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追放聖女と元英雄のはぐれ旅 ~国、家族、仲間、全てを失った二人はどこへ行く?~  作者: 日之影ソラ


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26.四人の英雄

 亡くなった者たちの魂が、思い出になって残っている。

 光は魂じゃなくて、その想いでの形。

 これこそ奇跡と呼ぶにふさわしい光景だ。

 僕はこの都が健在だったころから生きている。

 そんな僕でも、初めて見る光景が、最近はたくさん見られて幸せだ。


 既視感。


 でも、なんでだろう?

 初めて見るはずなのに、妙な懐かしさがあるんだ。

 懐かしさと一緒に、切なさも感じている。

 絶景を眺めながら、漠然とした疑問を抱いていた。


「――今」


 一瞬だけ、記憶と景色が重なった。

 そうだ。

 ようやく思い出したぞ。

 僕はこの景色を知っている。

 この景色に近い光景を、以前に見たことがある。

 一緒に見たのは……


「そうか。だから懐かしいのか」

「ユーレアス?」


 今隣にいる彼女が、僕の名前を呼んだ。

 徐に目を合わせたら、()()()()の魂が重なって見える。

 懐かしさの正体。

 その理由の一つは、彼女の魂にもあった。


「思い出したんだ。懐かしさのワケを……この都とトレントの街は似ているんだ。七百年前、僕らが募った街に」

「それって……」

「うん。そういえば、ノアには話してなかったね」


 聞かれなかったから?

 いいや、単に話すことを避けていたんだ。

 あの物語を好きでいてくれる人には、あまり聞かせたくない話だから。

 だけど、彼女だって成長している。

 今の彼女になら、話していいのかもしれない。


「せっかくの機会だ。君を根強いファンと見込んで特別に語ろう」

「ブレイブ物語の?」

「そうさ。あの物語の続き、本当のエピローグを」


 それは英雄譚の終わり。

 輝かしいフィナーレではなく、欲に溺れた者たちによって汚されてしまった想い。

 生きる意味を見失い、それでも生き続けると決めた男の物語だ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 大陸の西の果てには、太陽が昇らない場所がある。

 特殊な気候が生み出す結界によって、一日を通して夜が続く。

 普通の草木は育たず、特別な植物や動物しか生存できない環境。

 そこに彼らは……魔族たちは城を建てた。

 亜人種の中でも優れた魔法適性を持ち、魔王と呼ばれる長は無尽蔵に近い魔力を持っていた。

 その起源は地獄の主たる悪魔と人間の混血。

 本質的に破壊と殺戮を好む彼らが、人類に牙を向けることは……もはや必然だった。


 当時世界中には百を超える国があった。

 その八割が人間の国で、残りは亜人種が住まう国。

 人間と亜人種は主義主張の違いから、あまり仲が良くない。

 だが、この時ばかりは協力せざるを得なかった。

 

 世界各地で魔王軍の侵略が始まった。

 彼らは特殊な魔道具を使い、魔王城から大量の魔物を送り込んでくる。

 戦いを挑んだ人間たちだったが、数の暴力には敵わなかった。

 あっという間に国は滅ぼされ、一年足らずで半数が消え去る。


 このままでは人類は滅びてしまう。


 そう考えた者たちが協力し合い、残された国で連合軍を結成した。

 数だけなら魔王軍を上回っている。

 これなら勝てると戦いを挑んだが……

 

「ガハハハッ! 人間は脆いな~ ちょっと力を込めただけで粉々だ!」

「くそっ、こんなはずでは……」

「は? 何言ってやがるんだよ。お前たち人間は所詮何の力もないゴミだ。この世で最も偉大な種族は、俺たち魔族様なんだよ!」


 結果は惨敗だった。

 魔族たちの才能は、人間のそれを遥かに上回っていた。

 獣人族、エルフ族、ドワーフ族……数々の亜人種も加わっていたが、悉く蹂躙されてしまう。

 そして、さらに半年後。

 たくさんあった人類の国は、最後の一つとなっていた。


「どうするのだ?」

「どうするもない。降伏すべきだ」

「馬鹿なことを! 奴らが我々を生かすと思っているのか?」

「ならば戦うというのか? 残された戦力は……」


 人類最後の国――ドラゴテール王国。

 残された土地は、王都たった一つ。

 王家の人間や民間人を含めても、人口は二千人に満たない。

 戦える者など数える程度。


「もはやこれまでか……」


 そう、誰もが諦めかけていた時。

 天から四つの光が降り注いだ。

 それは天命だった。

 お前たちが戦え、人類を救えという。


「今の声……」


 僕は確かに、神の声を聞いたと思う。

 そうして天命の元、四人の戦士が王都に集まった。


「初めまして! 私はアイラ!」


 赤髪の女剣士アイラ。

 天命と共に聖剣を授かった勇者だ。

 彼女が育った小さな村は、幸運にも魔王軍の侵攻を受けていなかった。

 魔王軍が標的としていたのは、国や大きな集落のみ。

 国々は滅んでも、大陸でひっそいりと生きる者たちもいたんだ。


「わたしはリューラ。見ての通りエルフよ」

「俺はグレイスだ。魔法なら得意だぞ」


 この二人もそうだ。

 リューラはエルフの隠れ里で住んでいた。

 弓と様々な道具を扱うレンジャー。

 ローブを纏ったグレイスは変わり者で、辺境の森の奥で魔法の研究をしていたらしい。

 天命を受けるまで、世界がこんなことになっているとは知らなかったと笑っていた。


 そして――


「僕はユーレアス。死霊使い(ネクロマンサー)さ」


 最後の一人が僕だった。

 こうして募った四人が、後の英雄として語られる。

 

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