎を生み出す。

 何をするつもりなのか、私はすぐに察してかがんだ。


「そーれぇ!」


 爆発音が鳴り響く。

 吹きあがった雪が周囲へ降り注ぐ中、ぽっかりと斜めに空いた穴が見える。


「よーし! 後は上手く加工して、吹雪に備えますか」

「ユーレアス……やるなら先に言ってほしかったな」

「ノアよ、主にはその辺りの気配りは無理だ」


 ウルが言うのだから間違いなさそうだ。

 私たちはユーレアスが掘った穴へ入り、その数分後に吹雪が襲う。


「本当に変わりやすいんだね。山の天気って」

「仕方ないさ。明日まで待って変化がなければ、最悪強行突破も考えないといけないかな」

「強行突破? 下山じゃ駄目なの?」

「うん。明日には登りたいんだ」


 ユーレアスが穴の外を見つめてそう言った。

 彼が危険を冒そうとするなんて珍しい。

 やっぱり山頂には、私が知らない何かがあるのかもしれない。

 とは言え、今日は吹雪も強まるばかりだ。

 さすがに進めなさそうだと断念して、穴で夜を過ごすことに。


「ユーレアスが寝てる」

「主も睡眠はとるだろう」

「そうじゃなくて、普段は一番に眠ったりしないから」


 ウルと一緒だからかな。

 私と二人だけの時は、朝まで眠らないときもあるのに。


「信頼されているんだね、ウルは」

「ノアもであろう?」

「私はまだまだ足りないよ」

「そうでもない。主はノアと出会ってから、特に楽しそうだ」

「本当?」

「ああ。長年共に行動している我が言うのだ」

「そっかぁ……」


 そういえば、ウルと二人で話すのも久しぶりだ。

 フカフカの毛並みは相変わらず気持ち良い。


「主は手強いであろう?」

「うん、鈍感だから」

「だな。頑張ることだ」

「うん」


 ウルは私の想いを知っている。

 時々こうして相談にのってもらっていたことを思い出す。

 ユーレアスと似ている所為かな。

 彼にもたれ掛かっていると、すごく安心するんだ。


「ありがとう、ウル」

「礼を言われることはしていない」


 そうしていつの間にか、私も眠りについていた。

ブクマ、評価はモチベーション維持につながります。

少しでも面白いと思ったら、現時点でも良いので評価を頂けると嬉しいです。


☆☆☆☆☆⇒★★★★★


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ