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 正直寒月になら「理解なんて必要ですか?」とか冷たく言われるんじゃないかと思っていたが、彼女の口からは意外と肯定的な言葉が出てきた。


「分かりました。私もそれに異論はありません。あなたがそうするなら、私もそうします」

「そうか」


 とりあえず空真はホッとしたが、彼女がただの口約束で引っ込む人間ではないことを忘れていた。


「じゃあまず先に、あなたが私に何を考えてるか言ってみて下さい」

「うっ、それは・・・・・・」

「色々私に負の感情を抱いてますよね。別に怒りませんから正直に言ってみて下さい。有言実行です。さぁ、どうぞ」


 身をもって証明しろと言っている。その真っ直ぐな眼差しの追及からは逃れられそうにはない。空真は失礼を承知で本音をぶつけた。


「確かに俺は君をかろんじていた。歳下だし、女の子だし、そもそも調査局とコンサルタント契約ってナニソレって感じだった。ただでさえ新人の俺の出世に響くことをしでかすんじゃないかって。───でもそれは勘違いだった。君は俺より博識で、比べられないくらい優秀だった。そして俺を守ってくれた。だからもう、君が力不足だなんて思わないよ」


 空真もまた寒月の目を真っ直ぐ見据えて言う。すると彼女は「そうですか」とだけ呟いた。


「ほら俺は言ったぞ。次は君だ!君は俺をどう思ってるんだよ」

「怒らないで下さいね」

「分かった」

「いくらお互いを知らないとはいえ、初日から私に詐欺を真似するなと言った時はカチンときました。調査局の仕事を手伝っている私をなんだと思っているんだろう。この人馬鹿なんじゃないかと思いました」

「すみません・・・・・・」


 確かにあの時は彼女を仕事の同僚として見ていなかったので、心の中で民間人扱いしたのは空真に非がある。


「あんなこと言われたら、私も詐欺そうしない理由を言わなければならない。だから統括部長にコネがあると言ったんです。あなた自身が私のイヤな所を引き出していたんですよ」

「ごめんなさい・・・・・・」


 こう言われると本当に謝るしかない。


(というか寒月って大人しそうに見えて意外と色々考えてたんだな)


 もしかしたら初対面だから言葉を控えていただけで、こちらが彼女の本当の本質なのかもしれない。


「でも、あなたは私のことは気に入らないと顔に書いてましたが、仕事には真剣に取り組む方のようですね。なのであなたという人間を勘違いしてたと思いました」

「さっき言ってた勘違いってそういう」

「ええ。だから私は───あなたとならこの任務をやっていけると思います」


 寒月は少し頬を和らげた。初めて彼女のこんな表情を見た。空真は微笑む。


「俺もだよ。お互い精一杯、この仕事を全うしよう。そして俺達に上下関係は無い。コンサルタント契約なら仕事上、対等なパートナーだ。だからそのつもりで」


 空真は手を出す。


「よろしく、寒月」

「はい、よろしくお願いします」


 多分今日限りで彼女への不信感は打ち払われた。そして空真の中にあった地方調査への不満も、ほとんど取り除かれていた。単純かもしれないが、寒月との握手で、この先の仕事はきっと上手くいく気がした。

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