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31.冒険者のお仕事

 光瞬く光の都で、ユーレアスが語る過去。

 私は魅入って、聞き入っていた。

 どこまで聞いていただろうか。

 眠かったわけじゃないのに、いつの間にか意識が沈んでしまっていた。

 何だろう?

 大事なことを聞きそびれてしまった気がする。


 でも、その代わりに夢を見た。


 ユーレアスと過ごした青い春。

 私の記憶じゃない。

 誰かの瞳を通して、彼との幸せな時間が過ごせた。

 それも唐突に終わってしまったけれど、私は……いいや、その人は満足している。

 

「ぅ……」

「おや? ようやく起きたかな?」


 目が覚めた時、私は馬車の中にいた。

 ゆっくり進む馬車の振動と、トンネルを抜けて差し込む日差しで刺激されたようだ。

 すっかり夜も過ぎ、廃都を出ている。

 どれだけ長い時間眠っていたのだろうか。


「ユーレアス、ただいま……?」

「ん、どうしたんだい? 目覚めの挨拶なら普通、おはようだと思うけど」

「なんでかな。こっちのほうが良いような気がしたんだ」


 昨日の夜に見た夢の所為かな。

 また会えたっていう感じがすごくあって、口が勝手に動いてしまった。

 私自身、あまり深く考えて出た言葉じゃない。

 そんな私を見つめながら、ユーレアスは微笑む。


「ははっははは。君って奴は本当に変わらないな」

「そう?」

「うん。だから、ありがとう」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 自由都市アルフレート。

 別名『冒険者の街』と呼ばれるこの都市は、二百年ほど前は小さな集落だった。

 冒険者の休憩所として使われていた集落は、やがて多くの冒険者が住まうようになり、いつしか巨大な都市として発展したそうだ。

 一応はイースタル王国の領土内だが、王国からの支援を受けておらず、独自の法で管理されている。

 故に自由都市。


「この街は冒険者が自由に生き、好き勝手に暮らせる場所なんだよ」

「詳しいんだね」

「もちろんさ。何度か訪れている街だからねって、君も何度か来ているはずだろ?」

「はははっ、そうだったね」


 私たちはアルフレートの街を歩いている。

 馬車は宿屋に預けて、向かっているのはギルド会館。

 冒険者が依頼を受けたり、情報交換をしたりする建物だ。

 あまり積極的に活動はしていないけど、私とユーレアスは冒険者として名前が登録してある。

 旅をするにはお金が必要不可欠。

 そのお金を稼ぐために、冒険者という職業は融通が利く。


「いやー参ったね。いつの間にか活動資金がごっそりなくなっているなんて」

「仕方ないよ。最近は絶景を優先して移動していたし、依頼を受ける暇もなかったから」

「うんうん。でも、ようやく余裕が出来た所だ。ここでしばらく活動して、それなりに稼がせてもらおうじゃないか。まぁ……僕は働くなんて嫌だけど」


 ユーレアスはげんなりしながらそう言った。

 逆に私は、働くことが嫌いじゃない。

 元々王女だった私にとって、働いてお金を稼ぐという行為自体が曖昧で、実感のわかないことだったから。

 

「はぁ……憂鬱だ」

「そんなこと言わない」

「わかっているさ。依頼とあらばシャンとするよ」


 そんな感じで、私たちはギルド会館にたどり着いた。

 周りの建物と明らかに違う。

 大きさも、色も、木材の材質までが特別製だ。

 ギルドは冒険者を管理する雇用期間であり、世界で一番大きな企業だ。

 

 カランカランというベルの音がなる。

 扉を開けると、広々とした受付ロビーが見える。

 正面にまっすぐ進むと、受付嬢がニッコリと微笑んで待っていた。


「ユーレアスさん! ノア君もいらっしゃい」

「こんにちは、ミサさん」

「半年ぶりかな?」

「そのくらいだと思います。ミサさんはお元気そうですね」

「ええ、見ての通り元気よ」


 受付嬢をしている彼女はミサ。

 以前からユーレアスとは知り合いらしく、私も何度かお世話になったギルド職員だ。

 ちなみに彼女は、私のことを男だと思っている。

 冒険者登録をしたときから、私の性別は男にしてあるからね。


「二人は相変わらず旅をしているの?」

「ええ、もちろんですとも」

「ユーレアスさんは良いけど、ノア君は大丈夫? 変な所に連れていかれたりしてない?」

「はははっ、心配いりませんよ」

「おっと、ミサさんは僕を何だと思っているのかな」


 多少の冗談が通じる程度には、ユーレアスとミサは仲が良い。

 ユーレアスにも友人と呼べる相手がいてほっとした。

 私としては、ちょっと複雑な気持ちもあるけど。


「ここに来たってことは、活動資金が尽きそうなのね?」

「さすがミサさん、その通り! というわけ、適当に良い依頼をもらえないだろうか? 出来れば楽に大金がもらえるものが良いな」

「ユーレアス……」


 彼はブレないな。

 それに対してミサは、ニコッと微笑んで一枚の依頼書を提示してくる。


「それならピッタリのがあるわ」

「ほう! 内容は……大量発生したアンデッドの討伐?」


 ユーレアスの表情が変わったことに、私たちは気付いた。

 真剣なまなざしで依頼書を見つめている。


ブクマ、評価はモチベーション維持につながります。

少しでも面白いと思ったら、現時点でも良いので評価を頂けると嬉しいです。


☆☆☆☆☆⇒★★★★★


よろしくお願いします。

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